SSTを揃えましょう

 SST=スペシャルサービスツール


 要するに特定の作業をする為の専門的な特殊工具です。私が通った専門学校ではそう呼んでいましたが、他の所は何て呼んでるんでしょう?「エスエスティー」って呼びます?呼ばない?


 この特殊工具(以下SSTと表記)ですが、特定の作業以外に使い道はあまり無くて,

 その作業専用の工具です。しかも値段が結構高い。


 たった90㏄の小さなエンジンでも分解・組み立てで使うSSTは何個かありまして、そのほとんどはホームセンターでは売ってないんですね。


 私の場合、専門学校が自動車整備科で、それなりの工具は持っていましたがSSTは全く無し。ボックスレンチやメガネレンチは揃える必要は有りませんでしたが、全く何も持っていない人だと工具を揃えるところからスタートする訳ですから大変です。


 ホームセンターで工具を買うのも悪くないと思いますよ。でも、あまり安い工具を買わない方が良いです。ボルト・ナットが傷む事が在るのでそこそこの物を買った方が良いです。


 私が使っているのはKTCの物が多いです。これは私の通っていた専門学校の指定工具がKTCだったことと、近所のホームセンターで売っているのが理由です。

 コストパフォーマンスとか悪くないと思いますよ。きちんと使えば手に馴染んで一生モノじゃないかな?


 そんな訳も有って現在のペンネームとなっております。


 まぁ、それは置いておくとして、SSTの話。


 作業の順番で説明していきますね。ちょっとSSTと違うかもしれませんが最初に必要だと思うのが作業台。ビールケースが最高だと思います。木材を井桁状に組んで作るのも良いでしょう。要するに飛び出たシャフトを避けてクランクケースが安定して置ければよいんです。これが有ると無いで大違いです。私は木材で作りました。ネジ代込みで300円くらいで出来ました。


 続いて必要だと思ったのがディープソケットの8㎜。これが無いとジェネレーターカバーを外す事が出来ません。その後もクラッチカバーのボルトやらいろいろな場所で使いますから絶対買っておきましょう。


 次に必要なのが自作工具(?)のボルトポジションプレートです。これは売っていない工具です。作るのに必要なのは段ボールとマジックです。


「はぁ?段ボールにボルトを刺すだけ?覚えてられるやろ?」


 そう思ってる人、居るでしょ?私も最初はそう思ってました。でも、

 覚えていられると思ったら大間違い。絶対に忘れます。人間は忘れる生き物です。

 サービスマニュアルに書いてありますけど、油まみれの手でページをめくるのって面倒です。ご家庭にある材料なので簡単に作れますbyエド・チャイナ


 ※京丁椎の体形はエドでは無くてマイクに近いです。


 外すクラッチカバーのボルト位置を写して、付いていたところへボルトを差し込む。で、ジェネレーターカバーを外した場合はマジックで『ジェネカバー』とでも書けばOKです。一目でどのボルトが何処に付くか解ります。


 ジェネレーターカバーくらいなら覚えていられるかもしれませんが、クラッチカバーやクランクケースとなると『これ、どのボルトやったかいな?』ってなります。沢山のボルトを外す部品では作る様にしましょう。


 ジェネレーターカバーのボルトを馬鹿にしてはいけません。ボルト1本を間違えて締めただけでエンジンを全部分解して修理する羽目になる事が有ります。


 ジェネレーターカバーは外れましたか?続いて見えるのはフライホイール。フライホイールを固定するユニバーサルホルダーが必要になります。フライホイールを留めてあるナットを外すだけならインパクトレンチで出来ます。でも、取付け時に適性トルクでナットを締める為に用意しておきましょう。私が買った2機目のHA02エンジンはフライホイールのナットをインパクトレンチで締めたのでしょう。ネジ山がおかしくなってフライホイールもガッチガッチにはまっていました。締めれば良いってもんじゃないんです。


 私はインパクトレンチは強く締める為の物では無くて、早く作業する為の物だと思っています。緩める時は強目で、締める時は最弱で使っています。


 私はこの時にカムシャフトのスプロケットを留めるボルトも緩めました。


 ナットが外れましたか?次もSSTの出番です。フライホイールプーラー。フライホイールにセットしてクランクシャフトを押してハメ合い嵌合を外します。私が買ったのは十字タイプの物でした。ギュ~っと力を入れるより、プラスチックハンマーでプーラーにポンポンと衝撃を与える方が部品を傷めずに外せるようです。


 プーラーを叩くのは普通のハンマーでも出来ますが、プラハンの方がプーラーへのダメージが少ないです。プラハンは他の作業でも使いますし、何かと使えます。

 必ず1本は用意しておきましょう。


 フライホイールが外れたらジェネレーターを取り外します。フライホイールは磁石が入っていますから鉄粉を引き寄せます。ジップロックに入れてジェネレーターとセットにして保管しておきましょう。


 ジェネレーターが付いていたジェネレーターベースに+ネジが有ります。これを外すのに必要なのがショックドライバーです。ハンマーで叩いて強烈に締まったネジを外す工具です。ジェネレーターベースはとりあえず外さないでおきましょう。


 この後、順番とか分からなかったんでシリンダーヘッド・シリンダー・ピストン・スタッドボルトなどの腰上も全部外しました。急にエンジンが小さくなって作業がしやすくなります。部品を傷めない様に気を使いながら作業しましょう。


 私はここでジェネレーターベースを外しました。タイミングチェーンの通る穴から木の棒で押して外しました。表から抉って外してはいけませんよ。


 ドレンボルト・テンショナーボルトを外してクランクケースを裏返すとクラッチケースの登場です。オイルまみれになりますから作業台の下に何か受け皿を敷いておきましょう。私は料理で使うステンレスのバットを使いました。


 クラッチカバーを外し、遠心クラッチに載った細かな部品を外します。


 遠心クラッチ本体が見えたらSSTが登場。今度はユニバーサルプーリーホルダーです。丸い遠心クラッチを固定する工具です。遠心クラッチの蓋に+ネジが使われています。舐めない様に気を付けましょう。

 ここはショックドライバーは使わない方が良いのかなぁ?衝撃を与えるとクランクシャフトのベアリングを傷めそうで怖いです。ベストな方法をご存知の方は教えてください。私は次回の分解で楽なように六角穴の皿ビスに換えました。


 ふたを開けると遠心クラッチ固定の特殊ナットが出て来ます。4つの爪が着いたクラッチロックナットレンチで緩めましょう。


 ……と、分解で何個かSSTが出て来ました。組み立ては逆なので使う工具は殆ど一緒です。ピストンを入れるのにリングコンプレッサーが必要なのと、締め付けトルクの管理にトルクレンチが必要になるくらいでしょうか?


 あ、忘れてました。ガスケットを剥がすスクレッパ―と、部品の面出しにオイルストーンも必要です。部品の洗浄に灯油とパーツクリーナーも用意しましょう。


 私はサービスマニュアルを用意しましたが、キタコの『虎の巻』の方が分かりやすいかもしれません。サービスマニュアルはプロ用だからか不親切な所が多いです。


 で、SSTを買うのにエンジンと変わらない金額が掛かりました。1回だけしか使わないならプロに任せた方が良いかな?3回でも元は取れた気がしません。プロの工賃は工具を準備することを思えば納得できます。


「工賃ぐらい負けろや~」って言ってる人はその辺りも考えて欲しいかな?

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