晴天の雨

 雨は止んだ。あんなに強く降ってたのに、気づいたら止んでいた。

 私は、今朝のことを友人に話してみた。

「ってことが、あったんだよね。あれから、どこ行ったんだろう」

 一人は、ニヤニヤと嬉しそうに笑う。一人は、やれやれとため息をつく。その反応が、私には全くわからない。

「あんたは、その彼に会いたいんだろ?」

 強く首を振る。迷いはない。

「だったらさあ、嬢ちゃんやること一つやで」

 未だ、ニヤついた表情で話をする。

――探さないとさ(ね)。

 夜に、この街を歩くのは初めてじゃない。だけど、どこか不安になって、心が折れそうになる。

 はぁー、と息を吐いた。白い息が出るほどじゃないけど、少し肌寒い。

 帰るべき場所って言うのかな。すれ違う人たちみんなが真っ直ぐ前を見て歩いている。中には、走っていたりするけど、それでも見ているのは前だ。フラフラと見回してる人もいないわけじゃない。そうやって見回してる人は、立ち止まって誰かを待っている。あるきながら、見回す人も居るけどね。

「…けど、そういう人も行くべき場所があるんだよね。……もう少しだけ頑張る」

 今の私には、行くべき場所がわからない。だから、それを探して歩く。行きたい場所はある。行きたい場所を言って、タクシーが行ってくれるなら解決する。だけど、そんなことが出来るのならの話だ。タクシーも私もわからない。わからない場所には、どうやってもいけない。

「だから、歩かなきゃ」

 転んでも、雨にあたっても、迷っても、進まないといけない。私は、終電の近くまで街を歩き回った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ショート・ストーリー めるる・めりー @MeruruMery

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