異世界で手作りしたマヨネーズは本当に旨いのか問題

異世界モノを読んでいてずっと感じていた違和感。

よくある万能チート系主人公が日本の料理知識を使って異世界で料理を作り称賛を浴びる展開。

それを見て――

……いや、本当にそんなに簡単なモノなのか?と思っちゃうわけですよ。


例えばタイトルにもあるように、マヨネーズについて話したいのですが。

一時期は転生モノでの料理展開では定番ムーブとなっていたマヨネーズ制作。

マヨネーズをソースに使うと料理が超絶旨くなって異世界人に絶賛される流れ。

しかし本当に異世界で手作りしたマヨネーズが美味しいのか、かなり疑問があるんですよね。

というのも、自分でマヨネーズを手作りしてみたことが何度かあるんですよ。でも(異世界でも作れるような)シンプルな基本のレシピ通りに作ってもまったく美味しいとは思えないわけです。

マヨネーズの基本的な原料は、油、卵(卵黄)、酢、塩、なので、それで作ってみたんですけど、もう全然。


「いや、それはお前が失敗しただけだろ」


と言う人もいるかもしれないし、確かに乳化が甘かったりしたのはあるかもしれないけど、そういうレベルでは説明つかないぐらいに手作りマヨネーズには旨味が足りませんでした。

でも、その味は海外のマヨネーズの味に似てるんですよね。

何度か海外のマヨネーズは食べたことがあるけど、使用原料が全卵と卵黄という違いはあれど(日本のマヨは卵黄使用。海外は主に全卵使用。日本で広まってる手作りレシピはほぼ卵黄使用バージョン)手作りマヨネーズは海外のマヨに近いように感じます。

酸味があってクリーミー、だけど一味足りずあっさりしすぎてて味気なく、甘くないホイップクリーム……いや、カスタードクリームみたいな感じ。

当然ですけど、マヨネーズはヨーロッパが起源の食品なので、あちらの方が本場の味と言えるはず。

そのあたりの話について調べようとしてググってみると、「日本のマヨネーズと欧米のマヨネーズではまったく味が違う、別物」「海外では日本人みたいに何にでもマヨネーズをかけたりしない」という記述がいくつも見付かるわけです。

つまり、手作りでの味気ないマヨネーズの方が本来のマヨネーズの味に近く、日本で市販されているマヨネーズは別物である、という可能性の方が高いのではないかと。

そもそも、お肉大好き揚げ物大好きなアメリカ人がサンドイッチとフライドポテト(それに一部のサラダとかエビ料理)ぐらいにしかマヨネーズを使わないという時点で、やっぱり本来のマヨネーズは何にでも合うような万能調味料ではないんだと思うわけです。


ということで、書いている内に久し振りにマヨネーズを作りたくなってきたので、ちゃちゃっとやってみようと思います。


まず用意したのは、

卵黄……1

米酢……大さじ2程度

キャノーラ油……卵黄2個分程度

塩……多め(小さじ半分ぐらい?)


以前まで作ってた時は卵黄1に対して油180ml程度に酢大1~2ぐらいの一般的なレシピだったけど、それでは味がボヤボヤで美味しくなかったので、今回は思い切って油の量を1/3以下に減らし、塩を多めに入れます。

これらの材料を小瓶の中に全部入れ、フタを閉めてシャッフル!

この方法が機械を使わずに一番簡単にマヨネーズを作る方法。

そして15分から20分ぐらい振り続けると、油が全て乳化して、マヨネーズの完成!

