椿

2-1

「雨って飲めるんよ」

「アメ」



 二人して、傘をさして歩く帰り道。すーちゃんが教えてくれた。



 すーちゃんの傘は、薄紫にピンクや黄色の淡い色で、リボンを書いた女の子らしい傘だ。持ち手もみんなが持っているプラスティックのではなく、皮だった。


 私は、すーちゃんの傘がすごくうらやましかった。私の傘はというと、不細工なくまが歯磨きをしている絵がたくさんついたピンクの傘だった。

 ピンクというところ以外、どこも気に入っていない傘だった。


「こうやってね、」


 そう言って、すーちゃんの雨水試飲実演会が始まる。




 小学校を五百メートルくらい行ったところに道路にせり出した柿の木がある。

 木があるのは古いおうちで、背の高い椿が柿の木とならんでびっしり植えられていた。

 椿の木の生垣である。私たちは、ちょうどそのあたりを歩いていた。


 すーちゃんは、左肩にあの可愛らしい傘の柄を預け、左手で持ち手を持って固定すると、右手でその椿の葉についた雨粒を一粒すくった。


 椿の葉は、つるんとしている。


 すーちゃんは、すくった雨粒を口元へ持っていくと、すっと空気を吸うようにその雨粒を吸い込んだ。






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