バイク弄り復活

通勤用ジャイロX

 一応ですがガソリン・ジーゼル整備士二級をもっている私ですが、オートバイや自動車に関する大切な物をもっていません。それは『センス』です。


「改造やカスタムで最も大切なのは『センス』だと思っています」


 悲しいかな私にはセンスが無いのです。スーパーカブやミニバイクの改造や修理は作業手順書を見たりインターネットで検索すれば出てきます。ところが自分で創造する『カスタム』が苦手でして、部品を加工するとか作るとかするセンスが無いんです。


「修理は出来るけれど改造は今一つ上手くできない。それが私です」


 そんなわけで私のバイク弄りは『純正部品流用』による改造や『修理』がメインになります。


 今回も『純正部品流用』と『修理』なお話。通勤やちょっとした買い物に使っているジャイロXは車齢三十年とあって致命的な故障こそ無いものの細かな不具合や修理が欠かせない状態です。


 今までの修理で普通に乗れるようになったので今回は不満を解消します。


「古いジャイロXのタイヤはチューブ入りタイヤが使われています。私の愛車は後輪に社外ホイールを組み合わせて現行ジャイロシリーズに使われている八インチチューブレスタイヤ(二スト車は六インチチューブ入りタイヤ)に交換してあります」


 フロントタイヤはノーマルのままです。部品を揃えてパンクに強いチューブレスタイヤに交換します。


「ついでにアップデートもしましょう」


 ジャイロXのフロントホイールはチューブレスタイヤ対応です。チューブレスタイヤ対応のホイールなのにチューブを入れて使っているのが不思議です。多分ですがコストの問題でしょう。


「チューブレスタイヤとエアバルブを交換すればチューブレスタイヤに出来ると思います。ですが……」


 我が家へ来た時点でフロントホイールは錆びていました。表面をサンドペーパーで磨いて防錆処理をしましたがタイヤを外しての作業はしていません。


「チューブレスタイヤはタイヤとホイールが密着していなくてもチューブに空気が入っていればパンクしません。タイヤはいわばチューブを守るカバーの様なものです」


 チューブ入りタイヤはタイヤとホイールが密着していません。隙間やエアバルブの部分から水分が入って内部が錆びていたりします。対してチューブレスタイヤはタイヤとホイールが密着することにより空気が漏れなくなっています。当然ですが密着しているのですから外部から水分は入りません。


「今回は中古のホイールを買って作業します。せっかく換えるのですからついでにアップデートしちゃいましょう」


 用意したのはジャイロXのフロントタイヤと周辺部品です。


「ジャイロXは改良されながら三十年以上生産されているミニバイクです。初期と現行型では別物と言ってもよいのですが、基本的に同じオートバイなので部品の流用が出来る部分もあります」


 宅配便で届いたのはジャイロXのフロントホイール・ブレーキパネル・ブレーキワイヤー・メーターケーブル・ピボットアームです。


「同じジャイロXですが、取り寄せたのは『TD〇二』の部品です」


 TD〇二は環境対策で四ストロークエンジンになったモデルです。この頃のホンダは一部車種のフロントブレーキを大型化していました。


「私の知る限りではスーパーカブとジャイロシリーズにドラム内径一三〇㎜のブレーキが採用されています。スーパーカブだと『ビッグドラム』と呼ばれています」


 カブでビッグドラムと呼ばれて珍重されている大径ドラムブレーキ、噂によるとそれほど効きが良くなるイメージは無いらしいです。


「ブレーキ本体の容量が大きいのですからフェードに対する余裕があるはずです」


 フェード現象はブレーキの摩擦材が熱により滑りやすくなってブレーキが効きにくくなる現象です。


「交換前のブレーキ径は一一〇㎜です。二十ミリの違いがどれほど影響するのでしょうか?」


 普段ならコツコツと部品を揃えますが今回は全部がセットになったものを買いました。ネットの情報ではブレーキワイヤー以外は無交換で取付けできるはずです。


「今回のアップデートはブレーキだけでなくピボットアームも交換します。どうも今まで付いていたピボットアームは動きが良くないのです」


 ピボットアームはフロントフォークとアクスルシャフトを繋ぐ部品です。スーパーカブのボトムリンクサスでも使われていますね。


 ブレーキパネルを固定する部分が違うのでピボットアーム交換は必須です。ブレーキが大きくなったのでブレーキワイヤーも長くなっています。スピードメーターケーブルは車体に付いていた物がそのまま使えました。セットに付いて来たものは予備部品として残しておきます。


「基本的に『付く様にしか付かない』ので迷うことなく作業は終了です」


 作業ついでに外したカバーを洗ったりしたので少し時間がかかりました。作業時間は約二時間といったところでしょうか。各部のボルト・ナットにゆるみが無いか確認して試運転に出発です。


「ふむ、確かに『よく効く』とは思いませんね」


 ブレーキレバーをグッと握ればそれなりに効きます。ですが『ブレーキを強化したぜっ!』みたいなガツンと効く感じではありません。純正部品だけあって純正然とした効き具合です。


「原付二種リード九〇のフロントフォークアッセンブリーを丸ごと流用するディスクブレーキ化と違って見た目の変化がありません。黙っていれば誰も気が付かないでしょう……だが、それが良い」


 ブレーキよりもピボットアームの交換の方が効果を実感できました。段差を超える時のショックが小さくなったのです。


「今までのピボットアームはサスペンションの動きを阻害していたようです。交換して乗り心地がグッと良くなりました」


 新しい職場で働き始めて気持ちと財布に余裕が出来ました。エンジンのオーバーホールや大規模なカスタムは出来ませんが、細々とした整備をしてミニバイク弄りを楽しんでいこうと思います。


「さて、次は何を弄ろうかな……」


 そうですね……次回はスーパーカブのシートを手直しした話にしましょうか。

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