6.魔女の最期

 塔の先端が激しく音を立てながら崩れ落ち、魔女へと直撃する。

 魔女はその塔を飲み込もうとしたが、塔に仕込まれていた魔法陣が光り輝くと動きを止めた。


 溜めこんでいた自然魔力と、それを封じていた魔法陣を無残に破壊され、塔はもはや押さえ込むことを放棄した。

 魔女と同じように稲妻を放ちながら、黒い闇を広げる。互いの魔力を吸収しようとしているのか、揉み合うように形を変える様は、邪悪なものを感じさせた。


 カレードは塔の下へと着地したが、次々に落ちてくる瓦礫を避けるために、来た道を引き返す。

 その間にも空は歪み、稲妻が走り、大気までもが震えるかのように強い風を生み出していた。


「大剣、無事か」


 元の回廊に辿り着いたカレードにミソギが声をかける。しかしその目は空の二体の魔女を見ていた。


「無事だけどよ。あれはあんまりいいものじゃねぇな」

「確かにあんなものが直撃したら、どこもただでは済まないね」


 カレードが破壊した塔のみならず、先ほどまで立っていた別棟までもが崩れかけていた。中途半端に宙に浮かんだまま、落ちる様子も見せない瓦礫は、恐らく魔女の力によるもので、それらが宙で衝突しては、瓦礫の数を増やしていた。


 魔女は、自分たちの元の形を失いながら、それでも互いを貪りつくそうと身をよじる。

 だが、やがてその中心部で眩いばかりの稲妻が放たれた。


 途端に辺りに、女の悲鳴のような不気味な声が響き渡り、強風が吹き抜ける。

 思わずよろけたミソギを、カレードが腕を掴んで引き留めた。


「悪いね」

「終わったみたいだぞ」


 ミソギが体勢を立て直して辺りを見回すと、さっきまでの光景は消え失せて、空は爽やかな青空を取り戻していた。

 遠くから鳥の鳴き声が聞こえ、穏やかな風が吹く。


 今までのことが嘘のようだったが、崩れ落ちた塔や棟が、現実であったことを教えてくれている。

 瓦礫の散らばった回廊の上に二人は暫く立ち尽くしていた。


「どうにか、出来たみたいだね」

「そうだな」


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