XIV; Temperance



<逆位置; 調整不足 衝突あり 感情の行き違い>



 まず、ほとんどフォロワーもいないし大して呟きもしないような嶋中優子のツイッターアカウントが特定されて、学校裏サイトの掲示板にそれが晒されて、嶋中優子のツイッターアカウント宛てに大量の捨てアカウントから大量の嫌がらせのリプライが飛ぶようになる。


>死ね。

>キモい。

>ネクラで何考えてるか分からなくて怖い。

>お前が死ねばいろいろ丸く収まるんだよ。

>どうしてまだ生きてるの? 佐々木も園田も死んだのに。


 シンプルで直接的で、いかにも中学二年生っていう感じであじわいが深い。


 わたしはそういう捨てアカウントのゴミみたいなリプライの数々をわざわざ検索してまで探し出して、いちいち腹を立てて、ついでになにかの役に立つかもしれないと思って全部スクリーンショットで撮っておく。あっという間にわたしのスマートフォンのアルバムが大量の捨てアカウントの大量のゴミみたいなリプライのスクリーンショットで埋まってしまうし、またキミヤに「だからそういうのを見過ぎるのも良くないって」と、スマートフォンを取り上げられる。


 わたしはキミヤにスマートフォンを取り上げられても、とくに抵抗することもなく、そのまま大人しくテレビを見たり、もう何度も読んだ少女漫画を読み返したりして過ごすけれど、夕方になってキミヤが帰ってしまうとまたツイッターを開いてわざわざ検索して、しばらく見ないうちにめちゃくちゃ大量に増えている大量の捨てアカウントからの嶋中優子宛ての大量のゴミみたいなリプライにぜんぶ目を通して、逐一スクリーンショットを撮っていく。


 嶋中優子のツイッターアカウントはゴミみたいな大量のリプライになんのレスポンスも示すことはなく、その日の夜には消えてしまう。


 これでちょっとは落ち着くのかと思ったら、学校裏サイトの匿名の連中は今度は嶋中優子の自宅に直接嫌がらせの手紙を投函したりしているみたいで、その活動報告を馬鹿正直に学校裏サイトに書き込むものだから、ただ自宅からスマホでポチポチ見ているだけのわたしにもそういうことが把握できる。


「もう普通に、警察とかに相談していいレベルだと思うけど」と、わたしが学校裏サイトを見ながらムキムキと腹を立てつつ呟くと、部屋の隅で地蔵みたいにジッとしているキミヤが「警察に相談は、もうしているんじゃないか」と、言う。


「でも、ああいうのは仮に動いてくれたとしても結構時間がかかるものだと思うし、こいつらは基本的には木曜日までに勝負を決めようとしているわけだから、間に合うのかどうか」


「ああ、そうか」と、わたしはふんぞり返っていたソファーから少し身を起こす。すっかり失念していたけれど、こいつらがなんで嶋中優子に大量の捨てアカウントから大量の嫌がらせのリプライを送ったり、わざわざ自宅に直接嫌がらせの手紙を投函したりしているのかといえば、木曜日までに嶋中優子に死んでもらいたいからなのだ。


「え、でもこんな子供じみた嫌がらせを急に始めたくらいのことで、木曜日までに嶋中優子が死んでくれると思っているなら、さすがにちょっと、お脳があったかすぎるんじゃないのかな?」


 わたしも、嶋中優子のことは死んでしまった佐々木葉子とか園田友加里とかと同じグループの教室の隅で静かにしているような地味なタイプの子っていうぐらいにしか知らないけれど、でも、いくら嶋中優子が教室の隅で静かにしているような地味なタイプの子で、仮に特別に傷付きやすい心の弱い子だったとしても、そんな突然ツイッターアカウントに大量の嫌がらせのリプライが届いたり、自宅に嫌がらせの手紙を投函されたりしたくらいのことで、死んでしまったりはしないだろう。


