浦島太郎と地獄の雲
木沢 真流
第1話 知られざる人類存続をかけた戦い
え、何? 意外とみんなが知らない裏話?
大して面白くもないけど、この前聞いたのは浦島太郎の本当の話かな。これ結構有名だよね。え、知らないの? あの地獄の雲の話。
そうなんだ、じゃあ教えてあげる。浦島太郎と地獄の雲。
浦島太郎の話は知ってるよね、そうそう助けた亀に連れられて、ってやつ。
それで玉手箱をもらって、そうそう。
そこまでは良いんだけど、あの話少し変だと思わない?
あの玉手箱、何でお土産に渡したのか。お土産だったらもっと良いもの渡せばいいじゃない。
なぜあんな細工を乙姫様はしたのか。
それはこんな説があるの。
じつは竜宮城の生き物たちは陸上の生き物を
実際亀もいじめられてたでしょ、あれは偵察に来たところを見事に返り討ちにされてしまったわけ。
このまま陸上の生物が増え続けると、いずれ環境汚染も深刻になることが予想された竜宮城を代表とする海水生物たちは、今の段階で陸上を生き物の住めない、不毛の大地にする計画があったの。
その片棒を担がされたのが浦島太郎だったってわけ。
のこのこと騙されて竜宮城に行き、楽しい思いをさせてもらい、そして、乙姫はついに計画を実行に移した。
それは、最終兵器「地獄の雲」を地上で解放することだったの。
それが解放されれば、瞬く間に地上は地獄の雲で覆われて、そのまま地獄の雨が降って、陸上は不毛の地と化すことだったの。もちろん海にも影響はあるわ、でもそれを差し引いいても陸上の生物を殲滅させたい海水生物の思いは強かった。
ところが海水生物の幹部である乙姫一行は一つ大きなミスを犯した。それは、その作戦の片鱗を浦島太郎に聞かれてしまったの。
浦島太郎は何も知らないふりをして、その「地獄の雲」が詰まった玉手箱を抱えて、陸上に戻った。そしてその玉手箱を見つめたまま必死で考えた。
大切な家族、友人、そして陸上の未来のために自分はどうすればよいのか。
考えた先に見つけたのは、これだったの。
玉手箱を開けた瞬間、その雲を吸い込む。ひたすら吸い込む。吸い込みに吸い込んでいき、浦島太郎は命がけの吸引でその雲を全て吸い込むことに成功した。
でもその代償は大きかった。
浦島太郎の肺はぼろぼろになり、まるで廃人のようになってしまった。
そしてそのまま息絶えた。
浦島太郎は老人になったんじゃなくて、みんなの未来のために自分の命を犠牲にしたの。
泣ける話よね。
ところでさ、さっきから持っているその箱何? 漁師さんからお礼にもらった?
へえ、中身なんだろうね。さあ……ところで君、肺活量ある?
浦島太郎と地獄の雲 木沢 真流 @k1sh
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