優しい寂しさと悲しさの降る町の、子ども三人+お姉さんのお話

文章が美しく鮮やか! 冒頭から綺麗な雨景色と男の子同士の軽口に惚れこんで昨夜から夢中になって一気に読んでしまいました。

最初はお姉さんの秘密にひたすら三人で迫っていくお話だと思ったんですが、読み終わって考えてみれば四人全員が主役だったように思います。ムギ君は最後までしっかり主人公ですが、四人の誰が本当の主人公と言われても納得出来るくらい丁寧に掘り下げられている印象。物語の合間合間に入って少しずつ語られる少年少女の秘密は、キャラ達への共感と愛着を高めてくれました。ちょっとガキ大将っぽい赤毛くんの過去とムギ君との繋がりは意外だったかも。

愛ってなんだろうとか、人は馬鹿だとか、ムギ君とお姉さんの会話も印象的。この二人が一緒に見た(彼女の言った通りにきっと一緒に見た)終わりと始まりの光景が寂しくも輝いてました。

もう四人の物語は終わったし、空模様もすっかり様変わりしたんですが。私の中ではまだ、優しい寂しい雨が降り続いていて、四人がどこかで「けんしょうごっこ」をしてるんじゃないか、そんな気がしてしまう作品。綺麗な終わりと変化の物語ですが、なんとなくイメージとしては読み終わった後もそんな感じです。個人的には。

タイトルも好きだなあ。最初はお姉さんにかかるのかと思いきや……。エピローグ的にも、多分お姉さんにはあまりかかってないタイトルですね。(一緒に行ったとは思うんですけどね)