 それだって、一年も二年も、何年もずっと続いたりするようなら分からないけれど、少なくとも、ものの数日で人を死に追いやったりとかはできないはずだ。そんなこと、やってみるまでもなく分かりそうなものだと思う。嶋中優子に大量のリプライを送っているアホたちも、ただ時間を浪費するだけでなにも得るものはないし、もちろん嶋中優子にもなんの得もないし、傍でムキムキして逐一スクリーンショットを撮っているわたしだって時間と感情を無駄に削っているだけだ。誰もなにも得してなくて、全員がもれなく消耗している。


「だから、別にそいつらも実際に効果があると思ってやってるわけじゃなくて、八つ当たりみたいなものなんだろ。なにかをしていないと不安だから、せめてなにかをやっているんだっていう実感を得たくて、それで嶋中優子に嫌がらせをしたりしているんじゃないのか?」

「え、なにそれ。めちゃくちゃ迷惑じゃん」


 まあ、そいつらだって不安なんだろと、キミヤは肩をすくめる。

 また木曜日に誰かが死ぬのかもしれない。それに選ばれるのは自分なのかもしれない。そういう不安に押しつぶされて、混乱して、混乱した頭でものごとを考えて、混乱した人間が混乱したまま、たくさんの混乱した頭を突き合わせて喧々諤々と議論をして、当然のように混乱した誤った結論に到達して、混乱したまま混乱した行動をしているのだ。


 迷惑な話だとは思うけれど、でも、その人たちが特別に邪悪な存在なのかというとそんなこともなくて、混乱した人間というのはそういった行動をとりがちなものなのだとは思う。混乱したままでも行動できてしまうというのは本当に困ったものだ。


 混乱からの行動であっても、実際にやってる行動が邪悪ならば、それが邪悪な意志によるものだろうと、ただの思考の混乱によるものだろうと、そんなのは邪悪を受ける側からすれば区別する必要もないことで、要するに、ただの邪悪なんだと思う。


 混乱したまま考えて、混乱したまま行動してしまう人間は、時として邪悪だ。


 混乱しているなら、自分が混乱していることを自覚して、まずは立ち止まるべきなのだ。混乱している時には自分の行動の正誤や正邪の区別もできないのだから、そんな状態で行動を起こすべきではないし、どんな決断もするべきではない。


 けれど、混乱している人間は混乱しているせいで、謎に普段以上に行動力にブーストがかかったりもするし、なにしろ突発的な死の恐怖という絶対的なものに尻を叩かれているから、あっという間に追い詰められて極端な行動を取り始めたりもするみたいで、七月二十七日の木曜日の昼過ぎにキミヤのスマホにリヒトからの着信がある。


「どうした?」

『キミヤ、今から出られるか?』


 別にスピーカーモードになっているわけでもないけれど、テレビを消していたからリビングは静かで、キミヤのスマホから漏れてくるリヒトの声がわたしにも聴こえる。ああ、久しぶりにリヒトの声を聴いたな、と思って、わたしは読んでいた少女漫画を閉じて、そちらに耳を傾ける。


「ああ、別に予定はないけど」

『手伝ってくれ。たぶんヤバい。嶋中優子を守る』


 キミヤは一瞬、わたしのほうに視線を向ける。行っていいか? と、わたしに許可を求めているような感じで、なんでわたしに許可を求めるのかは分からないけれど、リヒトがキミヤに助けを求めているのならキミヤは行くべきだと思うから、わたしはキミヤに頷き返す。


「わかった。すぐ行く。どこに行けばいい?」と返事をして、キミヤはスマホをズボンのポケットにしまって立ち上がる。

「どこに行くの?」と、ソファーから立ち上がって訊くと、キミヤは「危ないかもしれないから、むっちゃんは来ないほうがいい」と、身振りでわたしを押しとどめようとする。


「もうここまできたら、危ないのはどこにいたって同じでしょ。なにもしても、しなくても、木曜の午後にはポックリ死んじゃうのかもしれないんだから。だったら、わたしは自分が後悔しないように行動したい。なるべくちゃんと見て、ちゃんと把握して、ちゃんと判断をしたい」

