第13話 王の招待

次元の裂け目があるのは大陸の西側最果てだ。

そこは強力な魔物が荒らし回る危険地帯。

人々は抵抗を続け魔物の侵略を阻む。


しかし大陸の東端にある街に次元の裂け目が現れた。


これは魔王の攻めの一手ととらえられる。

おそらく両側から攻め落とそうとしたのだろう。

しかしそれは失敗した。

魔王からしたら相当な痛手のはずだ。

次元の裂け目がある本来の位置から遠く離れた位置に次元の裂け目を出現させることは膨大な時間と労力が必要になるからだ。

だからと言って気は抜けない。

今回の一件で奇抜な一手を打つ相手だと分かった。

それに次元の裂け目はじきに広がっていき魔王の手はこの世界全域に伸びるだろう。


「この辺の魔物は弱いだなぁ。」

「私たちが強くなってるんだよ。」


デネブとアリアが襲い来る魔物を倒して行く。

当然だな。

この辺の魔物は数字で表すと1から5。

おれ達の敵ではない。

さて2人の戦いを見て気になることがある。


「おい。一旦集まれ。」

「どうしたの?」

「何かあっただか?」

「アリア。デネブ。お前たちは何を意識して戦っている?」

おれの問いに2人は考え込む。


「わたしはできるだけ早く敵を倒すことかな?」

そう。アリアは意外にも力攻撃パワー系だ。

素早く動きフライパンで的確に敵の急所に全力の一撃を放つ。

容赦が無いのは女だからだろう。

「おらは何を意識してるだかなぁ。やっぱり敵を倒すことだなぁ。」

デネブも力攻撃パワー系だ。

動きは遅いが、体重を利用したタックルが強い。

荷物持ち係で力も上がってきている。

「そうだな。おれも同じだ。」

おれも力攻撃パワー系だ。

魔法攻撃や回復、援助魔法などの魔法マジック系は苦手だからだ。

できないわけではないがあの左手で文字を書くような感覚はもどかしくて好きじゃない。

それにおれには選別の剣がある。

下手な魔法攻撃より斬撃の方が強いだろう。

「ということはだ。」

言いたいことをさっさせる。

「?どういうことだか?」

デネブは分からないようだ。

この危機的状況を。

「アリアは分かるな?」

「うん。」

深妙なな面持おももちのアリア。

今さらではあるが気づいたようで安心する。

「い、いったいどういうことだか?」

たまらずに聞くデネブ。

やれやれ。さぁアリア教えてやってくれ。

「わたしたち最高のパーティーってことよ!」

「そうだ。おれたちは最高のパーティーだ…?」


!?


「お、おらたち最高だか!嬉しいだなぁ。」

「アリア?」

「一つの目的にみんなで向かう姿勢。重要なのはこれよ!これさえあればどんな敵も怖くない!ね!カイト!」

「ま、待て。待て。」

そうじゃない。

おれたちは揃いも揃ってパワー系、脳筋パーティーなんだ。

そんな単純な戦法で勝てるほど、先の敵は甘くはない。

一つの目的にみんなで向かう姿勢?

笑わせるな!

そりゃ今の敵は問題ない。

だがいつか行き詰まってしまうのは目に見えてる。

だからそれぞれ役割を決めようと言いたい。

だがそれをどうやって決める?

2人とも魔法の魔の字も知らなそうだ。

残る選択肢は…。


パカラッパカラッ


遠くから馬の足音が近づいてくる。

ええい。考え事をしてる時にうっとうしい。


ヒヒーン


5頭の馬にそれぞれ兵士がまたがっている。

そして後方には大きな馬車。

兵士の鎧には国の紋章。


そいつらはおれ達の前で止まった。


「我々は王様の忠実な衛兵。選別の剣を抜いた者はあなた方か。」

兵士の一人に聞かれる。

「そうだ。おれに何の用だ。」

「あなたは王様より首都アルサナの宮殿に招待されたのです。」

「ほう。なぜだ。」

「王様が会いたいと申しているのです。どうかご同行願いたい。」

「いいだろう。」

ちょうど首都に向かっていたところだ。

「カイト。大丈夫かな?」

アリアに小声で聞かれる。

「大丈夫だ。」

言いたいことは分かる。

おれの良くない噂が首都にまで広まっていないかだ。

もしかしたら歓迎されていないのかもしれない。

が、早く行けるにこしたことはない。

それにもたもたしてると魔王に時間を与えることになるからな。


「おらたちあの馬車に乗っていいだか?おら馬車なんて初めてだ!」

デネブが兵士に聞く。

「ええ。でもその前に彼と一戦交えさせて頂きたい。」

兵士がおれを指して言った。

その言葉に、いや兵士の雰囲気にほんの一瞬だけ嫌な予感がした。

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