第2話 《魔都》
「なァんで、俺の所に連れてくるんでェ……?」
「先生が一番『
「一介の作家風情が『魔都』の何を知るっててんでェ?」
鬼面で顔の半分を覆い隠した遊び人のような風貌をした男性がかったるそうに目の前に転がる青年になりかけの少年を見る。
狐娘だろうか、少年を連れてきた張本人の女性はくすくす笑ってそれを見ている。
「あら、一介の作家風情ならばお殿様がお頼りになるのは何故でしょうね?」
「……あれがバカ殿だからだろう」
「お殿様相手に『バカ殿』と言えるのは貴方くらいですよ。──
「
面倒臭げに煙管を蒸した鬼面の彼は意識の無い少年を再び見て、はァ……っと溜息を吐き、『此奴落ちてきたのな?』と狐娘を見て確認した。
「勿論。わっちが散歩中にあぜ道にぽつんと立ってたのさァ。反応の一つ応えてくれやしなかったよ」
「ふぅん……んで、バカ殿の耳には入れてんのかい? 一言言わねェと執拗いぜ?」
「それは適任者に任せたさァ」
「……そうかよ」
『難儀な奴だよ、「落ちてきた奴」ってのはなァ…』と呟き、椿と呼ばれた鬼面は立ち上がり少年を抱き上げ隣の部屋に寝かせた。
どうやら渋々だが面倒を見る事を了承してくれたらしい。
面倒臭がりな上に口も宜しくないこの妖怪は悪態を吐きつつもちゃんとこの人間を送り返すなり此処に住まわせるなり、面倒を最後まで見てくれるだろう。
彼の所まで運んできて良かった、と思う。彼の庵には悪意あるものは立ち入れない。人間を見るには丁度いい場所だ。
「あー…もう、何で俺の所に面倒事を持ち込む……葛の葉だとか、適任者は居たはずだろう?」
「葛の葉さんはお疲れでしょう? それに遊び人になら暇なのだし、良いかなと思ったのさァ」
「……俺ァ託児所だの何だの開いた覚えはねェぞ、
「あら、少し口が滑りましたね?
「…………チッ」
面倒臭げに
それを見ながらくすくす笑いながら口元を袖で隠す。
彼の庵を出る間際に振り返り言う。
「じゃあ、頼みましたよ? 椿さんなら人喰いなんてご法度もしないでしょうし」
「……人間喰ったってロクな事になんねェよ」
ボヤくように
くすくす笑って外に出て空に浮かぶ血の色をした月を見上げ呟く。
「──彼の人生に幸がありますように。…なーんて、ね」
眠り月に祈りの華を 壱闇 噤 @Mikuni_Arisuin
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