微妙に違う50と90

 知らない人が見ればスーパーカブの50と90なんて同じようなものです。自動二輪免許を持っている人ならタンデムステップの有無で区別がつくかもしれません。ナンバーを見れば50が白で90が黄色(キャブ車に限る)ですが、一般人が見ればどちらもスーパーカブでしかありません。下手すりゃキャブ時代の丸ライトのカブと現行カブを見比べても区別がつかないかもしれません。


「ところが、よく見ると微妙に違いがあります」


 ここからはキャブレター時代のカブでのお話。実はフレームの鉄板が90の方が厚いとか、オイルポンプが大きいとか、吸排気系の太さやキャブレターの大きさ、挙げればきりのないほど細かな部品が別になっています。シリンダーだってよく見れば冷却フィンが大きかったりします。


「全てに理由があるのです」


 間違えた組み合わせをすると、途端に不調になると言った事は無いけれど調子が悪くなってしまうのがカブ系エンジンです。部品を並べて見比べてやっとわかる程度の違いが積み重なって大きな違いになります。


「それではヘッドカバー部分のナットについて少々。フランジが有るのは90用、フランジ無しが50用みたいです」


 ヘッドカバーを取り付けるナットのフランジが有るか無いかなんて気にする人は少ない思います。フランジが有る無しよりもステンレスか鉄かが気になる人の方が多いでしょう。


「京はステンレスか否かよりもフランジの有無が気になります」


 メーカーはユーザー以上に日々オートバイの事を考え、ユーザーと桁違いな設備で検証しているのです。そんな技術者に我々一般ユーザーが太刀打ちできるはずが有りません。もちろんメーカー技術者が焦るほどの知識と特殊技術を持つカブ乗りが居るかもしれませんが、個人的にはメーカーがやっていることが正規のやり方だと思っています。


「そんな訳で純正ナットを取り寄せました。普段は『自分ですれば○○円の節約です』とか言いながら作業しているのに、ナットだけで三千円の出費です」


 ナット一個を取り寄せてもらうなんて店も私も面倒極まりない。だから何台分かまとめて買いました。特殊ナットなんで高価です。


「金は無いけど純正部品を使います」


 貯めておいたカクヨムリワードの使い時が来ました。モンキー系チューニングサイト『原付版』で得た知識で書いた小説やエッセイをカクヨムに投稿して、カクヨムで得た収入をエッセイのネタにする。まさに地産地消です。京のバイクいじりは皆様のPVに支えられております。


「話は戻ってフランジ付きナットを使う理由について考えましょう」


 フランジ付きナットとは普通のナットの座面が六角ではなくて丸になっているナットです。ワッシャーがナットと一体になっていると言えば解りやすいかも。普通のナットでもワッシャを使えば一緒かもしれませんが、ワッシャとナットの間に隙間が空けばオイル漏れしてしまいます。


「オイル漏れの問題はさておき、もしかすると排気量が大きくなったことが理由かもしれません」


 OHCになってからのスーパーカブは六十五㏄のエンジンが基本形(C90を除く)だそうです。六十五と九〇の差はたったの二十CCですが、三〇パーセントの排気量アップです。ロングストロークで振動も出ます。ナットのかかる圧力とかを考えて座面を大きくとってヘッドカバーのナットにめり込みにくくしたのだろうと解釈しました。


 え? 『じゃあ五〇も共通にすりゃいいんじゃない?』ですか?


「個人的見解ですがコストの問題だと思います。スーパーカブに限らず業務用バイクはコストにシビアですからね」


 そんなわけで京はこれからオーバーホールするカブ系エンジンのヘッドカバーにはフランジ付きキャップナットとフランジナットを使います。


「わかる人が見ればニヤリとする、そんなエンジンを組み立てたい場合は使ってみてください。ただし『参考にするのは自己責任』でお願いします」


 では、組み立てに戻ります。

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