ベースは新聞配達特化型バイク『プレスカブ』のエンジン

 カブと言っても細かく分ければ何種類もあります。一部のカブはとんでもないプレミア価格で取引されているものがあります。コレクターに珍重されるのは最初期モデルや『アンドン』など外見に特徴のあるモデル。最近は比較的新しいモデルも価値が出て、排気量の大きい(ボアアップしなくても二種登録)カブ七〇や九〇は良いお値段になっています。


「貴重なモデルはオリジナルの姿で後世に遺すのが良いと思っています」


 私のお小遣いでは希少モデルを買えません、程度が良いものも買えません。くたびれたカブのエンジンを手直しして自分好みにするのが私の趣味です。


「今回リビルドするエンジンは新聞配達用のプレスカブのエンジンです」


 プレスカブは特殊な部類のスーパーカブです。我が家に一台プレスカブをカスタムしたものがありますが、特殊な電装ゆえに修理に手間がかかりました。電装だけでなくミッションも特殊なので『素人お断り』な部分があるのですが、それに関してはエンジンが無い状態だったのでオミット。


「以前直した『使い倒したスーパーカブ』に積んだエンジンも、ベースはプレスカブ用でした」


 プレスカブ(以下『プレス』と記す)は電装こそ特殊ですがエンジン本体は少し違いがあるだけで基本構造は同じです。スーパーカブとの大きな違いは走行中に三速(トップギア)からニュートラルにギヤチェンジできる点です。スーパーカブは安全のため三速ギヤで走行中はニュートラルに入らないようになっています。


「プレスは新聞配達で発進停止が多いため、次のお家まで惰行で走れるようになっているんですね」


 何も知らない素人が乗って四速へギヤチェンジしたつもりがニュートラルへ入り、慌ててチェンジペダルを踏みこんで一速にギヤチェンジしてオーバーレブ(過回転)でエンジン損傷……なんてことが無い様にトップギヤ表示ランプがあります。


「何も知らない素人が乗ると少し危険なプロの道具、それがプレスカブです」


 危険なんて言っていますが、個人的見解なのでご了承ください。


「素人でも乗れるように安全装置が付いています。それがトップギヤランプです」


 間違えて『幻の四速』にシフトして『地獄の五速』まで行かないように三速ギヤで走行時はメーター内にある『③』の表示灯が点灯します。


「この『③』を点灯させるスイッチはカブカスタム五〇や幻のエンジンと呼ばれるセル無し四速カブのエンジンと同じ位置にあります」


 クランクケースの加工設備を流用したのか、それとも偶然かわかりません。とにかく『カブ四速車と同じ位置にニュートラルスイッチとトップギヤのスイッチある』のがプレスカブのクランクケースです。

 

「業務で使い倒されるのが前提のプレスです。程度が悪いのは当たり前、下手すりゃ修理不可能なものに出くわす可能性はあります」


 幸いなことに一般のユーザーが使うには難があり、程度が悪い物の多いプレスのエンジンは比較的お安く買えました。同じころに『車種不明』で『カブ系?』の四速ミッションが出たので購入しました。


「仕様は決定です。プレスに純正四速のミッションを組んで排気量アップします」


 どのように改造するにしても分解は必須です。次回は分解の様子をリポートします。

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