……腕がひのきのぼうになっています。

それでは試食してみよう。

舌に乗せた瞬間、ツンッと来る酸味。

酢の尖りがそのまま残っている感じ。

そして塩気が強め。

はっきりした味にしようとしすぎて塩を使いすぎたかも。

その後に来る、クリーミーな卵黄の風味。

油の量を減らしただけあって、卵っぽさは以前作った時より段違いに感じる。

が、市販のマヨネーズのような旨味がない。

今回は上手く乳化出来たようで、油っぽさや生臭さはなく上出来。

だけど旨味がないので『これじゃない感』がある。

なので、海外でも手作りマヨネーズにはよく使われるらしいマスタードを投入してみることに。

マスタード……大1程度

今回は海外産、ハインツのマスタードを使用。

マスタードを絞り出し、また小瓶を振り振り。

で、味見。

酸味と塩味と卵黄の風味にマスタードの風味が加わり、味が立体的に複雑に広がった感じ。

これは、海外で手作りマヨネーズにマスタードを加える人が多いのも理解出来る味。でも、やっぱり市販のマヨネーズのような美味しさは出ない。

なので、ここに最終手段としてうま味調味料を投入。シャッフル。

うま味調味料……小さじ半分程度

腕をまた棒にしつつ味見。

ここでやっと、市販のマヨネーズのような味に近づいてきた感じ。


それから6時間ぐらい冷蔵庫で保存。

緩かったマヨネーズが固まってきて、スプーンですくった時のとろみも市販のマヨネーズと同じに。

もう一度、味見。

塩味の角が取れてマイルドになり、塩加減が丁度良くなった。が、酸味のキツさはまだ残っている。

塩は時間の経過で素材の中に染み込んだりしてマイルドになっていくので分量調整が難しいのだ。

よく料理番組で料理の完成間近に味の確認をして最後に塩コショウする理由はここにあると思われる。


最後に、作ったマヨネーズをパンに塗り、サンドイッチを作ってみた。

うん、普通においしい。

コクもあってマスタードの風味も良くて、むしろ市販のマヨネーズより良いかもしれない。


ということで、マヨネーズに関する結論を書くと、手作りのマヨネーズは日本の市販マヨネーズに比べると圧倒的に旨味が足りてないんですよ。

これは間違いないと思う。

Amazon等のキューピーマヨネーズの商品ページから原材料を見ると『香辛料/調味料(アミノ酸)』とあるし、味の素のピュアセレクトマヨネーズの原材料にも『調味料(アミノ酸)』とある。

この『アミノ酸』とは、ほぼ間違いなくグルタミン酸なはず。

グルタミン酸とは、要するにうま味調味料。

やっぱり普通に作っても旨味が足りずに日本の市販のマヨネーズの味にはならないというのは確実だと思う。

そしてこれは欧米のマヨネーズ(本来のマヨネーズ)が劣っているという話ではなく、本来マヨネーズとはそういう調味料なんだ、という話です。


実は最近、欧米でも日本のマヨネーズが流行ってきているらしいんですよね。

以前、キューピーマヨネーズがAmazonのランキングで欧米のマヨネーズより売れたりして、結果的にキューピー(正確にはキユーピーかな)がアメリカ向けにマヨネーズの生産を始めたりしているのです。

そしてかなり評価が高い。

それらのレビューやコメントを読んでみても、やっぱり欧米でも日本のマヨネーズは味が別物だと認識されているのは確実と言っていいでしょう。

これは気のせいとか個人の味覚の違いとかのレベルではないはず。

それに、Youtubeで検索してみたら分かるんですけど、海外の人がやってるジャパニーズマヨネーズ、あるいはキューピーのマヨネーズのレシピの動画が沢山あるんですよね。

それってやっぱり日本のマヨネーズが別物だと認識されてる証拠だと思う。


なので、異世界で油、卵(卵黄)、酢、塩を混ぜてマヨネーズを作ったら日本の市販のマヨネーズが出来上がって異世界人が「なんだこれは!」と驚く展開は現実味がないと感じるわけですよ。

ただし、今回実験してみて思ったんですけど、手作りマヨネーズに足りてないのは結局のところ『旨味』なので、それは逆に言えば異世界の卵やら酢が異常に旨味が強く、グルタミン酸を添加しなくても十分濃い味のマヨネーズが作れる、といった設定なら問題なく機能するのでは?と。


ということで、この話を書き始めた頃とはちょっと考え方が変わってきたのですが。やっぱりこうやって人に読んでもらうために意見をまとめるという作業は大切だと感じます。

人に見られることを意識して検証して意見をまとめていくと、こうやってそれまでと違う発見があったりするので。


あと、もっと広い範囲の話として異世界モノの料理には違和感があるのだけど、長くなってきたので、その話は別の機会に。

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