 わたしがしっかりと顎を上げてそう言い切ると、キミヤは二秒だけ考えるような素振りを見せて「俺のそばを離れるな」と、ヒーローみたいに言った。


 なんでそんなことになっているのかはよく分からないけれど、リヒトはいま嶋中優子の家の前にいるらしくて、わたしたちも自転車でそこに向かう。わたしは嶋中優子の自宅の場所を把握していなかったのだけれど、同じ中学校に通っている同級生なのだから、当然近所で、十分もかからずに到着する。嶋中優子の家はなんてことのない住宅街の一戸建てで、家の前の通りには自転車が数台止まっていて、玄関先で6人の男子とリヒトが睨み合っている。リヒトが睨みつけている相手は百瀬琢磨をボカーン! と殴り飛ばして、藤崎五郎もぼこぼこに殴りまわしていた乱暴者の遠藤正孝で、そのリヒトの背中に張り付くようにして立っているのは、嶋中優子だ。


 ガシャンッ! と、キミヤがスタンドも立てずに投げ捨てるみたいに自転車から飛び降りて、その音で全員の視線がキミヤに集まる。わたしも自転車から降りて、ちゃんとスタンドを立てて、キミヤの後ろあたりに立つ。言われた通り、キミヤから離れないようにする。


 キミヤが状況を一瞥した後で、凄みのある低い声で「おい、なにしてんだよ?」と、遠藤正孝に言う。嶋中優子を背に庇っていたリヒトに、すこし安堵の表情が見える。嶋中優子は新たに増えた男子(キミヤ)(まあゴツいから見た目は怖いかも)が敵なのか味方なのか判断が付かなくて、ただただ困惑しているだけのように見える。


 どうやら、遠藤正孝がその他5人の男子生徒を引き連れて嶋中優子の家に押しかけてきていて、そこにどういうわけかリヒトが居合わせていて睨み合っているという状況らしい。よく分からない状況だけど、とりあえず誰が敵で誰が味方なのかはなんとなく把握できた。数の上では、こちら側の男子はリヒトとキミヤだけだし、わたしと嶋中優子を足したとしても4対6だから未だに劣勢だけれど、単純なパワーではキミヤは百人力だから、たとえ男子六人を相手に力づくの展開になったとしても、タダで負けたりはしないだろう。わりと拮抗していると言えるかもしれない。


 遠藤正孝たち六人の男子は、お互いに目くばせを送り合って、全員を代表するみたいな感じで遠藤正孝がキミヤに向かって「別に」と返事をする。両手を軽く広げて、ジェスチャーでも「別に」を表現する。


「ちょっと暑かったから、池にでも遊びに行こうかと話になってさ。そのついでに、通り道だったから嶋中も誘ってやろうかと思っただけだよ」

「嘘をつくなよ」


 またキミヤが凄む。反射的に遠藤正孝が「んだぁ?」と、凄み返す。たぶん、凄まれたら凄み返すというごくごくシンプルな男子中学生的な習性で。


 他の男子五人は今のこの状況に既にキョドキョドとしてしまっていて、たぶん大したことはないけれど、遠藤正孝だけはキミヤと一緒になって改造クロスボウを持って襲撃してきた藤崎五郎にも怯まずに応戦していたし、キミヤにも気迫で負けない胆力があって、堂々としたものだ。乱暴者ではあるけれど、それなりにリーダーシップがあるタイプだから、よりややこしい。


「嶋中を池に連れていって、それでどうするつもりだったんだよ」

「どうするって? そりゃ、暑いから池に遊びにいくんだよ。泳ぐんだろ?」

「それで、嶋中が溺れ死ぬって算段か?」

「さあ? 溺れるか溺れないか、そんなことまでは俺には分からないけどさ」


 なんだよ、ただちょっと気が向いて遊びに誘ってみただけじゃねぇか。そんなカッカすんなよ。

 遠藤正孝は、最初はそんな風にしらばっくれようとしていたけれど、キミヤが「なんで嶋中なんだよ?」と、訊くと「そりゃ、みんなで決めたことだからだ」と、返事をしていて、もうほとんどゲロっちゃっているようなものだと思う。嶋中優子を殺そうとしているのだ。


