6-2
私たちは、可愛いものが大好きだった。
すーちゃんのピンク色のランドセルは、特にうらやましかった。
「女の子は、赤よ」といわれて買った、渋い赤色のランドセルはみんな持っているし、不満はなかったけれど、ピンク色には勝てない。ピンク色は最強だ。
通学路の、私が落ちた溝の近くにビニールハウスがふたつある。
側には、広い野原があって秋になるとそこは背の高いコスモスでいっぱいになる。
私とすーちゃんは、たくさんのコスモスが大好きで、一日に一本だけコスモスを摘んでもいいというルールを作っていた。
中でも、やっぱり人気だったのがピンク色のコスモスである。
薄い桃色より、すこし紫がかったような濃いピンク色が私は好きだった。たぶんすーちゃんもそうだったと思う。
花びらの感触は忘れられない。ベルベットみたいに、湿っているような、つるつるの光沢感があるような不思議な手触り。ずっとさわっていたいし、もっと強く撫でたいけれど、繊細な花びらはすぐに爪の跡がついてしまうし、くちゃくちゃになりやすい。
だから私は、折った茎の先を人差し指と親指で優しくつまんでくるくるしながら眺めた。くるんっと速く回すとピンク色の円ができた。
「ねえ、ねえ、知っとる?コスモスの花ことばって『乙女の純情・愛情』なんだって」
「可愛い!」
可愛いは、最強である。
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