創星記:第二節

4

陸と海から遠く離れたエルシエルは、自身の空で長く泣いていた。

涙は雨となって地上に降り注ぎ、あまりにも長く泣いているので、やがて洪水となって地上を押し流した。

ガイアラキとハルマーレは困り果て、《父》にエルシエルの機嫌を取るよう頼み込んだ。

《父》は二柱の頼みを聞き入れ、エルシエルの元へ向かった。

曰く、「二つのことをお前に許そう。まずは空に星を浮かべるがいい。これは私がやるつもりのことであったが、お前が好きに浮かべるのだ」

これにエルシエルはいたく喜び、《父》が言い終わるよりも先に、空へ星を浮かべ始めた。

そして気に入ったものの中から、光り輝くものを太陽、仄かに光り満ちて欠けるものを月とした。

更に北に居座って動かない星を自らの玉座と定め、星を動かすことにした。

エルシエルは星を動かすことに夢中になったので、《父》が後から、「空に生きるものを一つ、生み出す権利を与える」と言った時もそれを後回しにした。

それからというもの、地上の生き物たちはエルシエルの動かす星の巡りに従うようになった。

ガイアラキとハルマーレはこれを容認した。


5

十万年たち、エルシエルは一柱で星を動かすことに飽き果てた。

そして自らの空にはまだ生き物が何一ついないことを思い出した。

同時に、《父》から生き物を生み出す権利を与えられたことを思い出した。

何を作ろうか思い悩んだので、地上の生き物を見ると、あるものがエルシエルの目に留まった。

空神問うて曰く、「二本の脚で立って歩く、美しい姿をしたソレは何?」

陸神答えて曰く、「人間というものだ。《父》に形があったらと想像し、コレを作った」

エルシエルはガイアラキの所業に感心し、それを超えるものを作ることに決めた。

星を動かす作業の傍ら、五万年かけた作業はエルシエルにとって納得の行くものになった。

人間の姿に、自らが作るはずであった鳥の翼を付けた生き物を生み出し、これらに星の運行を任せることにした。

エルシエルはこの生き物を、星の動きを司る天の使い、天使と名付けた。

そして、天使が歌い、踊る様を星の瞬きと動きに変えて眺めることにした。



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