 そのみんなっていうのは、学校裏サイトとかに書き込みをしているようなネクラで陰湿な「みんな」のことで、で、そのみんなで決めたことっていうのは、要するに「次に死ぬべきは嶋中優子」とか、そういうネクラで陰湿なやつがみんなで話し合って決めそうなバカみたいなことなわけで、そんなバカの言うことに従って率先して行動しちゃっている遠藤正孝もたいがいバカなんだと思う。


「なあ。別に俺が決めたことじゃない。みんながそう言ってるんだ。みんなで話し合って決まったことにはさあ……従わなきゃいけないだろ? それがルールっていうもんだ」

「バカじゃないの? そんなルール、どこにもないよ」


 あまりのバカバカしさに堪りかねて、キミヤの背中越しにわたしは声を上げる。


「なんだお前……佐鳥か。リヒトとキミヤの腰巾着だな。そうやってキミヤの陰に隠れて、キミヤにしっかり守られて、そんで言葉だけはずいぶんと威勢がいいじゃないか。色気もなさそうなのに、お前はどうやってその朴念仁のゴリラをそんな風に手なずけたんだ?」

「な……! キミヤは別にそんなんじゃ……!!」


 そんなわたしの抗議は無視して、遠藤正孝は勝手に話を続ける。


「あのな、ルールがあって、それをみんなが守っているってわけじゃないんだ。みんなが守っていることを明文化したものがルールって呼ばれてるだけなんだよ。みんなが守っているのなら、それはどこに書いてなくても、そういうルールなわけ」

「みんなみんなって、そのみんなって誰? 学校裏サイトとかにポチポチ書き込んでるようなネクラで陰湿な子たちのこと? それとも、そこの後ろにいる5人?」


 わたしが不意にそう言って水を向けると、遠藤正孝の後ろの五人はまたお互いに目くばせを送り合っていて、でもなにも言わない。思った通りだ。この後ろの五人は遠藤正孝の号令がなければなにもできない烏合の衆で、大したやつらじゃないと思う。見かけ上、数が多そうに見えるだけの水増し要員だ。つまり、無視しても問題ない。


「みんなはみんなだよ。こいつらだって、そりゃみんなの一部には違いないけれど、でも、みんなっていうのはみんなのことだ。みんな、次は嶋中が順当だって言ってる。そもそもそれが最初にムルムクスが決めた自然な流れってもんなんだよ」

「ムルムクスだって。馬鹿じゃないの? 頭のおかしい藤崎五郎が妄想で作り上げた架空の神様じゃない。そんなのマジで信じちゃってるわけ? そんなの、藤崎五郎と同じくらい馬鹿じゃん」

「別に俺は藤崎の言ってたムルムクスを信じてるわけじゃねぇよ。ただ、そういうは現実にあって、現実に順番に俺たちを殺しているだろう? それを指し示すのに便利だからムルムクスって言葉を使っているだけだ、俺は」

「それで、そのをムルムクスって呼んでいるうちに認識を引っ張られちゃって、まんまとムルムクスに支配されちゃって、嶋中優子を殺そうとしてるんでしょ? だったら、やっぱり藤崎五郎と同じじゃん」


 藤崎五郎は警察の留置所の中でポクッと死んでしまったから、なにか不思議な権力的ちからが働いてなかったことになってしまったけれど、たぶん遠藤正孝がぼこぼこに殴りまわした時に頭に損傷を受けていて、それで遅れて外傷性のくも膜下出血で死んでしまったわけで、つまり、遠藤正孝が殺したようなものなわけで。


