《8》
メリィは、もうずっと帰ってきていなかった故郷へ、久しぶりに帰ってきました。
町の様子はすっかり変わっていて、それが母親との旅の長さを思わせるようでした。
帰ってきた理由は、お母さんの帽子を、自分の家に飾るため。
家に着くと、そこには、他にも、何個も似たような帽子が並んでいます。
全部、お世辞にも綺麗とは言えなくて、ぼろぼろで、でもなんども直して使っている形跡がありました。
お父さんのもの、お婆ちゃんのもの、ひいお婆ちゃんのもの、そのほかにもたくさん。
全ての帽子に、きっとそれぞれの物語があったのでしょう。
そんなこと、今まで気づかなかった。
ああ、そうか、
綺麗で、素晴らしい景色は、ここにもあったのか。
名残惜しいですが、そろそろ、出発することにしましょう。
メリィは、空色のきっぷを大切に自分のカバンに締まって、いつか自分も大切な誰かに、これを渡せるように。この切なくて、綺麗な景色に気づいてもらえるように、
そのための旅を、続けましょう。
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