森林夢幻想


 (こならくぬぎにおにぐるみ)

樹冠を形成する木々は

いずれも固い殻をもち

落果はつらぬく矢のごとく

森のうつろを撃ち抜いた


 (いとたかくまでふじのはう)

中間層に梢無し

まっすぐと堅牢の幹

その合間に漂うなにか

旅立てないひとに似たもの


 (かくれたるそらののこりが)

中空みあげる猿の

ところどころへ張り出した

枝へすわる者をみている

永久なるこどもの休む場所


 (ちをはしるものくさりゆく)

朽ちたる木葉の多層体

森の木々より木々を知る

脚おおきもの数多にはしり

いずれの日にか弾雨に沈む

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る