元・首無しプレスカブ③ 十月二十三・二十四日

 木枯らし一号が観測された十月二十三日は、私の住む地域でも風が強くて寒い一日でした。風が強いからスプレーで塗装するわけにいきませんし、外にプレスカブを出して作業することもできません。


「今日は室内で出来る作業、キャブレターのエアスクリュー組み付けです」


 前回の休日にキャブレターのエアスクリューを外して奥にあるOリングを交換しました。ところが組み付けしようとしたらエアスクリューが奥までねじ込めない。


「ネジは押しながら回すものです。今回購入したD型エアスクリュー用のドライバーは回すことは出来ましたが押すことはできないようです」


 面倒ですが頭部のD部分に溝を掘り、マイナスドライバーで回せるようにします。


「以前カブ九〇用キャブレターを整備した時は外す時に溝を掘りました」


 キャブレターにエアスクリューが付いた状態で溝を掘り、マイナスドライバーで回せるようにして外してから仕上げの加工をしました。エアスクリューを外すのに多くの時間を費やしたものです。


「今回はD型エアスクリュー対応ドライバーのおかげで簡単にエアスクリューを外せました。外したエアスクリューにダイヤモンド丸鋸で溝を掘れば完成です」


 溝を掘ったエアスクリューをマイナスドライバーで押しながらねじ込めんだら簡単に元通り組み立てる事が出来ました。


「締めこんでから一回転半戻せばエアスクリュー組み付け完了です」


 本当は外すときに何回転回したかを書き留めておけばよいのですが、D型ドライバーのガタが大きくて正確な回転数と角度を把握できませんでした。なお、『締めこんで一回転半戻す』は少し年式が古いカブの調整方法です。間違っているかもしれませんので真似される方は自己責任でお願いします。


「二十三日は散髪に行ったり暖房を出したり、少し忙しかったのでエアスクリュー組み付けしかできませんでした」


 二十三日の夕方にヤフオクで落したチェーンカバーが届きました。値段は送料込みで二千円弱、新品だと四千円くらいするのかな? まぁ妥当な所でしょう。


―――翌日―――


 翌日の二十四日は風が穏やかで日差しも柔らかな絶好の整備日和でした。


「まず最初に塗装です」


 感想に時間がかかる塗装を最初に行います。フォークセンターカバーに塗装密着材を吹き付けて乾燥、そして下地塗料を吹いておきます。


「乾燥中に他の作業をします。まずはキャブレターの組み付けです。キャブレター組みつけの前に届いたチェーンカバーに洗剤を吹き付けておきます」


 洗剤が油を浮かせている間に完成したキャブレターをインテークマニホルドへ組み付けます。


「キャブとインマニを一体にしてからエンジンに固定します」


 エアクリーナーに接続してホースバンドを閉めれば取付けはほぼ終わり。スロットルワイヤーとチョークワイヤーも組み付けます。


「続いて燃料タンクからキャブレターに燃料ホースをつなぎます……おおっと、ホースをフレームの穴から出せません」


 タンクに残った燃料が出てこないようにホースを曲げていたのですが、フレームの穴につっかえています。


「燃料タンクのガソリンを全部抜いてからホースを伸ばします」


 ここでトラブル発生です。燃料タンクからガソリンを抜く場合、予備タンクの通路からの方が空に近い所までガソリンを抜き取れます。


「予備タンク側の通路からガソリンが出てきません。どうやら詰まっているようです」


 予備タンク側のホースを抜いて息を吹き込みました。正常ならタンクから空気が出てくるはずですが……ダメです。息を吹き込めません。ホースを外してみましょう。


「ゴミはどこで詰まっているのかな……ミッシリ詰まっています」


 予備タンク側の燃料取り出し口はゴミ(錆?)でびっしり詰まっています。手元に在ったパイプ内径と近いドリル刃でグリグリとほじくってみたら貫通しました。


「タンクは外したついでに錆取りしておきましょう、ホースもゴミが詰まってるみたいですね。エアーを吹いても通りません」


 タンクの方は貫通した途端に錆交じりのガソリンが出てきました。貫通した燃料取り出し口は棒ヤスリを使って錆を削り落しておきました。ホースはどこまで詰まっているのだろうってっレベルに詰まっています。


「燃料ホースは再使用するつもりでしたが……この際だから新品にしておきましょう」


 危険物であるガソリンの通り道です。用心にこしたことは有りません。


「外したタンクは一旦洗ってから錆取り剤を入れて放置しておきます」


 少し前に使った錆取り剤が残っています。何回か使えるみたいなので今回は新しい液は作らず再使用します。多少効果が落ちているでしょうけど一週間も置いておけば錆は取れるでしょう。


「液の温度が高いと錆取り効果が促進されます」


 錆取り液を満たしたタンクは日当たりの良い場所に置いておきます。夏と違って穏やかな日差しですから効果は微々たるもの。


「エンジン始動まで出来るかなと思っていましたが、今回はここまでです。カブを物置に片付けて作業終了です」


 予想外のトラブルで作業が進みませんでした。ガッカリして物置へカブを方付けていると更にトラブル発生です。


「よっこいしょっと……うおっ! あっ痛っ!」


 カブを持ち上げて段差を上ろうとしたら足を滑らせました。カブは無事だったものの段差を踏み外した脚を地面に着いた途端に激痛が走りました。


「明日から仕事やのに……どうしよう」


 痛む足を引きずり錆取り液を満たしたタンクを片付けて十月二十四日は終了です。今度の土曜は仕事なので次回は『寄り道』になるのかな? 続きます。

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