【 Page.17 】

霞音から渡された絵本の最後には、そんな物語が書かれたページがいつのまにか増えていた。


 霞音の本当の最後の作品はあの原稿ではなかった。



 そして、絵本には手紙が挟まれている。

 震えた手で、それを開ける。





 その名前で、たくさん素敵な物語を書いて、

 そして、いつかまた、読ませてください。





 それだけが書かれた便箋に、大粒の涙が落ちる。




 なあ、霞音。


 実はさ、好きなのはさ、お前の作品だけじゃなかったんだ。

 でもまぁ、そんなことお互いわかりきっていたんだろうな。

 だから、お前も俺も、笑っていたんだろ。

 実際、現実はどうなのかわからないけど、もうお前には聞けないんだから、そう思い込むぐらい、別にいいだろ? 

 バカじゃないのってお前は笑うかもしれないけど。


 ああ、そうだ、今日は、お前に報告があるんだ。

 俺たちの作品、二つとも一次審査通ってた。

 二人とも初投稿なのにさ、すごいな俺たち。実は才能あるんじゃないのか。

 ……まあ、まだ最終的な結果が出たわけじゃないから、調子こいたこと言ってるとまずいからこれ以上はやめておくか。

 

 あれからしばらく経ったけど、文芸部部室はやっぱ1人じゃ広いな。

 お前の望み通り、俺は1人でも物語を書くよ。

 

 きっと俺の青春ラブコメはまちがっているけど、

 でもさ、それでも、俺は、お前のために物語を書き続けるよ。


 お前の一番のファンの俺と、そして俺の一番最初のファンのお前。





 この名前と、一緒に。

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