夢伽話
甲斐
第1話
とある大きな街の真ん中にとても大きな図書館がありました。
その図書館より大きな図書館なんて、国内はおろか世界中のどこを探したって恐らく見つからないでしょう。……失礼、言い過ぎました。2、3個くらいならあるかもしれません。
とにかくその図書館は大きくて、街の人々から愛されていました。読書や勉強、憩いの場としてその図書館は常に賑わっていました。
……いえ、皆が騒いでいたという意味ではありません。開館時間から閉館時間まで常に利用客がたくさんいたのです。
そんな街の人々から愛されている図書館ですが、毎日人足が途絶える時間帯があります。お嬢様分かりますか?
……正解です、夜の閉館時間ですね。
しかし誰もいないはずの夜の図書館にこっそり忍び込む人影がありました。
……えぇ、その通りです。泥棒です。
……街の人は皆図書館が大好きなのにどうして泥棒が入るのか、ですか。お嬢様、目の付け所がとても素晴らしいです。私感動してしまいました。
しかしこの泥棒は外国に住んでいたので図書館を愛していなかったのです。
その泥棒は図書館の奥の奥、街の人々でさえ立ち入る事の出来ない場所にある、世界に一冊しかないとても貴重な本を盗もうとしていました。
……何の本か気になる、ですか。
そうですね……。魔法を使うための呪文が書いてある本、なんて如何でしょうか?
その泥棒は魔法を使って悪い事をしようと企んでいたのです。
……安心して下さい、お嬢様。この図書館には本が盗まれない様に泥棒を追い返してくれる女の子が……ネズミの方が良い、ですか?ネズミですか……。畏まりました。
その図書館には本を守る三匹のネズミがいました。
名前はそうですね、チューナ……ネコとズコとミコが良い、ですか。
そうですね、ネズミの名前はネコ、ズコ、ミコにしましょう。
泥棒が図書館の中に入った時、入り口の近くにはパトロール中のズコがいました。
ズコは泥棒に気付くとすぐにネコとミコの元へ駆けつけ、泥棒を懲らしめる為に罠の準備を始めました。
最初はミコの番です。ミコは受付に置いてあった画鋲を床にまいて、泥棒が画鋲を踏んで痛がる様にしました。
しかしミコは三匹の中で一番ドジなネズミなので、泥棒が靴を履いている事に気付いていませんでした。靴を履いていた泥棒は画鋲を踏んでも全く気にせず先へと進んでいきました。
次はズコの番です。ズコは掃除用具入れにあった掃除機のコードを引っ張って壁のコンセントに挿すと、コードをピンと張って泥棒を転ばせようとしました。
今度は上手くいって泥棒はコードに足を引っ掛けて盛大に転びました。
ミコは泥棒が気絶した事を確認する為に泥棒に近付きます。
……転んだくらいでは泥棒は気絶しない、ですか。その通りです、お嬢様。
泥棒はすぐに立ち上がると自分に近付いてくるミコと掃除機の上に乗ってこちらを見ているズコを見つけました。
そしてこのネズミたちが罠を仕掛けた事に気付くと懐から木槌を取り出しました。図書館の入り口の鍵を壊す時に使った物です。
泥棒は木槌をズコとミコに向かって振り下ろしました。二匹は必死になって逃げましたが、ミコは逃げきれず、木槌で叩かれて気絶してしまいました。
気絶したミコを拾った泥棒は更に先へと進んでいきます。
……おや。お嬢様、お休みになられた様ですね。ではこのお話の続きはまた今度といたしましょう。
お休みなさいませ、お嬢様。
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