数年ぶりにテレビを見たあの日の衝撃と、それから分かる『人が面白いと感じる流れ』と鬼滅の刃のヒット
もう何年も前の話。
その日、偶然にも数年ぶりに自らの意思でテレビを見ようと思った。
自分としては別にテレビが嫌いで見なかったとか、そういう事もなく。
ただ、部屋にテレビがなく、インターネットだけがある生活が続いていると、続けて見ていた番組を追う意欲もなくなり、次第にテレビを見なくなっていただけなのだけど。
とにかく、その瞬間までの数年間はテレビをほぼほぼ自分の意思で見てこなかったのだ。
そんな僕がまたテレビを見ようと思ったのは、キッチンでおでんか何かの煮物を作っていて、煮るだけだから何もする事がなく、かといって火の側から離れる事も出来ず、とにかく暇になってしまったから。
ただそれだけだった。
とにかく煮物が出来るまでの数十分間、暇が潰せればいい。
それだけ。
そんなこんなでテレビのリモコンを押した僕の耳に飛び込んできた言葉がコレだった。
「ワイルドだろぉ」
そしてスタジオの大爆笑。
意味が分からなかった。
全身半袖デニム姿の小さなオッサンがその言葉を発すると大爆笑。
意味が分からない。
なので、意味が分からなすぎて、何故それがスタジオ(世間一般)ではウケていて、自分には面白く感じないのか真剣に考えた。
そして出した答え。
『人が面白く感じる過程には流れがある』
というモノだった。
分かりやすい話をすると、漫才で言うところのボケとツッコミ。
ボケが最初で次にツッコミ。
ボケがあるからツッコミで笑いが起きる。
この流れがあるから笑いになるのであって、ツッコミだけを切り取って見ても何も面白くはない。
それと同じように、人が何かを『面白い!』と感じる瞬間には、その前に前段階があって、それがあるから人は面白いと感じるのだと思うのだ。
以前、『IPPONグランプリ』という番組をちょっと見た時に思った事だけど。
お題に対して誰かが出した答え。それをほんの少し変えて出すとウケたり。
あとは、1つ前のお題の時にウケた答えを、あえて全然関係ないお題の時にぶつけたらウケたりしていた。
そういったモノも『面白い』の流れの一環なのだと思う。
このパターンの笑いも、前段階の『面白い』を知っているからこその『面白い』であって、その場面だけを切り取ってもまったく面白くはないはずだ。
つまりのところ、僕が昔『ワイルドだろぉ』の何が面白いのか分からなかった理由は、それまでの数年間テレビを見ていなかったおかげで、それが面白いとなるまでの過程をすっ飛ばしていたため、僕の中には『前段階』の部分が存在していなかったのではないかと思うのだ。
◆◆◆
何故こんな話をしたのか、というと。
この『流れ』の理論は、結構多くの場面で当てはまるのではないかと感じてきたからだ。
よく、『老害』という言葉が使われる。
新しいモノの何が良いのか分からず、否定する人達。
老害という言葉は言い過ぎとしても、歳をとった人々が新しいモノの良さを分からなくなるのは、新しいモノ『それ自体』を知らないからよりも、それが『出るまでの流れ』を追わなくなったから、というのが正しいと思うのだ。
上記『前段階』を知らないから、新しいモノの良い部分が分からなくなる。
では、この新しいモノが分からなくなった人々を放っておいて、どんどん前に進み続けて新しいモノを作り続けるのが正解なのか?
という話。
これが結構、微妙なのでは?と思うのだ。
以前、編集者の箕輪厚介氏が言っていた話で、
「100万部を売るには普段本など読まない主婦にも興味持ってもらう必要がある」
というものがある。
つまり、ミリオンという日本における人口の1%程度のヒットを狙うだけでも、それの『ファン』だけを相手にしていては成立しない。
もっと広いエリアを開拓しないと無理。
あれだけヒットしている鬼滅の刃でも1巻あたりで500万部(2020年12月まで)で人口の5%ぐらいなので、それがどれだけ大変なのか分かると思う。
要するに、その『流れ』を見続けている最先端にいる人々を満足させただけではヒットにはならない。流れに乗ってない人まで巻き込めて、初めてそれがヒット出来る。
自分が考えるに、
恐らく、鬼滅の刃の大ヒットは、流行の最先端を見続けている人が面白いと思える要素と、流行を見続けていない、『前段階』を知らない人が見て面白いと思える要素の両方が備わっているから起きたのではないかと思うのだ。
前者だけでは『新しい流行作品』というだけの最終評価になり、後者だけでは『古臭いモノ』という最終評価になる。
これまで大ヒットした作品というモノはこの両方を備えていたのではないだろうか。
◆◆◆
ちょっと話が散らかり気味だけど…
自分的にこの『流れ』理論は後に小説を書いた時にも取り入れたので、『極スタ』が作られる中にも活きてきたという話があるのだけど、長くなったので、その話はまた今度で。
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