庭石菖

4-1

 すーちゃんと一緒に、柿泥棒をした。

「中学校へ行く坂」には、大きな柿の木と栗の木があった。私たちは、よくそれを見に寄り道をした。

 私は、本当は栗の木の下に行くのは嫌いだった。

 木の下に無数に落ちているイガグリ。とげとげだらけのその物体がいつ私にふりそそぐか分かったものではない。でも、柿の木は好きだった。たわわに実ったその木の枝は、重そうに弛んでいた。柿の実の、橙色が鮮やかで、かさかさした柿の葉が大きくて好きだった。

「ねえ、あの柿とってみよう。」

「とる?」

 いつも見ているだけだった私たちに変化が起こった時だった。

 本当は、柿を食べるのはあまり好きではない私も、どうしたことか胸が躍った。「取る」と思っていた私たち。

 始めは、ジャンプをしてみた。

 交互に私たちは柿に手を伸ばしてジャンプした。すーちゃんが跳ぶときは私が、私が跳ぶときにはすーちゃんが、互いのランドセルを持った。

 しかし、私たちの手は、柿に掠めることもなくただ空をかく。ぴょん、すい。ぴょん、すい。という具合だ。

 次に取り出したのが手に持っていた傘。高く掲げてジャンプする。

 しかし、ジャンプをすると、どうしたことか、ぴんと伸ばしていた傘はくにゃりと横に倒れてしまう。何度やっても右へ左へ、前へ後ろへ、傘は柿を避けていく。

 へこたれず、次はそのへんで拾ってきた棒切れ。傘よりは少し長くて軽い。すーちゃんからトライして柿に届かず、私に交代して助走をつけようとしたその時だった。

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