脱出方法

神木ゆうたと広瀬イズムは、この世界から脱出する事を決意した。幸い、神木もイズムも特に親しい人が居なく、この二人で旅することになった。


「ゆうたー。ゆうたー!起きてってば。」


「おう、起きるから。あと、少し……。」


「起きなさいよ。今日から活動はじめるんでょ!?」


とイズムは神木の掛け布団を取ろうとする。


「今何時だと思ってるんだイズムさんよ。まだ、8時だ……ぞ……。」


「って、寝ないでよ!早く起きてって!あんたちょっと学校行かなくてよくなったからってだらけすぎでしょ!?」


「わかった。わかった。どっこらしょっと。」


「あんた。昨日、あんなにカッコつけて啖呵切ってた癖してこれって。先が思いやられるわ。」


「そうは言ってもな。よくよく考えたら何すればいいのかさっぱり分からん。だけど、何か行動しなきゃ!ていう謎の使命感があるんだよなー。」


「そうね。私も今何か食べないと!ていう使命感ならあるわ。」


「それはお前の腹が減ってるだけだろ。」


「分かってるなら。早く私に食べ物を捧げなさいな。その為にゆうたをわざわざ起こしたんだから。」


いつになく偉そうな事を言うイズム。


「お前。俺の貯金がきれる前にこの世界から脱出しなきゃいけないんだぞ。今日だってただでさえ出費の多いホテルに泊まったんだからな。」


「分かってるわよ。貯金が切れたら犯罪起こして金をむしり取るのよね。ワクワクしてきたわ。」


「全然わかってねぇじゃないか!お前、いくらこの世界から離れるからって、やっていい事と悪い事があるだろう!」


「別にいいじゃない。あたし達は小説の中の登場人物なのよ。今更それがわかったのに、刑事罰なんて気にしてなれないわ!」


そんな腑抜けた事を言うイズム。それに対して神木は。


「刑事罰なんて気にしないって言ったなイズム。」


と確認するようにイズムに問う神木。


「ええ。そうだわ。」


「なら、今から俺がお前にセクハラ行為をしてもいいって事になるよな?」


ニヤニヤとしながら、神木は怪しいての動きをしてイズムに向ける。

だが。


ゴツンっ!!


「うわぁ!痛ってーーな。冗談に決まってるだろ!?」


神木は問答無用でイズムに殴られた。あまりの痛さに神木は悶え苦しむ。こんな展開になった神、つまり作者を恨んだ。そう、そこのお前だ。


「次そんなこと言ったら、あんたの息子切り落とすわよ。」


「ひ、ひでぇー。容赦なさすぎだろ。悪かったって。」


そう言えば、この世界が小説だってか事を忘れていた神木。あまりの理不尽さに頭を抱える。





「なんでよ!?なぜ、こんな事に?私のなにがいけないのよ!?」


「おい。」


「確かに私は、下手かも知れない。でも、これじゃあんまりじゃない……。」


「たがら、おいって!!」


「シー。大声出さないで。それより、ゆうたも手伝ってよ!」


「何がシーだ。……てか何遊んでるんだ。あと、無駄なお金使うなってあれほど言っただろう!?」


「しょうがないじゃない。このぬいぐるみが私に取って欲しいような目をしてから。」


もう少しましな言い訳しろよっと神木は胸中で呟く。だが、イズムは、これみよがしに上目遣いで神木を見てくる。こうして見るとイズムはかなり可愛い。可愛いくせしてその上目遣いは反則だと神木は思う。


「分かった。そのぬいぐるみは俺が取ってやるから。それで、我慢しろよ。」


「わーありがと!流石ゆうた様!素敵!」


「わざとらしいのやめろ。てか、これ1回500円もするんだな。イズムはこれに何回挑戦したんだ?」


何気ない、純粋な神木の質問にイズムは。


「そんなことより早くやってゆうた。これ意外と難しいんだよね。もし、1回で取れたら特別に頭撫で権利を進呈するわ!まぁ、なくなった1万円はちゃんと布石となるわ……。」


「い、いらんわ、そんな権利。よし、任せとけ。これでも俺はクレーンゲームの腕が……いや待てよ。今お前なんつった?」


「さぁ、早く取って!早く早く!」


こいつぅ!サラッと受け流したが、1万円も使って事は、20回もやったのか!


