どうすれば新時代の小説投稿サイトを作れるのか。その案をいくつか書いていく

前回

『(出版社系を除く)作者に利益を還元する小説投稿サイトがダメな理由』

https://kakuyomu.jp/works/1177354054885207682

の続き。



前回は長々と既存の利益還元型の小説投稿サイトの問題点を並べてきたが、その指摘だけでその先の『じゃあどうすればいいのか』の部分を書かないのもどうかと思うので新しい時代の小説投稿サイトに関する自分の意見を書いていきたいと思う。


まず最初に、丁度1年ぐらい前にnoteの方に書いた記事。

1年前の段階で一応(この当時の)自分なりの答えは書いているので、紹介しておきたい。


『新時代の小説投稿サイトの提案~トークンコミュニティ型小説投稿サイトの素案~』

https://note.com/kokuichi/n/n55c7ad442b1d

ここで提案した内容を簡単に説明すると、

まず小説投稿サイトに作者が作品を投稿し、それを面白いと思った読者が作品にポイント(『いいね』みたいなもの。上の記事内では『トークン』と書いた)を送る。

その後、その作品に他の人からもポイントが集まってくると(つまり人気になると)、早くその作品にポイントを入れた読者ほど多くのポイントリターンがある。

こうして作者と読者が共にポイントを稼いでいき、所有ポイント数が読者と作品(作者)の評価・信頼度になる。

ポイント保有量が多い読者(つまり良い作品を早い段階で沢山掘ってきたスコッパー)は作品に送れるポイントが多く、評価への影響力が強くなる。

上の記事内ではこのポイントをブロックチェーンでトークン化、発行して売買可能にすることで利用者にインセンティブを与える案も書いていたけど、今から考えると現時点の法律や税制面で色々とややこしくなる可能性があって微妙かもしれない。

これのコンセプトとしては、良い作品を発掘した読者にインセンティブを与えることで『評価を付けること』への動機付けを狙い、良い作品をしっかり吟味して発掘しようとする意識付けを狙った。




さて、上の記事を書いてから1年。今の段階で考えていることをまとめていきたいと思う。


まず世界的な潮流を見る感じでは、『WEB小説』のマネタイズは『広告収益の還元』『有料販売』『投げ銭』『メディアミックス(書籍化含む)』と、現時点では基本的に日本と変わらない感じだと思う。

中国では小説投稿サイトのユーザー数が3億人と桁違い。英語圏で人気の小説投稿サイト『wattpad』でも6500万人ぐらいユーザーがいるらしいし、中華圏と英語圏に関してはそもそもの市場規模が違う(小説家になろうの登録者数が172万人とかだし)

そして中国に関してはテンセントが。アメリカに関してはNetflix等の動画制作会社がそこから映像化などのメディアミックスをしようとする流れがあるっぽい。

自分の印象としては、中国にしてもアメリカにしてもWEB小説はコミック化や映像化をして大きく儲けるための原作という位置付けだと感じるし、それは日本もほぼ変わらないのでは?と思う。

やっぱり面白い話を様々なメディアで展開してグッズも作って~と、広げていくのが企業としても一番稼ぎやすいはずだし。

その観点から考えると、広義の小説投稿サイト(Kindle等も含めて)に求められるのは『メディアミックス出来るシステム』ではないだろうか。

小説を漫画やアニメにする独自のルートを持つ小説投稿サイト。

つまり、やっぱり出版社系の小説投稿サイトが強い、ということになる。



①『異業種マッチング系』総合投稿サイトの提案

そんな中で少資本で既存の小説投稿サイトに対抗していくとなると、考えられるのはコレ。

Writoneという投稿サイトがある。

これは『小説家』と『声優』をマッチング出来る小説投稿サイトで、小説家が書いた話を声優(の卵とか志望者)が朗読し、有料or無料で公開して出た利益を作家と声優(と運営)で分け合うシステム。

これはこれで面白いのだけど、例えばこのシステムを漫画家・イラストレーター、そしてアニメーター・作曲家・グッズ製作者・二次創作者など様々なプレイヤーに拡大したらどうだろうか。

もしかすると制作会社を通さず、非中央集権的にアニメが出来上がる未来が来るかもしれない。

ただ権利関係は超面倒なことになりそうではある。

ある程度、権利関係を緩めに設定してコラボレーションしやすい環境を作っていければ面白くなるはず。


②『証券型』小説投稿サイト

投稿された小説を一つ一つ証券化してブロックチェーン上でトークンとして発行出来る小説投稿サイト。イメージとしては株と似たようなシステム。

個人的にはその作品の著作権をトークン化して、分割して販売可能にし、その小説から得られた利益、例えば広告インセンティブとか印税とかをトークン保有量に応じて分配する。なんてところまでやっても面白いかなと思う。

