くじらのはらわた 解説
くじらのはらわた 解説
1:これなに?
平茸が参加した、ながやん(@nagamono)氏の企画『#匿名短編バトルきみのロボット編』。
https://kakuyomu.jp/works/1177354054885440692
テーマは『ロボット』。制限は2500字以内。今回もやばかった。
そこに応募した短編『くじらのはらわた』
https://kakuyomu.jp/works/1177354054885440692/episodes/1177354054885634447
の解説並びに釈明となります。
2:人物紹介
鵲(かささぎ)……主人公の少年。骨組(ほねぐみ)と呼ばれる作業の見習い。
瓢(ひさご)……黒っぽい茶髪、そばかすの可愛い少女。虫飼い、
オシャレポイントは虫たちと戯れた後必ず裏山で水浴びをすること。
鵲のことはまんざらでもなさそう。
業(ごう)婆さん……とてつもなく醜い老婆。経絡(けいらく)紡ぎのプロ中のプロ。どうしてこうも醜くなったのかは作中で、プラス後述。腑分けも恐ろしい腕で、瓢の師匠であり鵲の教育係もやっている。いい婆さんである。しかし見た目はほんとうにひどい。
ちなみに最初は読み仮名が設定されておらず、業を『わざ』や『ぎょう』、果てには『カルマ』と読む事も可能だった。いや、
☆名前が出てこなかった方々
士番(しばん)親方……骨組の親方。鵲の師匠。2700文字くらいの時に、存在を末梢されてしまった。名前の由来はシバンムシから。シバンムシは本当は『死番虫』と書くけれど、流石に名前なので読みだけ拝借。
骨切り源治(げんじ)……肉と骨を断ち切る大鋸を持った大男。一応始めの方で出ては居なくもないが、名前は一切出てこなくなった。
3:用語紹介
2500じゃルビ使っても全部は書けないよ! でも楽しかったよ!
儡鯨(らいげい)……巨獣の骨付き肉に虫を纏わせ布や盾で包み神経や栄養網を通し、人の形にして動かす
出来上がるまでの作業工程は簡潔に、肉の運搬→骨組の検分→骨切り→池に漬ける(その中で虫を纏わせる)→腑分け→経絡紡ぎ→検査→腑分け(n回目)→経絡紡ぎ(n回目)→云々→接合→艤装→形になる、くらいだろうと思われる。
巨獣……遠くの土地で取れる獣。恐らく巨大な海生哺乳類といいたいところだが、そもそも自然界に住んでいるのかも分からない。
村に持ってくる間に腐ってしまうため、食用にはならないが虫たちを養っていくことは勿論儡鯨の材料にもなる。くじら、ではないと思うけれど、どうでしょう。
村……鵲たちの住む村。山奥で儡鯨を作っている。作った後どうしているのかは分からない。2500文字ですし……
でも多分ミソスープとか食ってる。カ○リーなんとか的なヤバい固形物と一緒かもしれない。
イメージしたのはぐちょぐちょで汚いたたら場みたいなところ。そこにガントリー・クレーンや重裁断機、万能工作機や量子演算装置とかそんなのがあるはず。ないかもしれない。
虫……巨獣の骨付き肉に齧りつき寄生しようとする虫。昆虫ではなく多毛類(ゴカイ)や鰻様のものが多い。筋肉を主に作るのは
――だったのだが、寄生虫という設定はコンセプトが明確になるにつれてほぼ形骸化した。あと文字数。とはいえ、肉に齧りついて栄養を摂取しなければすぐに死んでしまう。かわいい。腐肉への依存度が高いことが、後述の虫飼いの意義に繋がっている。
虫飼い……主に儡鯨作りで重要となる虫を、池に提供する、あるいはそのために養殖している家・組織を指す。特に儡鯨の筋肉となる繊虫はとても重要で家や組織の地位も高い。有名なのは菫城(きんじょう)のもの。菫城は瓢の実家である。めっちゃ名家。他には鵬(おおとり)と梭魚羅(かますら)、酸漿(かがち)など。
池(いけ)……儡鯨を作るため、虫を泳がせている池。いつもは大したものが泳いでいないが、巨獣の骨付き肉を入れる際、つまり儡鯨を建造する際には数々の有力家系から様々な品種の虫が入れられて、多様性に富む。
特に繊虫は寄生性のため最終的にはすべて死んで卵だけになるため、次に作る際には新たな虫が投げ込まれる――先述の通り寄生性はほぼなくなっていますが、このギミック自体は一応は今も生かされていて、儡鯨を作る際に消費期限が短い虫の提供元が必要であり、提供元となるのはそういったものを維持管理することのできる力のある家や組織である、となります。
作中で儡鯨は卑しい鯨とかなんとか書かれているけれど、村の皆さんには、必要なんでしょうなあ。でも金とか資源めっちゃかかるし、やっぱり卑しいかも。
☆役職
骨組(ほねぐみ)……獣の骨付き肉を検分し、儡鯨に相応しい形にするために皮を剥いだり肉の形を整えるなどして、最終的に人の形を作る作業のいわば総合監督。正確に言えば実作業は殆ど行わず、指示と図面起こしなどをする。だが全ての工程を理解している必要がある。
鵲はこの作業の見習いで、すべての作業を回りなにが必要なのか把握していく段階。でも鵲は瓢が好きなので腑分けによく見学に行く。
腑分け(ふわけ)……体を解剖し内臓を検分するという本来の意味から転じて、必要な虫だけを残し他は間引きしていくこと。肉に齧りついた虫の集合から、余分な虫、弱い虫、おかしな虫をもぎ取っていく作業。
様々な品種の虫が寄り集って一つの構造を作り上げるためには必要なことである。
これをしないと神経を通わせても虫たちを統べる事ができないか、肉が完全に腐りおちてしまう可能性がある。
