第2話
大変だわ!どうしましょう!ミコが連れ去られてしまったわ!
ミコはお間ぬけさんだからこうなってしまったのも仕方のない事だけれど、このままじゃま法のご本がぬすまれてしまうわ!何とかしてミコを助けながらま法のご本を守らないと!
「ネコー!大変だよ!ミコが泥棒に連れていかれちゃった!」
「ズコ!えぇ、聞いていたから知っているわ。さぁ、いっしょにミコを助けに行きましょう?」
ズコがわたしたちネコ、ズコ、ミコが使っているひみつき地に帰って来たわ。ズコまでどろぼうさんにつかまっていなかったのは良かったわね。
「でも一体どうやって?僕とミコが罠を仕掛けたのに、あの泥棒へっちゃらだったんだよ?」
ズコは不安みたいね。でも、
「あんなわなでどろぼうさんをやっつけられるわけないじゃない!あれじゃあ先月ウチに来た新人メイドだって引っかからないわ!わたしにまかせなさい。わたしがじいやでも引っかかるくらいのわなを用意しておいたわ!」
「ネコ、本当かい?じいやが引っかかる罠なんて僕には想像も出来ないよ」
本当はまだだれにも使ったことがないから、じいやが引っかかるかどうかは分からないのだけれどね。
「ズコ、さっきばらまいた画びょうを集めてきてちょうだい?念のため、もう少しわなを仕かけておくわ」
「任せて!すぐに拾って戻って来るよ」
ズコが走っていったわね。すぐに戻ってくるでしょうから、わたしもじゅんびを始めないとだわ。
「あら、こんなところにビー玉の入った箱があるわ。そういえばミコがこつこつと拾い集めていたかしら……。ミコ、これも使わせてもらうわね?」
ビー玉のっ、入った箱をっ、本だなのかげまでっ、運んでっ……よいしょっと、この箱とっても重いわね?くたびれてしまうわ。
それから次は……
🐀 🐁 🐀
「ネコ!泥棒が来たよ!」
「ずい分とおそかったわね。わたしの仕かけた全部のわなに引っかかるとは思わなかったわ」
「まさか画鋲の針に刺す以外の使い方があるとは思わなかったよ!それにミコが変なポーズをとった途端に本棚に映る影が大きな人間みたいになったのも凄かった!あれで泥棒もすっかり参ったみたいだったし」
「ふふふっ、これくらい出来て当然よ。それより次のわなの方が大切よ。次のわなが上手くいかないとミコを助けられないのよ?ズコ、そろそろ配置についてちょうだい?」
「分かったよ!ネコ」
……ズコが配置についたわね。どろぼうさんの方は……あと10歩くらいでわなにかかるかしら。
5、4、3、2、1……
本だなとかべの間にピンとはっておいた、引っこしに使うとう明のテープにどろぼうさんが引っかかったわ!でも今回は足元じゃなくてどろぼうさんの目線の高さに用意しておいたから転んだりはしないわね。
……とう明のテープに気付いたどろぼうさんがおこりながらテープをはぎ取ったわ。今までのわなでとってもイライラしているみたいね。ふふふっ、その調子よ!
あら、どろぼうさんが次の本だなとかべの間のテープにも引っかかったわ。今までのわなは一度仕かけたら次のわなまで少し間があったから、こんなにすぐに同じわなが来るとは思わなかったみたいね。
次の本だなとかべの間にもテープがあると思ったのかしら。どろぼうさんが手を前にのばしながら大きく一歩ふみ出したわ。そして……
どてっ!
作戦通り、足元のテープに引っかかって思いっきり転んだわ!
目線の高さに用意してあったテープはどろぼうさんの意しきを高いところに持っていくためのおとりだったのよ!
しかも転ぶと中でもう一本のテープにも引っかかったわ!このテープは本だなじゃなくて、本だなの上に置いてあるぶあつい本につながっているから、どろぼうさんが引っかかるとその本が本だなから落ちる仕組みなのよ。本の上につかまって待っていたわたしごと、本が落ちていくわ。あとは本が計算通りどろぼうさんの頭に直げきしてくれれば……きゃっ!
思っていたよりいきおいが強くてびっくりしたけれど上手くいったわね!さぁ、ミコを助けなきゃ!
「ミコ!助けに来たわ!早くにげましょう?」
「おう、ネコじゃねーか。すまねーな、助かったぜ」
「全く……ミコはいっつもお間ぬけさんなんだから……さぁ、わたしたちのひみつき地まで走るわよ。」
「おうよ!俺の華麗な走り、こいつに見せつけてやるぜ!」
「期待だけはしているわ!」
かべに空いている穴に向かって全力で走るけど、どろぼうさんがもう起き上がって追いかけてきたわ!
「ネコ!このままじゃあ俺たち掴まっちまうぜ!ここは俺が囮になる!ネコだけでも逃げ延びてくれ……!」
「ミコったら何を言っているの?わたしがじゅんびしたわなが中と半ぱなわけないじゃない。……ズコ!お願い!」
「よし、行くぞー!」
ひみつき地の向かいの本だなにかくれていたズコが持っていた箱を思いっきりたおしたわ。
ジャラジャラ……
ずてっ!