そのシステム作るのは超面倒そうだけど。

著作権まで含めると色々と法律的に面倒な話になりそうな予感がするので、その小説で得られるそのサイトの広告インセンティブを受け取る権利ぐらいにしておけば楽かもしれない。

突拍子もない案に見えるかもしれないが、海外では既に美術品等の分割出来ない価値のある物をブロックチェーンでトークン化して所有権を分割売買しようとする動きが出てきていて、実際に高級車の所有権を分割売買しようとしたり、NBAの選手が自分の年俸の受け取り権利を分割売買しようとする流れがある。いずれ間違いなくこの仕組自体は20年か30年以内に実現しているはずで、恐らく小説や漫画等の著作物に関してもそうなるだろう。


③『疑似証券型』コンテンツ投稿サイト

FiNANCiEというサイトと近い感じのシステム。

例えば作品のファンクラブの会員証のようなモノ(トークン)を10000枚とか限定でネット上で販売。

(何割かを作者が保有)

それを作品のファンなどが購入し、サイト上で自由に売買出来るようにする。

その売上が作者の利益となり、ファンはその会員証のようなモノを持っていると(あるいは一定枚数使用して)作者から特別なリターンを受けられる。

例えば作者のサインとか、限定SSとか、設定資料とか。あるいはファンクラブ限定のチャットとか、作者が悩んでいる作品の方向性にアドバイス出来るとか。作中に自分の考えたキャラを登場させられる権利とかも面白いかも。

会員証(仮)の価格は需給によって変動し、作品の人気が上がっていくと会員証(仮)の価格も上がるので、所持し続けることでファンにも利益がある。

さらに例えば、その作品を二次創作したり、あるいは漫画化等したい人がいた場合、作った二次創作品や漫画の会員証(仮)の一部(2割とか3割)を原作者に譲渡すればOKになる仕組みとか作れば面白そう。

もしくは、企業はその作品の会員証(仮)を50%取得したら書籍化権やアニメ化権を自動取得出来るとかも面白いかも。

これはよくある『投げ銭』システムだと本当に単純にお金を投げてそれだけで終わってしまうところを、投げたお金が後々意味を持つ形を目指したシステム。


④『スコッパー評価型』小説投稿サイト

スコッパーが自分が気に入った作品にポイントを消費して『いいね』を押し、その後に作品の『いいね』が増えるとスコッパーが『ポイント』を貰える仕組み。

良い作品をより早く見付けて『いいね』を押した人ほど『ポイント』を多く貰えるが、『いいね』を押すにはポイントを消費するので全ての作品に『いいね』を押す事は出来ない。

スコッパーの目利きが試されるシステムで、ポイントを多く稼いでいるスコッパーは読者からの信頼を得て『WEB小説評論家』的なポジションになっていくはず。

一般読者は自分と好みが似たスコッパーをフォローするなりして好きな作品を探せる。

スコッパーが発掘することに目に見える評価を与え積極的な作品発掘を促す仕組み。


⑤『疑似投資型』小説投稿サイト

④と近い。早い段階で『いいね』を押して、後でその作品の『いいね』数が増えると『ポイント』が多く貰える。

しかしこれは『いいね』を押せる作品数を、例えば100とか1000とかに制限して、新しく『いいね』したい場合は今後伸びなそうな作品の『いいね』を剥奪して付け替える必要がある仕組み。

これによって過去人気があった作品がいつまでもランキング上位にとどまることを防ぎ、今現在と将来人気が出そうな作品が表に出やすくなるはず。

しかし、よく考えなくても殺伐としそう。




というような感じに現時点では考えているところ。

②に関しては恐らくそのうち世界中のどこかで誰かがやってくるはず。ただこれをやるには法規制やらの問題とブロックチェーン技術者が必要だったり難しい面は大きい。

現実的に少資本でワンチャンありそうなのは①。

①は上手く作れれば既存の小説投稿サイトの牙城を一気に崩せる可能性ある。


全体的に奇抜すぎるアイディアばかりな感じもするけど、そもそも現時点で普通に小説投稿サイトを作ったところで既存の小説投稿サイトに勝てる見込みはないという話は前回した通り。

まったく新しい発想で考える必要がある、という前提で書いた記事なので、そこんところよろしくお願いします。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る