まずは三要素

 そもそもエンジンってのは『良い圧縮』『良い混合気』『良い火花』が有れば回るものです。大概のエンジンはこの三つが揃えば動くはずです。このうち『良い圧縮』に関してはコンプレッションゲージを持っていないのでしっかりは計測できません。


「キックペダルは重いから大丈夫やろう……」


 キックペダルが重いので圧縮は大丈夫と判断(これが後に混乱の元となる)しました。続いて混合気と火花。混合気を作るのはキャブレターです。キャブレターは霧吹きの要領でエンジンの負圧を利用して燃料を霧化してシリンダーに入れる機械です。


「そもそも昨日まで動いていたものがキャブの詰まりで急に動かなくなるものだろうか?」


 キャブはジャイロXを復活させる時に徹底的に分解・清掃・部品交換をしています。徐々に調子が悪くなることは有れど急に不動へ繋がるとは考えにくい。スパークプラグを外して臭いをかぐとガソリンの臭いはしている。


(ガソリンは来てる……キャブの調整ミスか?)


 試しにスパークプラグをライターで焼いて、予備のイグニッションコイルを取り付けて火花の点検をすると元気な火花が出ました。スパークプラグは大丈夫です。プラグを抜いた状態でセルを回すと元気に回りました。セルモーターは壊れていないみたい。プラグホールからもシュポシュポと勢いよく空気と言うか混合気(?)が吹き出ました。


(となれば圧縮はOK、今のイグニッションコイルはテスト用の奴やからかな?)


 ジャイロX初期型はエンジンの修理でカバーを外すとイグニッションコイルも外さなければいけません。もしかするとスーパーカブ系エンジンのホンダソロに付いていたらしい中古イグニッションコイルが原因かと思いました。まぁそれは後回しです。


(じゃあキャブの調整ミスか……)


 火花が出て圧縮があるとなれば混合気でしょう……と思った私は修理書片手にキャブレターを調整しました。キャブレターの調整はエアスクリューとスロットルスクリューでします。私にバイクの事を教えてくれた師匠曰く「エアスクリューは一回転半、スロットルスクリューは三回転半。締め切った所からそんだけ緩めたらで大概エンジンがかかる」だそうです。ちなみに整備書によると基準値は『エアスクリューが締め切った所から一と十分の六回転、スロットルスクリューは三回転半から調整』だそうです。


(ん~? そんなに間違えて調整してたって事は無いな~)


 ここで休日は時間切れ。今までの様に時間がいくらでもある生活と違って作業は進みません。頭を切り替えて明日からの仕事に備えます。


 

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