「ふふっ、成功ね!どろぼうさんが転んだわ!さぁ、ミコ!あと少しよ!」
「ネコ!こいつは俺が何年もかけて大切に拾い集めてきた宝玉じゃあねぇか!」
「ごめんなさい!あとで拾い直すのを手伝うから今はゆるしてちょうだい?」
「……これも俺を助ける為だしな。仕方ねぇ、今回だけだぞ?」
「チョロ……じゃなかったわ。ありがとう、ミコ。さぁひみつき地の入り口までたどり着いたわよ!ズコも間に合ったみたいね」
わたしたち3人は何とかひみつき地ににげこめたわ。どろぼうさんが何かさけびながら、かべをけっているわね。
「さぁ、わたしたちの仕事もあと少しよ!いっしょにま法のご本を守りましょう?」
「おうよ。泥棒なんかにゃ指一本触らせないぜ!」
「僕も頑張るよ!」
「じゃあま法のご本がある部屋に行くわよ。かべのかくしボタンをおして……っと」
ゴゴゴゴゴ……
かべが開いてひみつの通路が出てきたわ!
これでま法のご本がある部屋まで一直線ね!なんて都合のいいひみつき地なのかしら!
🐀 🐁 🐀
「ぷはぁっ」
「ふぅ、どうやら着いたようだな」
「この部屋すごいよ!壁も床も大理石で出来てる!」
一面大理石の部屋の真ん中に大理石で出来た台が置いてあるわね。台の上に置いてあるのは……ご本かしら?
「きっとあれがま法のご本ね。さぁ、早くあれをわたしたちのひみつき地にかくしてしまいましょう?」
「おう!」
「うん!」
……何とか大理石の台の上までは来たわ。でもこのご本……
「なんでご本まで大理石で出来ているの!?これじゃあ重くてひみつき地まで運べないわ!」
ま法のご本の正体は石ばんだったみたい。表面にま法のじゅ文が書いてあるわ。
「ネコ、大変だよ!泥棒がもうすぐそこまで来てるよ!」
「どうしましょう!大変だわ!どうしましょう!」
このままじゃどろぼうさんにま法の石ばんをぬすまれてしまうわ!
「おい、ここに口から火を噴く呪文が載ってるぜ!くぅ、カッコいいなぁ。なになに……」
『ソロ—ロオ—ザ—ノオジ—ンデ—ヨ』
ぽぅっ
ミコの口からとっても可愛らしい小さな火がふき出したわ。これじゃあどろぼうさんをやっつける事は出来ないわね。他のじゅ文はどうかしら……あら?このじゅ文……
「ネコ!泥棒が部屋に入ってくるよ!どうしよう……!」
ガチャンッ……!
どろぼうさんがとびらを開けて部屋に入って来たわ!
こうなってしまったら仕方がないわね。
『オ—テクダ—イオジョ—サ—』
ピキッ
パキパキ!
「石版が割れちゃった……!?ネ、ネコ?一体何をしたの?」
わたしがじゅ文を唱えたとたんに石ばんは粉々にくだけてしまったわ。
「ズコ、今となえたじゅ文はね、石ばんをこわすためのじゅ文なのよ。これはきっと石ばんが悪いどろぼうさんにぬすまれそうになった時に使うためのじゅ文だわ」
「確かにこれで魔法の石版が盗まれる事はなくなったけど……」
「石版を盗まれる前に壊しちまうなんてロックじゃねぇか!」
ピキピキッ
パキパキパキ!
「あら?どうしてかべや床にまでヒビが入ってくずれていくのかしら?」
「も、もしかして……石版も台も床も壁も、みーんな大理石で出来てるから、石版と一緒に部屋も崩れちゃうのかも!」
「なんだって!?そいつはロックじゃねぇな。おい、早く秘密基地まで逃げるぞ!」
「え、えぇ。そうね。早くにげましょう!」
どうしましょう!大変だわ!あと少しでひみつき地につながる通路なのにギリギリ間に合わなそうだわ!
「間に合った!ネコ!あとは君だけだよ!」
「ネコ!手を伸ばせ!あと少しだ!」
「ズコ!ミコ!あと少しでとど———
🐀 🐁 🐀
「あら、ここは……」
「おはようございます、お嬢様。そろそろお支度をしないと遅刻してしまいますよ」
「じいや……まぁ、あれはゆめだったのね?そうだわ!じいや、聞いてちょうだい?わたしね、昨日の夜のお話をゆめで見たの!わたし、ズコの事もちゃんと助けたし、ま法のご本がどろぼうさんにぬすまれないように、しっかり守りぬいたのよ!……うそじゃないわよ?」
「そうでしたか。では、詳しい夢の内容はお車の中でお聞かせ下さい。今は身支度を整えてしまいましょう」
「そうね!あとゆめの中でとっておきのわなを思いついたの!ふふふっ、きっとじいやも引っかかるから、覚ごしておいてね?」
「それはそれは……楽しみにしておりますよ。お嬢様」
夢伽話 甲斐 @KAiNECO
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