 本人に自覚があるのかなにのかは知らないけれど、遠藤正孝はすでに、ムルムクスの手足となって死を与える役割に組み込まれてしまっているのだ。


「あのさぁ、そうやって自分だけは違うんですみたいなポジションに立って優越感に浸って楽しいか? 現実として、そういう流れなんだから斜に構えたって仕方ないだろ? みんながそう言ってるんだ。そういう自然な流れにさぁ……逆らうなよ。な? 空気読もうぜ?」

「あはは! そうやって、みんなみんなって、随分と気が小さいんだね! 自分の行動に、自分で責任を持ちたくないんだ! だからそうやって、みんなのせいだ、ムルムクスのせいだって、意志の所在をどこか別のところに仮託したいんだ!」


 わたしが煽ると、遠藤正孝は面白いように顔を真っ赤にして「なんだと……っ!?」と声を上げて、わたしはなんだか楽しくなってくる。ひょっとしたら、遠藤正孝の言う通り、キミヤの大きな背中に守られてちょっと気が大きくなってしまっているのかもしれない。


「だったらよ、佐鳥。お前が代わりに死んでみるか?」

 遠藤正孝がそう啖呵を切って、その次の瞬間にはキミヤの手が遠藤正孝の襟首を締め上げている。電光石火って感じで、途中の動きが全然見えなかった。


「おい、遠藤。冗談でも言っていいことと悪いことってのがあるんだぞ?」


 キミヤが遠藤正孝の耳に顔を近づけて、そう囁く。遠藤正孝はキミヤに襟首を締め上げられて、つま先立ちになりながら、降参を示すように掌でキミヤの腕をぺちぺちと叩いている。息が詰まっている。


「遠藤!」「おい、久保塚!」と、後ろの五人からも声が上がったけれど、でも、誰も動かない。この子たちはただのなので気にしなくていい。


 キミヤが手を放す。遠藤正孝が後ろによろめいて、うしろの男子のひとりに肩を支えられてなんとか立っている。


「どうした? まだやるか?」と、キミヤが後ろの五人に向かって声を掛けると、五人はまた目配せを送り合いながら後退して、それぞれに自転車に跨る。遠藤正孝も、恨めし気な視線をキミヤに投げはしたけれど、捨て台詞も残さずに自転車に乗って去っていく。


 キミヤは去っていく遠藤正孝たちの後ろ姿を睨みつけていたけれど、角を曲がって見えなくなると、ようやく息をついてリヒトのほうに視線を向けて「大丈夫か?」と、声を掛ける。


「ああ、悪い。助かった」と、リヒトが返事をして、キミヤと軽く掌を打ち合わせる。危ないところを助けてもらったリヒトも、助けに駆けつけたキミヤも、それ以上はなにも言わない。ふたりにとっては持ちつ持たれつは当然のことなので、助けてあげた恩を着せることもないし、助けてもらったお礼も軽い。


 その様子を見て、わたしの胸の奥に、なにか少し居心地の悪い感情が生まれていることに、わたしは気が付く。え? ちょっと待って? いまのこれはなんだろう? と、自分自身で思ってしまう。


 それで、ひとまず嶋中優子を家の中に戻して、もう誰が来ても絶対に玄関を開けるんじゃないぞって言い残して、あとついでにわたしは嶋中優子と電話番号とLINEのアカウントを交換したりして、わたしたちもそれぞれ自宅に戻る。念のため、一旦わたしとキミヤはリヒトの家まで一緒についていく。家のまえでリヒトが「それじゃキミヤ、むっちゃん、またな」と言って、たぶんそれだけがリヒトが今日わたしに向かって発した言葉だったのだけど、でも、それだけのことでわたしは「ああ、久しぶりにリヒトに喋りかけてもらったし、意外と普通だな」って思って、ちょっとだけ嬉しくなる。



 学校裏サイトとかでピコピコやってるようなネクラで陰湿な連中に嶋中優子が本当に殺されてしまうなんてことはなくて、なんとなくこれで一件落着ってムードが漂っていたのだけれど、その日の夜中に嶋中優子の自宅が燃えてしまう。



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