寄り道 二〇二一年九月二十七日・快晴

 二〇二一年九月二十七日・快晴


 九月終盤となれば暑さも和らぎ、整備するだけでなくツーリングするにも良い季節。そんな日に限って予定が入っていたり用事を言いつけられたりするものです。午前十一時から歯医者へ行く予定をしていた私は空を見て思いました。


 そうだ、ゴリラに乗ろう。


 通勤は荷物が積めるジャイロX、弄るのは首無しプレスカブ。遠出しようにも世間は緊急事態宣言。近頃ごろ私はホンダゴリラに乗れていませんでした。荷物が無く体一つでフラリとバイクに乗るなんて滅多に無い事です。親父が通路に置いた荷物群を問答無用でゴミ箱へ詰め込み、「放置しているなら捨てる!」と親父を怒鳴りつけつつ通路を開けて久しぶりにホンダゴリラのエンジン始動です。


 CDIをエイプ一〇〇用に換えている(点火時期が変化するので始動しやすいらしい)からかあっけなくキック数回でエンジンはかかりました。ただ、アイドリングしない。しばらくぶりでご機嫌斜めなのかとアクセルを煽りながら半ば強引にアイドリングさせて歯医者へ出かけました。


 まぁアイドリングが不安定なゴリラって危ない事。アクセルを煽り過ぎれば棹立ち・ウイリー、ポンポンとフロントタイヤが跳ね上がります。このままでは事故を起こすと判断した私は、歯医者へ行った後のツーリング予定(と言っても十数キロだけど)を取りやめてホンダゴリラの不調を直すことにしました。


 当然だけど首無しプレスカブの修理も無しです。


 昼前に帰宅した私はジャイロに乗り換えて携行缶を持ってガソリンスタンドへ行きガソリン三リットルを購入、おおかたガソリンが変質したのだろうとゴリラからガソリンを抜き新油へ交換しました。


 結果はダメ、ガソリンが原因ではなさそうです。


 さて、プラグが被ったのかと点検するも焼けは正常、端子も角が立っている状態。となればキャブレターが詰まったのかと分解を決意したとき。


「なあ丁椎ていしい、ご飯やで。ご飯を食べたら買い物に連れてって」


 オカンが午後に予定をブッ込んできやがりました。平日の方が人出は少ないから買い物へ行きたいそうです。仕方がないので午後一時から買い物に出かけたのですが、まぁ重い物やかさ張る物ばかり買いやがること(苦笑)しかも店をハシゴしやがる。帰ってきたら午後三時半を回っておりました。


「三時半かぁ……日暮れまでに直せるかなぁ?」


 一か八かでキャブレターを外し、フロート室を開ければ何やら底に沈殿物が溜まっていました。キャブクリーナーと歯ブラシを併用して沈殿物を除去したのちにメインジェットとスロージェットが詰まっていないか確認します。


「メインジェットは(プシュッ)通ってるな、スロージェットは……外した方が早いか」


 スロージェットを外してパーツクリーナーを噴射しましたが何も出てきません。試しに口にくわえて吹いてみましたけれど通じない。ワイヤーブラシのワイヤーを一本抜いて突いたら穴が通りました。念のために半時間ほどジェットをキャブクリーナーに漬け込んでからパーツクリーナーを噴射して確認しました。


「さぁ、どんなもんかな?」


 掃除した部品をキャブレター本体に組みつけて、組んだキャブレターを車体へ戻して燃料ホースを接続します。本当は一昼夜置いて漏れがないか確認したいところですが、まぁ漏れたらその時はその時ってことでエンジンをかけてみます。


「よっこいしょっと……」


 キックすること数回、あっけなくエンジンは始動して「何かあったのかね?」と言うかの如く呑気なエンジン音を奏でてアイドリングしました。


 ここで時刻は午後四時を少し過ぎ、日が暮れ始めたので試運転をして終了。もしかするとこの二年くらいはスロージェットが詰まり気味だったのかな? とても調子が良くなりました。


 という訳でして、九月二十七日はプレスカブいじりは全然できませんでした。やっぱりバイクは女性と同じですね。かまい過ぎるとこちらの身が持たないし、財布の中身もすっからかん、かまわなければ拗ねちゃう。


 そんな事を思う九月の終盤でした。

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