瓢はこの作業の見習い。女の子でもぬらぬらとした粘液に顔中を覆われてしまってもう大変ですよ。この作品唯一のえっち要素。
経絡紡ぎ(けいらくつむぎ)……儡鯨を人の形にして動かし保つための、腐った肉を腐りながらにして生かすための血管系と、信号を流し虫たちに命令をする神経系を通す作業。
かなりの熟練と技術が必要だが、常に高温の蒸気と熱湯に晒され、虫たちに齧られ続けるためこの作業をする人間は醜悪な見た目となってしまう。
業婆さんは更に必要な繊虫だけを見分け残す腑分けの技術にも富む。
腑分けが出来なければ経絡紡ぎは立ち行かない。虫たちの全てを知らなければ神経系を張り巡らせる事が出来ないからである。
ちなみに『経絡』とは東洋医学系の用語である。経が縦の流れ、絡が横の流れを指す。
骨切り(ほねきり)……巨獣の骨付き肉のトリミング。骨組が監督者だとすればこちらは作業員。
運ばれてきた肉は骨組によって検分されて、図面を引かれ、次に骨切りによって成形されて池に落とされる。
肉に虫が食いつきやすいように切り込みなどを入れるのも、骨切りの仕事。
焼肉屋に転職できそう。
4:意味分からん
出発は『寄生虫で体作ったら面白いんじゃない?』から始まり、結果的には虫と腐肉で体を作るヒトガタということになりました。
設定のコンセプトには、『
そう、『鯨』がどこから出てきたのかと言うと、『鯨』骨からなのです。
少し検索してもらえれば分かりますが、鯨骨生物群集はとても特徴的な生態系であります。そこでしか発見されていない生き物もちらほら。
しかし、そこに住まう生物たちは、鯨が何時死んで沈むかなど知る由もありません。
そんなある意味では偶発的な、深海への天恵とも言えるものを、欲深き人間達の下で人為的に再現したあげくに人の形にさえもすれば、こうもなるだろう――そういった試みでこの2500文字は出来上がっています。
そして、そんな貪欲な
そのあたりのイメージから、腐肉に対しては
余談ではありますが、横文字をなるべく使わないように書いています。でも
5:ロボ出てこないじゃん!
くじらのクーcha……ではなく、卑しい鯨こと儡鯨が今作のロボ枠。
布に包んで鉄――
そうでなくとも、死んだ後ですら人に動かされる事のいじらしさ、虫がうねる得体の知れない中身。
しかし同時にどうしようもなく人の魂を引き付けてしまうような、本来腐った肉には存在しないはずの魂の呻き。
そういったところからロボらしさを感じてもらえれば……。
6:裏話
○瓢は名前どころか性別も違うものだった?
そもそも
ちなみに懐炉少年は有能でイヤミだが、根っからの悪い奴ではない、そんな少年だった。
○鯨の名前について
実は、『
カンの良い方はもうお気づきかと思うが、実はこの鯨くんたちは元々『
どちらにせよ、傀儡の『
『
○構想は数時間で決まった!
夜中に構想が決まってから、一週間程度で書き上げたことになる。一番時間が掛かったのは〆るところで、大筋は書き始め当時から大体決まっていた。
ただし、瓢&業のところに鵲が行く理由は、旧設定では親方に言われたからだったなど、細部には違いがある。
○最初は2700文字だったが……。
割とまっとうな文字数で一先ず書き終わった後、友人の力を借り2500文字に一旦収まった物語だったが、そこで調子に乗った平茸が細々とした描写を推敲していたらいつのまにか2700に先祖返りしてしまい、締め切りが近いことから大慌てで再推敲&再校閲を頼む事態となった。
余談だが今回ルビも文字数に計上した場合、3200近い文字数となる。ルビだけで500文字を超えているくらいの計算になるわけで、どれだけ無理やりルビを突っ込んだかが分かり易い。
○前短編と同じ手法でロボを出している?
前に書いた短編『三重螺旋髪伝器 〜恋する少女と髪狂い〜』は、先生×生徒+髪×新人類×ロボという題材である。これをやるべく2500文字の中でロボットを出すにあたって、機体の一部だけを登場させることで文量を抑えた。
それとほぼ同じ理由で、今回の鯨もまた体の一部だけを出す事によって文量を抑え、キャラクターや虫などの描写にリソースを割くことが可能になった。全部は、無理です。
ちなみに短編テーマが『ロボット』でなかったとしても、ロボを出していただろう。
本業のレビューも無論、ロボットに限ったものである。
○この解説2500文字超えてない?
それどころかその2倍ですよ奥さん。
7:最後に
ロボを書くことが合法的である
今回はテーマそのものがロボットであるから、ロボットを出すことは既定路線であり、決して冒険などではない。大丈夫かなあと恐れる必要は何もなかった。
しかしながらそれは、ロボットに関しては絶対に妥協出来ない、ということの裏返しである。故に、闘いが存在しないかのように見えた桃源郷は、その実平茸のロボ
だからこそ、今回共に激闘を繰り広げた作者たちのロボ力は、間違いなく高まったと断言できる。この先にあるかもしれない更なる決戦にも、この経験は決して無駄になることはないはずだ。
今回応援を送ってくださった方々には、先着で繊虫&機械胞子詰め合わせありがとうギフトを送らせていただきますので、念動力などでご連絡ください。
そしてロボット短編を集めるだけでなく、手間の掛かりそうなシャッフルまで成し遂げたながやん(@nagamono)氏にはもう
2018年4月29日 月夜平茸
機械胞子のおとぎ噺 月夜平茸 @Lampteromyces
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