菫
9-1
私とすーちゃんは、オオバコを見つけると必ず、踏みつけた。
道路の端っこに広がる野原や、学校の運動場、公園の隅っこに生えるオオバコは、どんなに強く踏みつけても、もったりとからだを起こして、ぴんとそこに立ち上がった。
楕円形の葉が、地を這うようにべたりと生え、その真ん中からひょいと伸びた茎がある。この茎を、すーちゃんと私がそれぞれ根本からぎゅっと一本ずつもぎ取り、二つ折りにする。折った茎を互いに引っ掛け、引っ張りあう。先にちぎれたほうが負けだ。私たちはこれを「茎相撲」と呼んだ。
ぐいぐい引っ張っているのに、茎はなかなか千切れなかった。たまにふざけて、オオバコの茎とタンポポの茎で戦ってみたりすると、あっという間にタンポポの茎はちぎれた。
オオバコの茎は、とても強かった。
「オオバコは、たくさん踏みつけた土にしか生えんのよ」
すーちゃんに言われたとき、私はすごく納得した。だから強いのだと。
また来年も、強い茎が生えるように、私たちは、オオバコが生える大地を、ぐんぐん、ぐんぐん踏みつけた。
何度踏みつけても、オオバコは背筋を伸ばして私たちを見上げた。
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