第13話 江戸は男子のパラダイス?!
屋台でしこたま食べた僕たちは帰路についていた。
「そういえば、夕飯の食材はどうするのですか?また棒手振りから調達ですか?」
「いや、佑真が漬けた大根があるだろ。それと茶漬けってところだ。」
……やはり、江戸時代は質素過ぎる。今日は屋台で食べることができたけど、現代のように一汁三菜という訳には行かなそうだ。
「はあ、早く帰りたい……。」
「まあ、初日はこんなもんだろ。“じゅうでん”が終るのもまだまだなんだろ?」
「最低でも十日、天気が悪くなればもっとかかりますね。」
「そして半刻で35里の速さで動くものねえ。いっそ、江戸で暮らさねえか。戯作や絵の手伝いしてくれればいいさね。」
「平成には僕の恋人がいるんです。彼女のためにも帰らないと。」
「へえ、そんなにいい女なのかい。」
「そりゃあ、もちろん!僕のクラスのアイドルですから!」
「あいどる?」
「ん、ええと。吉原の花魁並み?皆が憧れるけど、手が出ない存在というか。」
花魁は例えが行きすぎかな。
「いや、もうちょっとランク下げて、お茶屋の看板娘とか?」
「よくわかんねえが、お前さんが惚れてるのはよくわかった。じゃ、今度は吉原へ行くか!運が良ければ花魁を見られるし、どっちが美人か比べてみるんだな。」
「えええ!僕、まだ16歳です、いろいろ条例にひっかか……。」
いや、条例なんて存在しない時代だ。それにこの時代は確か15歳くらいで元服して成人だったような。
ってことは、R18じゃなくてR15でエロの全てが解禁?!混浴で女性の裸見放題、モザイク無しの春画、お金さえあれば江戸の風俗と言うべき吉原へ繰り出すのも全てオッケーとは!
「なんだ、鼻血出して。」
「い、いえ、なんでもなひれす。」
江戸時代……それは男子高校生からすると夢のような時代だな。確かに残るのもありかも……いやいや、彼女がいるし……。なんて考えながら歩いていると、またも前方からおまつさんが歩いてくるのが見えた。手には手ぬぐいなどを持ってるから、また湯屋へ行くのだろう。
なんで、こうも会ってしまうのか。って隣には少し小さなかわいい女の子がいる。
「あら、また会ったわね。」
うう、またも睨まれてしまった。僕がびくびくしていると隣の子が口を開いた。
「お姉ちゃん、この人誰?」
「ああ、この子は佑真と言って源さんの甥ですって。ホントのとこはどうだか。」
「初めまして。まつの妹の梅と言います。」
さっき源左衛門さんが言ってた『素直でかわいい妹』の方か。確かに美人で似ても似つかない姉妹だ。ってお梅ちゃんはなんだか美咲に似ている。そっくりという訳ではないが、美咲が中学生だったらこんな雰囲気だろう。ちょっとだけ美咲に似た人を見たためか、ほっとした気持ちになる。
「初めまして。源左衛門さんの甥の佑真と言います。江戸の見物でしばらく厄介になってます。」
「お姉ちゃんと一緒に八百屋の手伝いしています。お姉ちゃんが毎日野菜を持って行ってるけど、足りないものがあったら買いに来てくださいね。」
「は、はい、是非!!」
美咲に似たこの子がいるのなら、毎日でも通おうかな。
「じゃ、あたしたちは湯屋へ行くから。佑真、お梅に変なことしたらただじゃおかないからね!」
ギクッ!女って鋭い!
※江戸時代の食事は本文や第3話にあるとおり質素なものでした。現代は夕食が豪華な傾向がありますが、江戸時代は昼食が一番品数が多く、夕飯は茶漬けと漬物で済ませることが多かったようです。これは夜更かしをすることなく、現代より早い時間に就寝をしていたためと考えられています。
ちなみにさきほどは豪華な傾向があると書いた昼食ですが、武家でも魚は月に数日しか食べず、商人の丁稚奉公などに至っては年がら年中味噌汁のみ、魚は安かった日しか出なかった記録があるそうです。
そりゃ、平均寿命短いよね…。
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