小説家として西野亮廣氏の『映画 えんとつ町のプペル』がどう評価されるか、気になる理由

2020年12月25日。

お笑いコンビ、キングコングの西野亮廣氏が製作総指揮・原作・脚本をされた『えんとつ町のプペル』の映画版が公開された。

その内容についてはとりあえず横に置くとして、自分が気になっているのは、この『映画』の興行収入と最終的な評価。

何故それが気になるのか、というと。


『この10年、マス向けビジネスを自ら捨てて真逆のコア向けビジネスに転換した西野亮廣が、ここでまたマス向けビジネスに戻ってきて成功出来るのか?』


という点が非常に気になっていて、興味深いからなのだ。


◆◆◆


西野亮廣氏は人気絶長期にテレビの仕事を捨て、コアなファンと共にに歩む道を選んだ。

そして今はオンラインサロン等で年8億円ともいわれる収入があるらしい。


具体的な話をしていくと。

テレビなどのマス(大衆)向けのビジネスは大衆受けするモノが求められる。

逆に大衆から受けない行為。例えば不倫や倫理違反、法律違反などがあったりするとマスでは嫌われて成功出来ない時代になっている。

一方のコア向けビジネスは、一部のコアなファンによって支えられる形。

西野亮廣氏のオンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』の入会金額は月額980円。

たった980円だけど、それが仮に1000人集まると約100万円だし、年間では約1200万円。

つまりこの値段でも仮に1000人のファンがいれば十分な収入になるので、今の時代は必ずしも大衆向けにエンターテイメントを作る必要はない。

それを示したのが西野亮廣という人なのだと思う。


上に書いたように、今の時代のマスメディアは色々と厳しくなってきていて、某お笑い芸人が不倫でテレビから追放されたのは記憶に新しいが。とにかく問題があれば許されないようになっているけど。

逆にコア向けビジネスではコアなファンが残っている限り、後は何でもオッケーになっている。

むしろ、オンラインサロン等の閉鎖された空間では、外からの批判が逆に内部の結束を固め、絆が深まる傾向があると思う。


その辺りの状況を上手く利用し、Twitterが流行り始めた頃から、この『コア向けビジネス』を展開している人々はネット上で『強い言葉』を吐くようになった。

それらは後に『炎上マーケティング』とも言われるようになった。

コア向けビジネスをやっている人々は大衆(マス)に嫌われてもまったく痛くないし、炎上して99%を敵にしても1%を自分の側に引き込めれば大成功。

それに叩かれれば叩かれる程、内部の結束は強くなる。

強い言葉を吐いた者勝ちである。


西野さんに関しては、過去にクラウドファンディングで炎上したり、ちょこちょこ炎上していて、以前某番組で千鳥の大吾さんが西野さんに向けて言った『捕まってないだけの詐欺師』という言葉がネットではスクショで拡散されているけど、そういったイメージで見ている一般層の人々は少なくないと考える。

アンチも多いように感じる。


◆◆◆


と、ここまでが前提。


もう既に言わんとする事を分かってくれている人もいるかもしれないけど、映画というモノは基本的にマス向けのビジネスだと思うのだ。

西野さんの発言を聞く限り、ご本人も大ヒットを目指している気がする。

とすると、西野さんは今回、コア向けのビジネスからマス向けのビジネスに戻ろうとしている、と言えるのではないかと思う。


しかしそうなると、これまで一切気にする必要がなかったマス(大衆)の目を気にする必要が出てくるはず。

俳優がお薬で逮捕されて出演作品がお蔵入りしたり。Twitterで政治的発言をした作者の作品を敬遠する人がいたり。マスの世界では作者のイメージを作品に重ねてしまう事がある。

となると、西野亮廣という名前はむしろ今の大衆に対してはマイナスに働いてしまう可能性があるのではないだろうか?という疑惑が自分の中にあるのだ。


だからこれがどうなるのか、興味がある。


◆◆◆


僕自身の話を含めたところまで話を広げると。

自分自身も小説家という比較的マス向け媒体のクリエイターの端くれという立ち位置から見ていて、こういった作品発表の新しい方法が成功するなら素晴らしい、と思う反面。上記マス向けとコア向けの相性の悪さ的な事を今までぼんやりと感じて考えていたので、『えんとつ町のプペル』のコア向けビジネスでマス向けコンテンツを作るようなスタイルで大ヒットしたら、ある種のキャズムを超えるのかもしれない、という風にも感じていたりする。


そして、上でも書いたように、小説家とは比較的マス向けのビジネスで、マスを気にしなければならないので『強い言葉』は吐いてはいけない。

要するに『余計な事は言うな』というヤツだ。

特定の名前をあげてどうこう言うのはよろしくない。


そう。こういうエッセイは書いてはいけないのだ。

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