今日も雨、ここ数日は晴れないらしい。今日は、傘を持って家を出る。

 ザーザーと強く降っている。傘をさしてあるき出す。

 水溜りを避けて、靴が濡れないように歩く。どっちにしろ、靴は濡れる。

 信号待ちをする人は多く、その数に私も含まれる。赤から青へ変わり、人はその瞬間にあるき出す。決まった通りに動く。もしも、それで動きが止まるなら、それはイレギュラーがあるからだ。例えば、『事故』これは、確実に足を止めるだろう。そんな通常にはないことが起きれば止まるだろう。

 なら、今、足を止めてる私には、どんなイレギュラーが起きてるんだろうか。

 答えは1つ、目の前、反対側からこちらへ歩いてくる人にイレギュラーがあるのだ。

「――」

 思わず声を上げた。彼の名前を言うのは、いつぶりなんだろう。

「……ごめん」

 帰ってきたのは謝罪の言葉。ただ、一言。その一言を言って、彼はまた居なくなる。

 濡れたフードは、傘によって遮られ見えなくなった。

「――……」

 二度目の赤信号。雨は止みそうにない。また長い時間を待つのだろう。

 だったら、私は――。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る