そして、神木は、1回でぬいぐるみを獲得した。もちろんそのぬいぐるみはイズムに手渡す事はなかった。神木が取ってやると宣言はしたが、取ったぬいぐるみをイズムにあげるとは一言も言っていない。

イズムを軽くあしらって、神木はふと本来の目的を思い出す。こんな事してる場合じゃない!早く出口を見つけないと。

目的を再確認した神木は、イズムを連れてまた昨日お世話になったカフェへ足を運んだ。









「アイスティー1つ。」


「かしこまりました。」


「あ、えと、僕はホットコーヒーで。」


「はい。ご注文振り返ります。アイスティー1つにホットコーヒー。以上でよろしいですか?」


「「はい。」」


「では、ごゆっくり。」


その店員は、手際よく注文を取り厨房へ向かった。その姿を見た神木は、この世界が仮想のものだと疑ってしまいそうだった。だが、神木の向かい側に座っているイズムを見ればわかる。

よく考えれば、イズムは絶世の美少女だ。本当の現実がなにか、またどこにあるのかは分からなくなってしまった神木。しかし、このイズムという存在はある意味ありえない。 何故って。


「ま、誠に申し訳ございません。」


「あんた。アイスティーを頼んだのに、ミルクティーを持ってくるなんていい度胸じゃない。」


とイズムはそれを全部飲み干してから店員に言っている。


「ですが、お客様。確かにアイスティーを持ってきたはずですが……。」


「いいえ、ミルクティーだったわ。私はアイスティーを確かに頼んだわよね。今からタダでもう一杯持って来なさい!サイズはもちろんLで。」


「ちゃっかりサイズまで指定すんな。てか。」


と、当然のようにアイスティー二杯目を要求するイズム。

神木はそんなバカを止めるべく店員さんをフォローする。


「おい。イズム。それは、流石に無理があるだろ。後、店員さんを困らすなよ。このぬいぐるみ挙げるから。」


「わかったわよ。1度クレームっていうのをやってみたかっただけよ。でも本当にミルクティーだったんですけど。」


神木は一部始終見ていた。店員さんは確かにアイスティーを持ってきた。だが、イズムは神木のホットコーヒーに付いていたミルクを勝手に開け、自らアイスティーに注いだのだ。


「言い掛かりも大概にしろイズム。自分でアイスティーにミルクを入れたんだろーが。あ、すいませんね。お騒がせしました。本当にすいません。」


と神木はイズムの問題児行為に対して店員に謝る。イズムは全然反省していないのか、鼻歌を歌いながらメニュー一覧を眺めている。


「あ、すいません。あと、このジャンボシラノワールド1つ。」


「はぁー。よく食うなこいつ。」


嬉しそうにそして無邪気に待っているイズムを見ると神木は親の大変さが分かった気がした。見てくれは悪くないのに中身が残念だ。そうだよ。と神木は深くため息をつく。本当にありえねぇー。


「そぅいへばゆふた。」


「飲み込んでから話せ。」


「うん。……そう言えばゆうた!昨日変な夢を見たわ。」


「夢?」


「うん。なんか、私とゆうたが死んじゃって。そして、気づいたら違う世界にいて……。」


待てよ。それってまさか……


「それが出口ってか!?俺らに死ねってか!?身も蓋もない話じゃないか!」


「いや、あくまでも夢で見ただけだわ。」


「てことは、その様に神が進めるとしたら。おい、イズム。ここ出るぞ。なんだか嫌な予感がする。」


「わかったわ。」


と神木とイズムが席を立ち上がったその時。


「きゃーーー!!!!」


「動くな!!!!」


黒い服に包まれ、顔にはマスクとサングラス、帽子といかにも強盗犯の姿をした男達3人が、さっきの店員を人質にしている。

あまりの急展開にイズムは怯えながら、神木の服の裾を掴む。

神木が危惧していた事がすぐ起きた。神木は内心こんなクソッタレな状況にした神を恨んだ。

















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夢物語 @shion1475

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