町がそこに出来たのには理由があるし、逆に今となってはその理由が消えている場合も大半という話

その町がその場所に形成されたのには理由がある。

と、Google Mapを見ていると思うことがある。


紀元前とかから遡って考えてみると大きな文明は大河から生まれていて。これはつまり大きな都市を形成するためには大人数が必要だが、大人数が一箇所に定住するためにはそれなりの量の水が必要であり、土木技術が発達する前の時代においては大河がないと大都市が成立しなかったという話で。この『大河が必要』という大都市が作られる条件は比較的近代頃まで続いていたと思う。

日本でも大都市は大河の近くに発生しているし、それにプラスしてここ500年ぐらいの間では漁業や海運業が重要だった関係で港が作りやすい地形の場所が特に発展しやすい傾向にあったと思う。

具体的に言えば、波が穏やかになる『湾』になっている地形で、その側に町が作れるような大きな平地がある場所。

そして船が大型化してきた後は岸壁の水深が深い港しか使えなくなっていき、それらの条件を満たせる場所が発展していった。

後は大都市を支えるのに必要な木材を上流から運んでこれる運河と上流の森林も重要なポイント。それに昔は街道の整備も簡単ではなく、物資の輸送には川を使うことが多かったらしく、当時は動力源がないから川の流れに乗って運ぶわけなので、つまり上流で生産した物資を川を使って下流に流すのだから下流に大都市を作った方が物資の搬入面で良かったこと。

尚且つ複数の川が流れ込んでくる湾状の地形だと複数の川を使って複数の地域から簡単に物資の搬入が行えるので、物が集まるから商業都市として発展しやすくなる。

近代から今まで日本で大都市として残り続けている場所は大体これらの条件に当てはまる場所だったと思う。


もう少しミクロの話をすると、昔の集落って山の麓に形成されることが多かったように思うんですよね。

比較的平野部が多い山間の土地でも昔から続くエリアでは民家が山の麓にひしめくように集中していて、平地の中央部には田畑しかないみたいな。

どうしてそういった形に村が成長していったのかググっても正確な情報は集まらなかったので推測が入った話になってしまうが、

まず昔は川の氾濫が頻繁に起こり、今とは違って川の流れや位置も変わってしまうことが多かったため、川の周辺には住みにくかったこと。

基本、川の近くは川からの土砂の集積によって作られた地面のはずなので、地盤が弱い。

洪水などが起こった場合、山に近い高い場所の方が被害が少なかったであろうこと。

昔は煮炊きや暖房に使う薪が生活必需品になっていて木材が採れる山は村の重要な共有財産であり、近隣の村々と木材利権を争って紛争になることもあったらしく、山にアクセスしやすく山を守れる場所に村を作った可能性。

山の麓は山によって風から守られるため、嵐でも家が飛ばされにくい。

川は洪水によって上流から栄養の多い土を運んでくるため、田畑を作るなら川の側の方が良い。

それらの理由から昔の村って山の麓――特に山がV字に谷間になっている場所によく作られてた感じがあるわけです。

それに、上記のように天然資源を生活に活用する以上、一定地域内に定住出来る人口は決まっている(1人の人間が生きるために必要な山林の面積とか畑の面積がある)ため、近代化の過程で衛生環境の改善や食料の安定供給やらが可能になって村の人口が爆発すると、それぞれの村々がキャパオーバーで生活を維持出来なくなってしまい、もっと山奥を開拓して新たなる村を作る動きが加速した。

一例としては静岡県の初島では歴史的に島内で41世帯を維持していたらしく、それぞれの家を継ぐ男子1人と嫁に行く女子以外は全て島外に出されるという伝統があるらしい。


と、ここまでは町や村が作られやすい条件を語ってきたが、勿論それだけで人の住む場所が決まるわけではなくて、もっと商業的な理由とか軍事的な理由などが絡んでくるわけで。

近代に入って車や汽車が整備されるまで旅は徒歩か馬か人力の籠での移動だったため、街道沿いには旅行客が泊まるために宿場町という需要があって、街道沿いには一定間隔で村が形成されていったし。

工業化・電化が進んだ後は金属や石炭なんかが重要視されるようになり、それまで見向きもされなかった山奥に鉱山と、それを支える鉱山町が出来たりもした。


うちの地元の姫路の話をすると、元々は東西に繋がる山陽道とか北側へ抜ける街道とかが交差する交通の要所にあった姫山に城を作って守備の要としていたところ、それを豊臣秀吉が中国征伐頃から重点拠点に指定して増築し、徳川幕府時代も豊臣恩顧の大名を封じ込めた中国・九州・四国への最前線として幕府重臣や徳川一門衆が常に配置される要所になったため、多くのお金を使って発展させていった場所だから大きくなった経緯がある。

