第39話 ガールのみ?

 5月!

 春の陽気の中で大きなコイが空を泳ぐ季節!


 と、言ってもこのジャパリパークでは日々女性比率が勝手に上がり続けて、男性諸君は肩身が若干狭いとかなんとか言ってるけど私はしーらない!


 そんな所に気を回してる余裕なんてないんじゃい!


 私は今、アニマルガールの謎に迫っているのだから!


「にゅー」


 変な声を出しながらよだれを垂らして寝てるとあるアニマルガール。

 元動物の生態の都合上、1日の大半を寝て過ごしてるこの子の目の前でジャーキーをぷらぷらさせながら声を掛ける。


「起きろー」

「ふんふん、んにゅ!にゅーにゅにゅっ!」


 反応はしてる。

 けど、中々起きない。


 アニマルガールって起きない子は本当に起きないから困るんだよねぇ。

 多少叩いたくらいじゃビクともしないから、こうやって食欲に訴えかける作戦に出た訳なんだけど……


 パクッ!


 あ、食べられた。


「……」


 口にジャーキーを咥えたその子はゆっくりと目を開いた。


「おはよ!ライオン」


 まるで鬣のようなボリューミーな頭髪を持つライオンのアニマルガールが目を覚ました。


 さて、お気付きでしょうか?


 ガールなのに鬣がある圧倒的な違和感。


 先週新たに発見されたアニマルガールなんだけど、画像が飼育員の間で出回って程なくして誰かが疑問の声を上げた。


 どうして、メスなのに鬣があるんですか?


 最初は誰も頭髪って事でただの髪型としか見て無かったけど、その言葉を切っ掛けにどう見ても鬣に見えなくなって、私は観測員に個体調査を依頼した。


 結果から言うとライオンのアニマルガールは独立したばかりの群れ(プライド)を持たない若きライオンのオスだった。


 その事実が判明してジャパリパークの職員に電撃が走った。

 色んな意味でね!


 その後、私も色々調査したわけですよ。

 何より急務だったのは一緒にお風呂に入ること。

 豊かな果実と共にナニか付いていないかを確認しなくちゃいけなかったんだよ。


 確認したけど、何も付いてなかった。


 そして、アニマルボーイはたぶんいない。


 アニマルガールが現れてから半年くらい経ってから研究員達の間で囁かれていた事なんだけど、明確なオスの特徴を持つアニマルガールの出現で仮説がほぼ確信へと変わった。


 ……把握してないだけで他にも元オスのアニマルガールも居たのかな?


 さて、どうして?を解き明かすのは研究員のお仕事で、私達飼育員の仕事はどうする?を考えるのがお仕事!


 ライオンも今のところ何か変なところは無いし、アニマル“ガール”化の影響はない……ないのかな?

 とりあえず、悪影響はないからヨシ!


 1ヶ月くらい経過観察をして後輩ちゃん達の誰かに引き継ぎしよう。

 確か、ギンギツネがそろそろカリキュラムを終えて独り立ちする予定だから交代で入れて……


「ねぇねぇ、しーくいんさん」

「ほいほい、どした?」

「ごーるでんうぃーくって何?」


 日誌に今日のライオンの様子を記録していると、ライオンからこれまた微妙な質問が飛んできた。


「カレンダーとか覚えたけど、イマイチ違いが分かんないんだよねぇ。他のアニマルガールも違いが分からないみたいだしさ」


 ……確かに今のところはゴールデンウィークになっても普段の日と違いなんてほとんど無いもんね。


「今は違いは無いかもしれないけど、パークが開園したらどっさり外から人が来るようになるよ」

「どうして?」

「何故なら長期休暇だからなのです!」


 説明しよう!

 このジャパリパークは本土の港から船で片道1日を掛けて辿り着く離島にある施設。

 往復2日

 つまり、最低でも3日無いと色々辛いのだ!


 本当なら既に開園して、お客さんがたくさん来てる筈なんだけど、色々トラブルがあったからね。


 アニマルガールの事とかアニマルガールの事とか!


「そうなんだねぇ……んじゃさ。こういうのどう?」


 急にキリッとした表情になったライオンはぽわぽわした先程までの声と変わって、低く威厳がありそうな声を出し始めた。


「私はライオン。百獣の王である。ガォオオオオオオオオオオ!!!!!」


 身体の奥からビリビリ来るようなライオンの凄まじい雄叫びで木に停まっていた鳥は逃げ出し、遠くの方でライオンの声にビビッた何かが土煙を上げながら逃げだした。


「どう?」


 いつものぽわぽわした感じに戻ったライオンが私に感想を求めてきた。


「声でかい。ビビる。もっと小さく。子供泣いちゃう」


 数キロメートル先まで響き渡る雄叫びを間近で浴びた私はまだ身体がビリビリしてるような感じがしてる。


 でも、世間一般的なライオンのイメージは先程までの威厳ある感じだと思うけど、威厳あり過ぎて子供が泣いちゃいそう。


「そっかー」


 そう言って若干落ち込むライオン。

 素の性格はかなり温和だから、百獣の王のイメージを守ろうとして頑張って演技してくれたんだよね。


「でも、ライオンの演技は凄かったよ。正しく名演技!これなら女優さんにもなれるかもね」

「そうかなぁ?」

「そうだよ!」


 その後、ライオンの後に引き続きクジャク等のオスの特徴を持つアニマルガールが次々と発見されました。

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フレンズ日和(仮題) 空想現実主義 @ruikuroud

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