競ることなく終了
この日本で欠品だらけのプレスカブを修理してツーリング仕様に仕立て直そうなんて奴は片手で収まる程度しかいないと睨んでいます@京丁椎です。
「競ることなく落札です」
即決価格より少し安い値段で入札していました。ところが開始価格から競ることなく落札です。インジェクション車だから不人気なのか、それともキャブレター車に取り付け出来ないのか。
「もしも使えればラッキー、使えなければ物置の肥しです」
支払い手続きをして二日後、無事にホイールが届きました。
「タイヤは『ダンロップD一〇四』が付いています」
ダンロップD一〇四は耐摩耗性能を重視なビジネスバイクに適しているタイヤです。スゲー固いタイヤで、外すのに苦労しました。
「ドラム内径は約一三〇㎜、間違いなくプレスカブの物です」
タイヤは使えなくはないですが、使ったところで寿命はわずかでしょう。
「今回は購入してあるダンロップD一〇七に交換します。耐摩耗性は劣るかもしれませんが、ビジネスユースではないのでご了承を」
タイヤレバーを使ってホイールからタイヤを外します。バルブを固定しているナットが錆びているのが気になります。もしかするとタイヤの内側も錆びているかもしれません。
「毎日使われる新聞配達用のカブですから多少の錆は出ているでしょう。問題は錆の程度です。リムに穴が開くほど錆びていては使えませんが……大丈夫そうです」
錆びこそあるものの、穴が開くほどの致命的な錆びではありません。
「振れもないみたいだし、ベアリングもスムーズに回る。スポークの緩みも大丈夫やね、リムの錆もほぼ表面だけやな」
ワイヤーブラシで擦ってから転換剤で黒錆びへ転換させてしまえば使えそうです。真鍮ブラシで錆を落します。
「錆転換剤をスプレーしておけば錆び止めが完了……あれ?」
錆転換剤のスプレーが無くなりました。仕方がないので別の錆び止め剤を使います。
「染めQテクノロジーから発売されている『必殺錆封じ』を塗り込みます」
錆封じは錆びに浸透して固めてしまうタイプの錆び止めです。理屈が良く解りませんが、錆の内部に浸み込んで水分を寄せ付けないから錆びが止まるとか何とか。詳しくはメーカーのHPを見てください、おじさん難しいことわかんない。
「塗ってから十二時間くらいすると乾燥して上塗りできるみたいです」
いいお天気です。日当たりのよい所へホイールを置いて乾燥させます。
「表面がガラス状に硬化すれば上塗りです……が、これはチョットなぁ」
何となくですがベタついた仕上がりです。固まっている部分は有りますが、そもそも『錆を固める』のですから錆の分、部品の輪郭がぼやけているように見えます。
「もうちょっとだけ錆を落しておいた方が良かったなぁ」
少し錆を削らなければならない気がしてなりません。せっかく塗りましたが、やり直します。某アンドロイド漫画で登場人物が言っていた『後悔後に立つ』です。
「こんどはペンシルグラインダーで細かな所の錆を落します」
錆が少し深いところがありました。穴が開くほどではないので錆を除去します。
「そもそも浸透して固めたところで錆びてる事に変わりないじゃないかって気がします。場所によると思うけど、錆転換剤の方が好きですねぇ」
結局、錆封じで固めた錆を削り落してサビ転換剤を吹き付けました。ところで錆転換剤ってどこのメーカーでも同じ成分なのでしょうか?
「違うメーカーの製品なのに、同じ匂いがします」
不思議に思いながらも作業は続きます。
「徐々に錆びた部分の色が黒く変わってきました。錆転換剤は赤錆から黒錆びに変える薬品です」
赤錆はどんどん錆びて最後は朽ちますが、黒錆びは表面だけで内部まで錆が進行しません。同じ錆びなのに全然違いますね。
「錆止め処理を終えたらタイヤを組み付けます」
錆止めが乾くまで数時間が必要です。今回作業はここまで。
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