第14話 兵士の嘘
「なぜだ。」
兵士の提案にその真意を探る。
「…私は幼い時より打倒魔王のために訓練してきた。12歳の時に選別の剣を抜けなかった時は絶望したよ。だが私は立ち直りここまで来れた。ただあなたの力になるためにだ。だから私はあなたを知りたい。」
「おれを知ってどうする?おれの力次第でお前のやることは変わるのか?」
「変わりはしない。私の目的は魔王を倒すこと。そのためにあなたの力になりたいのです。」
「お前が知りたいのはおれか?それともおれの力か?」
「あなたです。」
「なら会話でいいだろう。」
「……。私には、言葉より剣を交える方が性に合っているのです。」
面倒くさいやつだ。
やや納得いかないが仕方ない。
「そこまで言うなら受けて立つ。」
「礼を言う。」
アリアとデネブ。そして他の兵士が見守る中、お互いに剣を抜き構える。
途端に空気が張った。
じりじりと距離を詰める兵士。
おれはあまり乗り気ではないから受けの姿勢でいる。
ザッ
踏み込みからの鋭い突き!
シュリィィン
それを剣で流す。
何回か剣を交えると気が済んだのか兵士は剣を止めた。
「まいったな。さすが選別の剣を抜いた者だ。実力が計り知れない。」
兵士が剣を鞘に収めながら言った。
「ふん。当たり前だろう。」
こいつ…。
やはり実力を計ろうとしてやがったのか?
いけ好かない奴だ。
それに何か引っかかる。
おれは戦いを見れば大体の力量が分かる。
剣を交えればなおさらだ。
兵士の披露した力量は12くらいか。
本気は15〜17。
だがふとしたほんの一瞬の動きに違和感がある。
もう少し上かもしれない。
いやないな。
隠しているとしたら上手すぎる。
おれの目を欺くことなんて絶対できないはずだ。
「私ももっと精進しないとな。」
「謙遜するな。衛兵にしては随分やる。お前みたいな奴がもっと西側の前線に行くべきだと思うが。」
「君にそう言ってもらえると嬉しいな。どうだろう。私でよければぜひお供させて頂きたい。王様の許しが出たらだが。」
「気持ちだけ受け取っておこう。」
来るものは拒まないが、こいつはもう少し様子を見たいと思った。
「そうか。残念だ。」
馬車に乗るとデネブははしゃいだ。
「すごいだなぁ。馬車なんて滅多に乗れないだよ!貴族みたいだ!」
反対にアリアは浮かない顔をしている。
「アリア。どうした?」
「なんかあの兵士さん…。カイトが剣を合わせた兵士さん。なんか変かも。」
アリアもか。
「大丈夫かな…?」
不安げな表情で聞かれる。
「心配するな。何があろうとおれ達なら大丈夫だ。おれ達は強い。」
「…うん。」
馬車に揺られながら先のことに思いを巡らす。
首都アルサナか…。
こんな勇者はいらないらしい 上叉来 仁志 @kamisaki
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