前のエピソード――50㏄エンジンは需要がある

　まともに新品部品を買うと、スーパーカブ五〇のエンジンって片手で足りないくらいに部品代がかかるんですよ。ところが五〇㏄だろうと七二㏄とではそれほど違いがありません。だったらボアアップキットや強化クランクを組んで排気量アップするほうがコストパフォーマンスが良いですよね。小型自動二輪免許以上の免許を持っているライダー限定ですけど、二種登録すれば二段階右折や時速三十キロ縛りから解放されるんですもの。

「だけど、今回は原付しか乗れない人の為に組み立てるエンジンです」

　今回組み立てるエンジンは五〇㏄で組む予定です。細かな部分に違いは在れど、基本的にスーパーカブやモンキーは同じ系統のエンジンです。

「モンキーとカブはエンジンに共通部品が多く使われています」

　レストアベースはプレスカブのエンジンです。業務に使われることが多いプレスカブですから内部はガタがきている……くらいに思っておけばショックは受けません。何しろ素性不明なエンジンです。前の持ち主も「クランクがどうなっているかわからない」みたいに言ってました。クランクシャフトは新品だと二万円では買えないはずです。

「ならば、中古部品を入手しましょう」

　実はシーズンオフに色々な部品を集めていました。モンキーの純正ピストンやカムシャフト、ショートパーツの詰め合わせに何故か持っていたホーニングの残る純正シリンダー。

「ここにジャンクエンジンから外したノーマル部品を組み合わせれば一台完成するのですが……トラブルです。仕事中に手を怪我してしまいました」

　左手を刃物でグッサリ刺してしまいました。びっくりするほど血が出て会社の同僚に医者に連れて行ってらう始末。普段は意地でも自分で運転して医者に行く私ですが、今回は止血で傷口を押さえていたんで無理……と言えば怪我の程度がわかるでしょうか？

　数針ですが縫ってもらいました。左手が使えないだけでとても不便で難儀しています。四行の文章を打つだけで一苦労です。しばらくバイクいじりはお休みします。