仏の座 ・ 烏野豌豆
8-1
「セリ・ナズナ・ゴギョウ・ハコベラ・ホトケノザ・スズナ・スズシロ」
基本的に嫌いなもののない私は、難なくその「草入りおかゆ」を食べていたが、クラスメイトの何人かは毎年それに苦戦していた。春になると給食に出てくる七草粥。
担任の先生やクラスの皆が唱えだす。
「セリ・ナズナ・ゴギョウ・ハコベラ・ホトケノザ・スズナ・スズシロ」
どこで区切るのかも分からないのに、どんな草なのかも分からないのに、私は「春の七草はなんでしょう」と言われるとその呪文を諳んじることができた。
「これ、ホトケノザって言うんて」
すーちゃんがそういった時、私は、咄嗟にその呪文を思い出していた。これが、あの呪文のホトケノザかぁと。
ホトケノザの葉っぱは妙にごわごわしている。なんだか食べにくそう。
ひょいっと伸びた茎に葉が円になって一段、二段、三段と階を重ねている。頂上階には猫の手みたいな形の小さな薄紫の花がぬっと咲いている。
私たちにとってこの花の部分がとっても大切だ。花は、「野原のおやつ」だった。
薄紫の花をちょんとつまんで引き抜くと、きれいに花の部分だけ取れる。その花と草とがつながっていたあたりを、ちゅっと吸ってみると甘い。少量だけれどこの花の蜜が吸えるのだ。
私とすーちゃんは、この特別なおやつが大好きだった。
春の野原は、いろいろなものが咲く。私とすーちゃんの寄り道は、春が一番長くなる。おなかがすいても「野原のおやつ」があるのだし。
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