7-2

「イチョウのバラ」は、そんな銀杏の落ち葉を拾い集めて作る。

 扇形の落ち葉を一枚、一枚重ねてバラに見立てていく。最初は、落ち葉を筒状にしてそれを包むように他の落ち葉を重ねていくと綺麗に出来上がる。

 銀杏の葉は、扇形にちょろんと枝が伸びているのでそこが持ち手になり、最後にはその部分を輪ゴムでくくって固定すると完成する。

 銀杏の葉は、ただ黄色のものだけではなかった。まだ黄緑色の葉もあったし、変色して茶色くなったものもあった。時には黄緑と黄色が半分ずつというのもあった。それらを駆使して、黄色いバラ、黄緑のバラ、グラデーションのバラと、様々作ることができバラエティも豊かだった。

 秋になると私たちは、木に登りじゅうたんを眺め、そのじゅうたんでバラを作ってから帰った。


 家に帰ると、私はその作った「イチョウのバラ」を玄関の靴箱の上に置いた。

 後で、これを見つけて眉をひそめる母を思いながら、大きな声で「ただいま。」を言った。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る