同室のあの子は自分を「人造人間」だと言う

カザミウサギ

起 No.0

 季節は夏。

 そして今は、誰もが待ちに待った夏休み真っ只中である。

 夏休みと言えば海やプール、バーベキューに夏祭りや花火大会なんかが夏の風物詩の上位ランキングに確実に当てはまるだろうが部活にバイトのある俺はそこまで時間を割ける程の余裕もなく、いつものようにバイクで学校に向かう。

 今日の日程は午前中は部活、午後からはバイトという、俺にとってはハードなスケジュールではあるが、これが俺の日常であり、この日もいつも通りで、いや、そうなるはずだったんだ。

 突然だった、ガッシャーンと自分の真横で激しい衝突音が聞こえたかと思った時には俺は、乗っていたバイクと共に道路に倒れていた。

 辺りでは、キャー!とか、わぁー!などの男女の悲鳴や誰かが救急車を呼ぶ声が遠くの方で聞こえたがそれは、薄れゆく意識と共にまるでテレビの電源が、消されるかのようにプツリと途切れた。

 次に俺が目覚めるとそは、無機質な電子音と少し薬品の匂いのする天井も壁も白い部屋だった。

 まぁ、一目で病院であることはわかったがなぜ自分がここにいるのか、わからず、全身が少し痛むし視界も少しぼやけて見える。それに、視界に映っている幾つもの管が自分へと繋がっていることも気になった。

 なぜこうなっているのか、今朝の自分の行動を思い返そうとしたとき、静かな足音と共に看護師と思われる女性が現れ何やら機械の操作を始めた。

 声を出そうとしたが、上手く出せず俺の口からは呼吸音のみが音となってでるだけだった。

 だが、女性の看護師は、俺の視線に気づいたのかふいにこちらに顔を向けバッチリと目が合うと一瞬驚いたような表情になるも、すぐに「意識が戻られたんですね。良かったです。今、担当医を呼んで参りますので。」と冷静に且つ優しい口調でそう俺に伝えると足早にどこかに行ってしまった。

 俺は、再度この現状に至った経緯を思い返す。確か、朝起きて部活と午後のバイトの準備をしてそこから家を出て学校まであと少しというところで、真横でものすごい音がしたところまではハッキリと覚えているが、そこからの記憶が極薄で、つまるところ覚えていない。

 しかし、何らかの事故に巻き込まれたということは間違いないだろう。

 そんなことを、悶々と考えていると再び今度は複数の人の足音が近づいてきたことにより俺は思考を中断した。

 その足音は、俺の近くまで来るとピタリと止まりなにやらひそひそと話合ってから数人がその場から離れていく気配を感じる。

 どんな話をしたのかはわからないけれど多分俺のことだろうななどと、どこか他人事のように思っていると、白衣を見事に着こなしたこれぞ世に言う医師という感じの眼鏡をかけた男性が俺の視界に入る。

 男性は「君の担当医の雨瀬豪あませごうです。よろしく。」と手短に自己紹介をしてからどこか、痛いところはないか、気分は悪くないかなどいくつか質問した。

 俺はそれら全ての質問に首を振るか、頷くかで返答した。男性の方も俺がそうする事しかできないことを悟ったのか、俺が返答しやすい質問しかしなかった。

 その後血圧や体温や心音を確認しつつそれを記録し終えると、「まだ目が覚めたばかりだし今日はゆっくり休んで」と言ってから助手なのか、先ほどの女性の看護師にあとはお願いします、何かあったら呼んでくださいと記録したものを渡しどこかに行ってしまった。

 雨瀬先生が去ったあと傍にいた看護師の女性が「私は涼風夕月すずかぜゆづきです。この後も私や他の看護師が何度か見回りに来ますが、何かありましたらナースコールを押してお呼びください。」と丁寧にお辞儀をしてからベッドの周りのカーテンを静かに閉じどこかに去っていった。

 その後は、先程の説明通りに、数時間毎に涼風さんや 看護師の人が見回りや機会の調整に来るだけだった。


 ー翌日

 雨瀬先生が「今から他にも色々聞いたりする事があるんだけどベッド起こしても大丈夫?」と聞いてきたので俺は二つ返事で「はい」と答えられる程にまで回復していた。

 先生も声が出るようになって良かったと

 少しホッとした様子だ。

「君ここに来る前のことどれくらい覚えてる?」と問いかけられ、えっと・・・と、俺はのことで覚えている事の全てを話しはじめた。

 そう『』の話を・・・・・・・。





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