ちな、戦国時代に姫路を治めていた小寺氏の本拠地は姫路城ではなく東の御着城であったわけで、小寺氏の家臣筋で姫路城代であった黒田官兵衛が姫路城を豊臣秀吉に提供した(小寺氏の主城である御着城は明け渡せなかった?)ことで豊臣秀吉が姫路城を増改築して巨城化し城下町を整備することになり、今の姫路の町の原型が作られることになった。

つまり、織田に臣従することに積極的ではなかったと言われる小寺氏(後に毛利側に寝返る)が部下の城(姫路城)ではなく自分の城(御着城)を差し出すぐらい織田信長を信用していたら今の姫路市は存在してなくて御着城を中心とした御着市になっていた可能性もあったかもしれない。


◆◆◆


で、ここまで長々と語ってきたけど、ようやく結論の話になるが。

日本中には都市や村なんかが沢山あるが、結局のところ今となってはほとんどの地域で当初その町がその場所に成立した理由はもうなくなっているのではないか、という話なんですよ。

東京・大阪・名古屋の三大都市にしても、今となってはあの場所に作られた意味はもう既にないと思うわけです。

東京について考えてみると、徳川家康が関東移封の領地替えで中部から後北条の領地だった関東に飛ばされた時、本拠地の最有力候補だったのが北条家の主城があった小田原で、次点はかつて鎌倉幕府が開かれていた鎌倉。当時の江戸城は湿地帯にある小さなボロ城で、関東平野は洪水の度に水浸しになる荒れ地だったと。

一説には家康は豊臣秀吉直々に江戸に本拠地を移すよう指示を受けたというが、どうして江戸だったのか、というと、湾があって広大な平野があって大河があって大都市を形成出来る条件が揃っていたからで、問題は川の水量が多すぎで洪水が頻発していたため、それを徳川家が100年単位の時間をかけて川を移動させて巨大な平野部を作ったと。

現代においても巨大な平野部に都市を築くのはセオリーというか、広い土地がなければそもそも構造物を建てるのが困難なため、世界中どこでも『大きな平野部』という条件に関してだけは昔から変わらず続いているのだろうと思う。

が、沿岸部に街を作る必要性とか、山に村を作る必要性とか、今の時代そんなモノはほとんど意味がなくなっているんじゃないのってことなんですよね。

今は川で物資を運ぶことはないし。飲み水に関しては水道管で運ぶだけなので問題ないし。日常生活に木材は必要なくなってるから山が近くになくてもいいし。台風でも家は飛ばされなくなっているし、川もほぼ氾濫しないから平野部に家を建てても問題ないし。車という移動手段があるから漁師であっても必ずしも海沿いに住む必要はないし。街道沿いに宿場町や防衛拠点を作る必要はないし。

だから正直、まず首都が東京にある必要が今はまったくないと思っている。

ぶっちゃけ地震とか津波とかのリスクを考えたら沿岸部に都市を作るなんて今の時代ではデメリットだらけでむしろ狂気でしかないのではないかとすら感じるわけ。

港区という日本一の高級エリアが海沿いにあるとかヤバすぎるとしか思えない。

他の国の例を見ても近代に入ってから首都を移転した国は大体内陸部に移転しているし、近々移転予定のインドネシアも正確な位置はまだ発表されてないがジャカルタより津波の被害が少ない地域というのも選定理由の1つらしい。


正直、首都移転論の賛成派なんだけども、首都だけでなく日本中の多くの地域も同じようにゼロから、まずは場所選定から町作りを考え直すべきだろうと思ってる。

特に震災の被害なんかを見てるとそういう思いは強くなってくる。

しかし日本の場合、交通の中心が電車になっているため都市機能を今になって別の場所に移すというのはかなり時間がかかるのだろうと思う。

が、リニア新幹線の通行予定ルートを見てみると神奈川県駅が山側の橋本に設定されていたり、そもそもルート全体が富士より北の山中を通るようになっていたり、国も考えてないこともないんだろうな、とは思うが。


結論としてぶっちゃけた話をすると、日本の場合は地震があれば山は崩れるし海には津波が来るんですよね。

これはもう変えられない。

となると、もう山と海から離れるしかないんじゃないの? という結論にしかたどり着かない感じ。

結局は自然には勝てないのだから。

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