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「イチョウのバラ」は、そんな銀杏の落ち葉を拾い集めて作る。

 扇形の落ち葉を一枚、一枚重ねてバラに見立てていく。最初は、落ち葉を筒状にしてそれを包むように他の落ち葉を重ねていくと綺麗に出来上がる。

 銀杏の葉は、扇形にちょろんと枝が伸びているのでそこが持ち手になり、最後にはその部分を輪ゴムでくくって固定すると完成する。

 銀杏の葉は、ただ黄色のものだけではなかった。まだ黄緑色の葉もあったし、変色して茶色くなったものもあった。時には黄緑と黄色が半分ずつというのもあった。それらを駆使して、黄色いバラ、黄緑のバラ、グラデーションのバラと、様々作ることができバラエティも豊かだった。

 秋になると私たちは、木に登りじゅうたんを眺め、そのじゅうたんでバラを作ってから帰った。


 家に帰ると、私はその作った「イチョウのバラ」を玄関の靴箱の上に置いた。

 後で、これを見つけて眉をひそめる母を思いながら、大きな声で「ただいま。」を言った。


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