カウントダウン
さとう あつき
Count10 優柔不断
「ちょ、ちょ、見た!見てしまった!」
渡り廊下の向こう側から、
そんな夏海の目前で、紙パックのジュースのストローを齧りながら右手をかざしてストップを促す
「何?あ、ぷりんパン買えた?こっちはオニ唐ゲット出来たよーん。」
イエーイとビニール袋を夏海にかざす美姫。
「ぷりんパン!買えなかった!違うの買った!あおいのカレーパンもなかった!たまごサンドとクロワッサンサンドどっちか好きなの選んで!てか、んなことより!!」
興奮気味の夏海からパンパンのビニール袋を半ば強引に押し付けられた。
たまごサンドとクロワッサンサンド。。。
随分くたびれた様子のたまごサンドとクロワッサンサンドを見つめる。
たまごサンド美味しそう。あ、でもクロワッサンサンド中々手に入らないんだよなぁ。
でも。でも…
「んでー?何見たのー?」
「
美姫が素早く夏海の口封じに動いたが、もう殆ど言ってしまったので、夏海はあてがわれた手に息を止められてるだけになってしまった。
「夏海ちゃーん、声おっきいですよー」
美姫が夏海を引きずるように歩き出したので、あたしもパンパンのビニール袋を手に二人の後を追った。
たまごサンドとクロワッサンサンドを覗き込みながら。
「いや、ほんとにビックリしたんだって!!購買でパン買って、ちょっとショートカットしようと思って中庭横切ってたらさ!たちっ!」
大声のままの夏海に、美姫が軽く睨み付ける。
「ばな、あつしがちゅーしてたの!ヤバイ、人のなまちゅー初めて見たんだけど!
しかもさ、あたしビックリしてパン落として、その時に橘篤史と目があって。
やばっと思ったら全然やめる気なしで寧ろこっち見ながら続きをしだしたわけ!!」
「だからこのメロンパンへこんでんの?」
美姫が夏海と正反対のテンションでメロンパンを苦々しく観察する。
「そう!バッサー!って落ちたから。
いや、そこ?唯一の感想が??」
「そういえば、橘篤史ってあおいの同中なんじゃなかった?」
「あおいー。どしたのー?」
夏海がビニール袋を覗き込んで固まってるあたしにワイパーのように手を振る。
「もう!決めらんないよう!!たまごサンドとクロワッサンサンド!どっちも好きなの!夏海先に選んでー!!」
「んじゃー、クロワッサンサンド頂きまーすー!!」
言いながら夏海がビニール袋からクロワッサンサンドを引き抜いたので、ビニール袋にはたまごサンドがぽつりと残った。
「はぁー。やっと、食べれる。いただきまーす!!」
胸の前で合わせた手が、以外にも派手な音を立てたけど、全然気にならない。
「うま~!!しみるー。」
「ほんで?橘篤史ってあおいと同中なんでしょ?」
「んー。」
「あれ、あんまりな反応。」
「んー…んーと、家が隣なんだよね」
「お隣り!…なんかあやしー事とかなかったのー?彼は学年きっての女好きってイメージ強いよー?」
興味津々で悪そうな顔をした夏美が、クロワッサンサンドそっちのけで前のめりになってくる。
「なーいよ。タチバナクンは、ただの幼馴染み。それに今みたいに強烈に女好きオラオラ人間じゃなかったし中2まで。」
「へー、以外。昔からオラオラ女好きかと思った。」
美姫が流れるような所作でオニ唐をとり、頬張る。もともと綺麗な顔立ちで、手足も長いので一挙手一投足が品よく見える。たとえ、食べているのがサンドイッチではなく、バリバリ男子飯のおにぎり+唐揚げ=オニ唐でも、だ。
「ほんと。」
カウントダウン さとう あつき @tktw0202
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。カウントダウンの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます