所謂『MMORPGモノ』『MMORPG転生モノ』に多い設定上の問題点と、個人的に好きじゃない理由

まず言っておきたいのが、これは特定の作品を指している話ではないし、批判をしているわけじゃないということをご理解ください。

単純に僕が思っている問題点と好きじゃない理由についての話です。


◆◆◆


個人的にMMORPGモノの作品があんまり好きじゃない理由にMMORPGモノの『MMORPGとしてのリアリティのなさ』があるんです。


その話の前にここで『MMORPGモノ』の定義を説明しておくと、MMORPGモノとはMMORPG……つまり大規模参加型ロールプレイングゲームの中で行われるアレコレについて書く作品を指す、と個人的には定義しているので、その前提で話します。

『MMORPGの世界に転生する話』については『MMORPG転生モノ』という別ジャンルとして考えたいので、ここでは分けておきます。それに『.hack』のようなゲームの中から出られない系もちょっと分けて考えたいです。ついでにSAOのような定義が難しいモノも分けておきます。


で、MMORPGモノの作品って、その作品の世界の中に『実在する』ゲームの中の世界がベースとして書かれるわけじゃないですか。

とすると、基本的にはそのMMORPG内は商業的に成功するために『基本的には』ゲームバランスが良好に保たれていないとおかしいわけですよね? つまり主人公が運良く最強のスキルとか職業を手に入れて最強になる的な展開、そういうことが可能なゲームバランスだとすると他のプレイヤーからしたら面白くはないわけですよね? 

仮にあなたがオンラインゲームをやっていて、一部のプレイヤーだけが唯一無二の武器とかスキルを手に入れて無双していて、しかし自分はどう頑張ってもそれらのモノは手に入らなくて、それらのプレイヤーには追いつけないことが分かった場合でもまだそのゲームをプレイするモチベーションが保てるのか? という問題。

それって結構難しいと思うんですよね。


MMORPGモノ――というかなろう系とかファンタジーとかに限らず娯楽作品ではどれもそう――の展開的に『主人公だけが唯一無二の能力を得る(もしくは持っている)』という流れはほぼほぼ避けては通れないじゃないですか?

だってそうした方がやっぱり面白いから。

努力系の主人公でも、後に『実は伝説の○○の息子だった!』みたいな設定が出てきて、やっぱり主人公だけの特別な能力があるから強くなった的な流れになるのが王道でしょ?

なろうとかそんな枠は関係なく、バトルがある話だと大体そんな流れがお決まりになっている。

だから別にそれは良いんです。

でもそういう展開をMMORPG……というか作品世界で実在するオンラインゲームの世界の中での話として書くのはちょっとばかし難しいモノがあると、そう思うんです。

現実の世界ではそういう理不尽さは多量に存在するわけですけど、ゲームって所詮は娯楽なので自由に辞めちゃうことが可能だから、そういった一種の理不尽な要素を入れてしまうと多くのプレイヤーはつまらなくなるはずなんですよね。特にオンラインゲームでは。

リアルの人生はやめらんないけどゲームは止められるんです。

だからMMORPGモノでそういう展開があるとリアリティのなさを感じると。しかし娯楽作品である以上、主人公にはそういった特別な能力がある設定にしないと面白くない。……ことが多い。

そこが多くのMMORPGモノが抱えている設定の問題点だと思うんです。

リアルの世界をベースにした作品ならそういう『生まれで決まってしまうような理不尽な才能の違い』は許容されるけど、MMORPGモノにおいてはそのゲームを作った会社はプレイするユーザー間の差を付けるような設定を許容しない可能性が高いため、誰かだけが特別な存在になれる的な展開にしにくいと。


勿論、それを回避する方法も存在していて。

例えばそのゲームのゲームバランスが悪いと作品中で言及するとかね。

他にも色々と考えられるモノはあるのだけど、それは次回作で使う予定なのでここでは語らないとして。


……まぁ、ぶっちゃけ、そんなところを気にする人なんてあんまりいないかもしれないけど、個人的には『このゲーム、実際に存在したとして本当に面白いか?』と思って見ちゃうんですよね。

そう考えちゃうと一気に冷めてしまうんです。


じゃあ主人公に(ゲーム内での)特別な能力とかスキルとかアイテムとかを与えず、一般的なスキルとスキルの組み合わせが強力だったとか、アイテムの別の使い方を考えついて主人公だけが特別になるとか、不遇だと言われていて誰も使ってない職業とかスキルを上手く使ったら実は強かったとか、特別なステ振りとか、そういった誰でも可能であるモノを上手く使う流れで主人公を特別な存在にする系の話だと良いのか? というと……ぶっちゃけそれもどうなんかな? と思うわけですよ。

どうしてか、というと、


『そんなもん、目立った瞬間にバレて全員に真似されてテンプレ化するだろ』


ということなんですよ。

MMORPGやってた人なら分かると思うけど、大体どんなゲームでもテンプレ化している戦術とかゲームwikiに載る情報とかって、ほとんど最上位プレイヤーが見付けたり編み出したモノを他のプレイヤーが分析して真似したり、もしくは最上位プレイヤー自ら情報をリークして広まったモノであると。

