10話 いつもと違う世界
普段は感じることのない頬のくすぐったさに目が覚めると、辺り一面緑色の丘にいた。上を見れば、少し雲のある青い空があった。普段のただ飾りしかない部屋の天井じゃなくて、少し戸惑っていると、隣で寝言が聞こえた。
「うっ……牢馬……やめろ……!」
辛い夢を見ているのか、苦しそうな顔をした箔が私の横にいた。
なぜ箔がいるのか、私がなぜ外にいるのか。一瞬分からなかったが、眠気が覚めてくると同時に、昨日の晩の出来事を思い出した。
昨日、箔と私は城から出て、箔も術で空を飛んだ。花火を見るという長年の念願を果たした。
そして、向かう途中に睡魔が襲ってきて、そのまま箔に身を任せて眠ってしまったのだ。
今、自分がいるところは何処なのか。
それは、国旗を見て、一瞬で分かった。
ここは、カリオストラ。商業が盛んな鏡の国の中でも、一番お金を稼いでいる都市であり、龍の国から離れている場所だ。
きっと、これからの旅で使うものを買いそろえるのだろう。
「ありがとう、箔。」
何だか、感謝の気持ちが心から溢れてきて、彼の頭をなでながら、そう言った。
聞こえているはずもないのに、箔は私のなでる手を握った。
それがしばらく続いて、手を放してもらった数分後に、ようやく彼は目を覚ました。
「おはよ、季楽。よく眠れたか?外だから、寝にくかったかもしれねぇけど。」
「ううん、意外と眠れたよ。」
「そっか、よかった。」
箔は安心したように微笑んで、私に手を差し出した。その手に私の手を重ねて、引っ張ってもらい、立った。地面が固い床じゃないことに、少し違和感がありながらも、二人で歩き始めた。
君と見た空の果てで 神奈 万桜 @kurahashihaya
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