この物語の主人公は、ある事情から、リビングアーマー(空っぽの鎧)になってしまいます。
それだけでも大変なのに、赤ちゃんを拾い、そして育てることに……。
こうして書き出してみると、すごい変わった設定に感じますが、実際に読んでみると、本当にリアルなお話です。
もちろんファンタジーですから、現実とは違う世界です。ですが、人が歩み寄り仲良くなってゆく様子、感情の揺らぎ、葛藤、などなど、人の心を確かに感じます。
登場人物たちは本当に生きているようです。
他にも、セリフ回しのカッコよさ、流れるような文章の巧みさ、など魅力たっぷりの作品です。面白いので、ぜひ読んでみてください。
主人公は『動く鎧』なモンスターでおなじみ、リビングアーマー。
表情も見えず、人間臭さもない鉄の魔物の話なんて……とお思いの方に、100話以上ファンを続けている者からこれだけはお伝えしたいのです。
魔物だろうがなんだろうが、最高の家族の物語である!――と。
自分という存在すら思い出せない主人公、なんといきなり赤ちゃんを拾います。しかも美女と一緒に育てます。
まったくの他人が協力し、知恵を出し合い、たまにはケンカして……そして『家族』になっていく。ヒトとなんら変わらないその営みが、これほど尊いと感じる物語は希少なのではないでしょうか。種族の違いなんて、彼らの絆の前では取るに足らないことなんです。
そんなファミリードラマもさることながら、きちんとファンタジーの面白さも味わえることも本作の大きな特徴。家族の周りにはどんどんキャラクターが登場し、やがて国々を駆ける壮大な冒険活劇へとなだれこんでいきます。あなたの推しキャラもきっと見つかるはず。ちなみに私の推しは最強にお元気でダンディーな爺様です。
家族の前では優しいパパ、そして敵の前では鬼神の如き強さと勇気を発揮する主人公のかっこよさは必見!
こんな家族がご近所さんでいてほしい、そんな温かな気持ちになれる素敵なファンタジーです。
主人公は、ある事件をきっかけにリビングアーマーと化してしまった少年。
目覚めた彼アステルは、記憶を失うとともに鋼のがらんどうへと化してしまう。
彼は自身のことは二の次とし、泣き声に誘われるまま赤ん坊ソアレを拾い、その子を助けんとするさなかラミアの女性ラミナに救われ生活を共にするようになる。
そして様々な出来事を通し家族の絆を強め、成長し、そして真実へと向かい進んでいく。
この作品の魅力は、なんといってもその温かい家庭だ。
魔物にも関わらず人間以上に温かい心を持った家族や、周囲を取り巻く仲間たち。
厳しい出来事もあるが、愛をもって支えあい、乗り越えていく。
人間としての生き方にとらわれない魔物だからこその、彼らの関係かもしれない。でもそこには現代を生きる人間の我々だからこそ見習うべき、優しさや愛情が満ちあふれている。
個人的に驚いたのは、赤ん坊の育児の描写の細やかさだ。作品によっては不自然な描きかたも多い難しいシーンだが、確かなリアリティと文章力で、言葉では表しきれないその大変さをありありと描いている。
暖色のパステルカラーに彩られた、優しい物語。
ぜひ夜布団に入ったとき、この物語を開いてほしい。暖かく優しい彼らの生き生きとした姿が、あなたを素敵な夢へといざなってくれるはずだ。
そして目覚めたとき、隣の家族に、離れ暮らす両親に、将来の連れ合いに、優しい言葉をかけたくなるだろう。
残酷で、愚かな人々が住む世界。
そんな世界の片隅に、とても優しい家族が生まれます。
死して生ける鎧(リビングアーマー)となった少年。
そんな彼が、大きな宿命を背負った赤子を拾う。
だが、リビングアーマーに赤子を育てる能力は無く、このままでは死んでしまう。
途方に暮れる彼らを優しく受け入れてくれたのは、母性溢れるラミアの美女だった。
血のつながりは無いけれど、優しさに溢れた小さな家族のほのぼの生活が始まります。
けれど、この世界は甘くなく、やがて彼らの背後にも厳しい運命が迫りくるのでしょう……。
どこか切なくも優しさに満ちたこの物語を、あなたにも是非。