大体のゲームでは仮に特殊な方法で凄いアイテムを手に入れられる方法を見付けられても、それをどんなに本人が隠そうとしてもいつかは嗅ぎつけられて大勢の人に知られてしまうものなんです。

そうなると最初に見付けた人の優位性なんてなくなってしまう。それがほぼ全てのゲームで起こっていることですよね。

だからこそ上位プレイヤーがあえて自ら独占している情報を公開してしまう……なんてこともあると。

昔、某MMORPGで最速攻略組がやってたムーブなんですけど。彼らが真っ先に発見したアイテムレシピで作ったアイテムを高額で売り捌き、散々儲けまくったあげく、2位3位のチームがそのレシピを発見してそのアイテムの販売を開始した瞬間、値下げ競争が起こる前に某掲示板にレシピをリークし、そのアイテムを誰でも作れるようにしてアイテム価格を暴落させて2位3位チームが儲けられなくしたんですよね。これは彼らがやったという明確な証拠はないけど二度三度続いたので自分的には間違いないと考えているのだけど――

つまり、自分達が多く儲けることより直接のライバルである2位3位チームを叩いて自分達との差を広げ、2位集団を団子にした方が総合的には利益が大きいと判断したのだろうと推測出来るわけですが。

まぁとにかくMMORPG(だけでなく他のジャンルでも同じだけど)の上位勢の攻略能力と、彼らがトップを取るためにやっている駆け引きというか、他のグループに先んじるための執念というか、そういうのって常人には真似出来ないレベルにあると思ってるので、そんな彼らから自分しか知らない○○を隠し通すのは難しいのではないか、と感じてしまうわけです。


そんなわけで自分としてはMMORPGモノはかなり上手く設定を練らないと違和感が大きくなりやすいと考えているため、あんまり好んでは読まない感じなんですよね。


◆◆◆


で『MMORPG転生モノ』についてだけど。

その定義については最初に書いたので省略するとして、こっちに関してはまだMMORPGモノよりは縛りが少なくて書きやすいんじゃないの、と思うんですよね。

MMORPGモノはあくまでもゲームの中の話なのでプレイヤー間で優劣をつけにくいけど、そのゲームが現実化した世界に転生するMMORPG転生モノだとその世界はゲームではないので主人公がバランスブレイカーな力を持っていても比較的(設定的な)問題は起こりにくいと。

それはただ元になったゲームの世界観を利用した異世界転生モノでしかないので、ゲームではないのだから仮に転生者が複数人いたとしてもプレイヤー間のバランスを取る必要はないし。チートだろうがゲームの知識を使った無双でも好きに出来る。


ただ、個人的には『MMORPG転生モノ』も『MMORPGモノ』と同じように読まなくなったんですよね……。

その理由なんですけど、主人公がゲームの知識とかゲームで得た力を使って無双するのは良いけれど、主人公がゲームの中だからこそ得られた知識とかアイテムとかを誇示する展開が好きじゃないんですよ。

どういうことか、というと。例えばMMORPGなんかのエンドコンテンツになるような高難易度ダンジョンってゲームだからこそクリア可能なモノだと思うわけですよ。

普通に現実世界にあったら常軌を逸しているぐらい馬鹿げた難易度になると思うんです。

つまりゲームデザイナー側も難易度をギリギリまで上げるために死に戻り前提のバランスに設定してくるし、一度チャレンジしてみなければクリアに必要なアイテムやスキルとかが分からなかったりするじゃないですか。勿論、攻略wikiを見るとかそういう話は別ですよ。

でも、現実世界でそんな攻略方法が可能なのか? ってな話。

ゲームの世界なら「いや~ラスボス勝てなかった! まさか最後に炎属性範囲攻撃をしてくるとは……次は炎耐性装備を全員で揃えてからチャレンジするか!」で終わって、より万全に準備出来た次回があるけど、現実だとこの『次は』が存在しないのが当然で。つまりゲームの世界では死に戻りする度に知見が蓄積されていって攻略が進むけど、現実世界だと死んだパーティはモノ言わぬ骸になって情報はまったく蓄積されず誰の攻略も進まないはずなんです。

そんな現実の中で死なないように慎重に攻略するしかないゲーム世界の住人に対して主人公がゲームで得たモノを誇示する――ぐらいならまだ良いけど、彼らを見下すような展開になると「あっ……もう無理」ってな感じになっちゃうわけ。

仮にそれをやる相手が敵役キャラだとしてもね。

そんなの株のデモトレードで稼いでプロのトレーダーにマウント取りに行くようなものじゃないですか。


ただ、これは『現実となったゲームの世界にゲームの知識とかスキルやアイテムを持ち込んだ場合』の話であって『ゲームの能力とかアイテムを、ゲームとは関係ないまったく別の異世界に持ち込んだ場合』は別だとも思うんですよね。

ちょっとややこしいけど。

その場合だと『ゲームでの能力やアイテムを所持したまま転生というチート』を持った主人公というだけなんで、別に違和感はないんです。

単純にチート能力主人公の派生系というだけだから。


これってちょっと細かい部分だけど、個人的にはここは重要だと思うんですよね。

細かいけど、そこが違うだけで印象がまったく違うみたいな。

ここをちょっと間違えると読者に嫌な印象を与えると思ってるんですけど、どうでしょうか?

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