蘇れジャンクエンジン①
部品がほぼ揃いました。いよいよ組み立てなんですが、スーパーカブやモンキーに積まれている横型エンジンはホームページやブログ、さらに雑誌で組み立ての様子が詳しく出ています。詳しくはそちらを参照していただくとして、私が印象に残った所や初めて行った作業をメインに話を進めていきますね。
各部品の点検・洗浄・調達を終えた私が最初にしたのはベアリングの交換です。
クランクケースはアルミ製。ベアリングは鉄なのでクランクケースの熱膨張を利用してベアリングを抜き取ります。ここで活躍するのが電気コンロです。卓上で焼き肉を焼くアレですね。クランクケースを熱して熱々になったらウエスを敷いた木の板にバンバンとクランクケースを叩き付ければあら不思議。ベアリングが落ちて来ます。アルミは熱すると膨張して穴が広がるんです。
熱くならないうちに入れて傷つけたり、しっかり潤滑油を塗らないのに入れたりしてはいけません。クランクケースは女性を扱うのと同じように優しく接しましょう。くれぐれも穴に無理矢理入れたりなんかしない様に。
クランクケースはベアリングを抜いてから中性洗剤で水洗いしました。せっかくだからキレイにします。ゴミや埃が入らないようにする為でもあります。泥汚れってパーツクリーナーで洗いにくいんですよ。洗った後は拭き取って天日で乾燥させます。鉄部にオイルを塗って錆予防をしておきます。
不思議な事にこのエンジン、洗剤とタワシで中の汚れがガンガン落ちていきます。どうやらオイルが劣化しきって簡単に落ちるみたい。
ベアリングを入れる時もクランクケースは熱々に。ベアリングは冷蔵庫で軽く冷やします。少しですがベアリングが縮んで入りやすくなります。垂直に入れるのがポイントです。斜めに入れるとベアリング取付け穴が傷んでしまいます。
ベアリングが入ったらアウタレースをボックスレンチのコマやベアリングプーラーで軽く叩いて奥まで入ったか確認します。この時に『コンコン』では無くて『キンキン』と澄んだ音がしたら奥まで入っています。決して強く叩かないようにしてください。クランクケースが割れたら最悪です。
仕上げにパーツクリーナーでこれでもかと言うほどベアリングを洗浄します。交換作業中に多分埃がベアリングに入っているはずです。どれだけ気を付けても絶対入るはず。そのまま回すとせっかく交換したベアリングの内部が駄目になってしまいます。指でゆっくり動かして少しでも引っ掛かる様だったら洗浄してスムーズに回る様にしましょう。仕上げにオイルを点した新品のベアリングは引っ掛かる事無く動きます。「なんて滑らか」と歌いたくなるくらいです。歌いませんけどね。
ベアリングが入ったらミッションを組み付けですが、少しだけ注意が必要です。カブ系エンジンの4速化はニュートラルスイッチのローター(以下ローター)を使用するクランクケースに合わすのが基本です。4速化するのがカブ90だったらローターはカブ90の物を、50なら50の物を使います。
ところが今回、クランクケースはプレスカブの物を使います。プレスカブは走行中に3速からニュートラルに入るのを防止する機能が付いていません。新聞配達の時に便利な様にだそうです。その代わりに安全対策として3速にシフトするとランプが点灯して1速へ入れてしまうのを防いでいます。だからニュートラルの位置を感知するスイッチと3速に入っている事を知らせるスイッチが有ります。この3速に入った時にONとなるスイッチを使って4速ランプを点灯させようと思います。
ところが、珍しい事をしているみたいでインターネットで検索しても全く情報が出て来ません。
ここで仮組みをして試行錯誤です。
面倒ですが、カブの各種ローターを仮組みして接点にローターが来るかチェックです。ガスケット以外の部品を仮組みしてシフトチェンジして接点が何処へ来るかテスターを当てたり目視したりでチェックします。
「どうもプレス用(のローター)やと変やな」
「90用はニュートラルランプが行けるけど4速ランプは点かんな」
「4速用がニュートラルも4速ランプもOKか」
これは推測ですが、プレスカブの3速ランプのスイッチは『幻の4速エンジン』と呼ばれるセル無し4速エンジンと同じクランクケースを使っているのではないでしょうか?『幻』だけあって実物を見たことが無いのですが、80年代初頭のH・Y戦争の頃に出たセル無し4速エンジンって在ったんですが、外見がよく似ています。拙作『大島サイクル営業中』で速人君がお宝だと思ったエンジンです。
プレスカブの配線図を見ると3速ランプのスイッチは『エコノミースイッチ』とあります。ガソリン1リッターで180㎞の燃費を誇った幻のエンジンの名残でしょう。
とりあえずこれでニュートラルスイッチ問題は解決です。次もミッションの組み付けが続きます。
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