ベースエンジンは『プレスカブ・C五〇』

 さて、今回のベースとはプレスカブのエンジンです。このエンジンはずいぶん前に購入していたのですが、購入直後に泥汚れを落としてから放置状態でした。


「見た目は十二ボルト電装のエンジンと変わりませんが、出品者曰く『間違いなく六ボルト』との事でした。エンジン番号は『C五〇-〇九一五×××』だから少し古めのエンジンですね」


 毎回毎回思うんやけど、文章としては漢数字が正しいらしいけど形式名まで漢数字で書かにゃならんもんなのかなぁ。


 前回組み立てたスーパーカブ五〇スタンダードのエンジン形式は『AA〇一』でした。年式は二〇〇二年以降の物(持ち主が買って二十年経っていないと言っていた)でしょう。今回のエンジンは『C五〇』ですからそれ以前の物です。


「排気量四十九ccの三速カブのエンジン以外の何物でもありません。形式こそ違いますが実質同じエンジンです」


 以前積み替えたプレスカブのエンジンはカブカスタム五〇の四速ニューロータリーシフトのミッションをインストールしました。


「今回はどのように組むか、今のところ『予定は未定』です」


 ただし、原付免許しか持っていない友人が乗れるように排気量五〇㏄未満で組むつもりです。幸いな事にネットオークションで程度の良いシリンダーキットとクランクシャフトを手に入れました。部品庫にはプレスカブ用のジェネレーターもあります。あくまで『見た目はプレスカブ』にしようと思います。


「では、さっそく作業小屋で分解です」


◆        ◆        ◆ 


 一人の男が黄泉の国へ旅立とうとしていた。この男の名は大島中おおしまあたる。ホンダ横型エンジン搭載車を愛し、ホンダ横型エンジン搭載車に愛された男である。


「お父さん……まさか、バイクに乗ろうとしてるん?」


 男は握った両手を胸の前に付き出し、弱々しく右足を振り上げ、何かを探っていたかと思えばストンと振り降ろすを繰り返している。


「いやぁぁぁ! 駄目! かかっちゃ駄目! 逝かないで! 私を置いて逝かないで!」


 妻のリツコが叫ぶ声はもう男には聞こえない。何回目だろう、男の足が振り下ろされた時。男は満足げな顔で「直った」と呟き、この世を去った。


「お父さん、あの世ではお元気で……」


 ここは滋賀県新高嶋市、この物語は……おおっと、ここじゃねぇや。


 さて、ゴールデンウイークまっただ中。でもって新型コロナ肺炎ウイルスが感染拡大中となればステイホームです。


「もう一度『シンエヴァンゲリオン』を映画館で観たかったんですが、我慢です」


※執筆時(五月八日)の滋賀県内新型コロナウイルス新規感染者は七十四人。過去最多を記録しています。


「大阪や京都の人が県内で遊べないとなれば滋賀に来る。こうなると思っていました」


 GWは作業小屋でエンジンの整備です。幸いな事にスーパーカブの純正ガスケットキットとCFポッシュのオイルシールや各種ローラーは在庫してあります。私が整備したことを示す『ツバ付きナット』『ツバ付き袋ナット』もあります。


「もはや戻って来れない領域まで達した気がします」


 さっそく作業開始です。出品時の説明文にあったのが。


・六ボルト

・ボアアップ済み?

・強化クラッチに交換されているかも

・強化オイルポンプが入っているかも

・クランクの程度はわからない


 落札価格は五千円くらいだったと思います。もしもクラッチとの強化品ならラッキー。出品者は六ボルト電装と言ってたけど、ジェネレーターベースから出ているクランクシャフトを見る限り十二ボルト電装のクランクと同じ。


「問題はトランスミッションの仕様です」


 長く作り続けられた鉄カブのエンジンは電装が六ボルトから十二ボルトへ変る『過渡期』の物が存在します。


「エコノパワーと呼ばれる八十年代前半の六ボルト電装でCDI(キャパシティ・ディスチャージド・イグニッション)車の中にはトランスミッションの軸受けにニードルローラーベアリングが使われているものがあります」


 もしも軸受けがニードルローラーベアリングの場合、シャフトの径がスーパーカブの物と違います。


「その場合はカブではなくてモンキーのミッションを使います。某オークションで

『モンキーのミッションが使えるカブのクランクケース』として売られているものです」


 私は『モンキーのミッションが使えるカブのクランクケース』で純正クロスミッションを組んだ七十二ccエンジンを組みました。


『3機目 祖父の背中を追い求めて C50エコノパワー改』

https://kakuyomu.jp/works/1177354054885318490/episodes/1177354054885319478


 この時はジャンクのモンキー用エンジン腰下が有ったから作ったんだっけ。


「私が持っているのはカブ系ボールベアリングケースのミッションのみです」


 軸受けがボールベアリングであることを祈りつつクラッチカバーを開けます。私を待ち構えていたのは衝撃の光景でした。


https://www.youtube.com/watch?v=H2ecIVw80ks

 

 新たなエンジンを触る京丁椎。クラッチカバーの中に潜んでいたのは果たして何か? はたして京は対応できるのか。次回『まさかの出会い』


 この次も分解分解♪

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