偉い人の言葉だからって鵜呑みにするな
昔、友人に1人、凄く頭の良いヤツがいた。
彼がどんな人物だったのかは詳しく書かないが、彼と色々と行動を共にしていると、彼が頭が良いことを分からされるような、そんな感覚があった。
確かMENSAに入れたとかそんな話もしていたので、本当に頭が良かったのだと思う。
でも彼の凄さをはっきりと感じたのはゲームの中だ。
とある様々なゲームのオンライン対戦が出来るサイトでよくボイチャしながら対戦していたのだけど、彼は様々なゲームで強かった。
麻雀、ポーカー、ブラックジャック等々。しかし特に印象に残っているのはババ抜きだ。確かあのゲームではカードを引かれる側がカードの位置を変えられて、引かれる側は引く側のマウスカーソルの動きが見えるという要素があり、それが駆け引き要素になっていた。それにプラスして僕らはスカイプで会話してたので、言葉での駆け引きもあった。
けど、結局はそれだけのはず。
相手の顔も見えないオンラインゲームだし、そこまで大きな駆け引きは出来ないと思っていたのだけど、彼は強かった。
彼がババを持っている時に彼からカードを引くと高確率でババを引かされるし、こちらがババを持っている時には彼はまったくババを引いてくれない。
特に終盤のサシの勝負になってしまうともうダメ。本当に彼に心の中を全て見透かされているのではないかと錯覚するぐらいやられたのだ。
それぐらい、彼は言葉巧みに心理戦を仕掛け皆を誘導していた。
後から考えてみると、そういった人の操り方を彼は他の場面でも巧みに使い分けていて。例えば誰かになにかを頼みたい時、彼は相手と場面によって、下手に出たり、上手に出たり、高圧的に出たり、煽り口調を使ったり、いじけてみたり、冷静に説明してみたり、頼って褒めてみたり等々、様々な方法で上手く相手に無理を飲ませていた。
やられてみたら分かるけど、彼の頼みを聞かないと自分が悪人のように感じてくるみたいな感覚があった。
本当に彼に高い壺とか売られなくてよかったなぁ……と、今はちょっと思ってたり。
◆◆◆
さて。
少し前、とある某エコノミストの人が、ある日突然、他の同業者のエコノミストをTwitterで手当り次第に口撃し始めたことがあった。
この時は、これまで他のメディアに出ている時の彼の言動からすると違和感のあることをし始めたので、僕の頭の中は『???』という感じになったのだけど。
しかしその前後の流れと、その後の彼のある言葉で腑に落ちた。
流れとしては、
この某エコノミストが別のエコノミストAを口撃。
しかし彼らのTwitterをフォローするような(株とか世界経済に興味がある)人々はそういった喧嘩を煽って楽しもうとするような人は当然ながらごく少数なわけです。
なので両者のフォロワーは当初、基本的には冷静に対処し、過剰に反応しようとする一部のフォロワーをむしろたしなめたりしていましたと。
しかしこの某エコノミスト氏は自分にネガティブなコメントをした人を引用リツイートで晒し上げ、『ほらお前ら叩け!』というようなコメントをした。
しかしそこまで来てもあまり炎上はせず。
最終的に彼は、
『俺にネガティブなコメントをしてる奴とそいつをフォローしてる奴をBANする』
『こいつらをお前らが叩かないなら俺はTwitterでの発信を止める』
というようなことまで言ったわけです。
ここに来てやっと僕にも、彼がなにをしたいのか確信が持てましたと。
つまり、
『炎上商法のために形振り構わず強引にでも炎上させる気だ』
とね。
結果的にこれがどうなったかと言うと、彼のフォロワーは爆増したし、アンチは大量に増えたけど彼に対するネガティブなコメントをする人物が現れるとフォロワーが自動的に潰しに行くような環境が出来上がりましたと。
ぶっちゃけ「凄い、けどここまでやるのか……」と、気付いた時には驚いたけど、結果的にこれは炎上商法としては大成功だったんだろうなと思うわけです。
まぁ要するになにが言いたいのかというと。
一見、変な言動に見えてもちゃんと最初から意図があったりする。
という感じの話です。
このネットでの炎上商法だけど、最初にやり始めたのは恐らく例のあの人だと思うのだけど。ここ10年ぐらいの間、日本のネット界隈で影響力持ったインフルエンサーってこの手法を上手く使ってきている人がほとんどなんですよね。
賛否両論あるネタに触れたり、真実と建前が違うところに突っ込んだり、理論的に間違ってそうな意見を言う人に絡んで煽ってみたり。
これが下手な人は差別やら犯罪の擁護などの触れてはダメなところに手を出して消えていくのだけど。上手い人は巧みにすり抜けながら上手くアンチを獲得していって、その拡散によって知名度と露出を増やしていって、そこからファンを獲得していくと。
この炎上商法って社会的に守るものがある人にはちょっと難しかったりするのだけど、あんまりない人にとってはかなり効率の良い手法だから、上記の例もそうだけどかなり機械的に意識的に利用している人も多いんですよね。
今の日本のSNSで炎上発言をしている有名人の大多数がそれを意図的にやっていると思います。成功したかどうかは別としてね。
◆◆◆
前に某討論番組に出た野党の党首候補らに対して西村博之氏が語った話でも面白いモノがあって。
彼が言うには、質問に対してただ普通に答えるのではなくて、多少質問とはズレても答えの中に自分の主張とインパクトのある言葉を入れて、その言葉がネット記事化されてバズることで自分と党の知名度が上がり、多くの人に自分らの意見を聞いてもらえるようになるんだから、それを狙ってやらなきゃダメでしょと。それがメディア戦略だと。
要するに、彼がそう言うってことは彼自身もそういう戦略を取っているのではないか、という話で、おそらく彼以外にも偉い人は意識的にか無意識にかそういう感じに他人を動かすため、自分の利益になるように言葉をしっかりとチョイスしているのだろうと、そう思うわけです。
それを裏付ける話ではないけど。
アメリカのFRB議長はその言葉のニュアンス1つでマーケットを大きく動かしてしまうのでメディアへ談話を発表する時はその一言一句まで事前に完璧にディレクターと練り合わせて作り上げるし、大きな発表をする時は事前に息の掛かった記者に情報をリークし、観測記事を書かせてマーケットの動きを見て、実際にどうするか判断したり、いきなり発表するとインパクトが大きすぎる内容の時にはそういうリークでワンクッション置くことでインパクトを小さくしているらしい。
たとえば『市場は堅調』『市場はやや堅調』といったような微妙な細かいニュアンスを変えて印象を変えているし。逆にマーケットに参加しているトレーダーの側にはその細かい言葉の違いを読み取り、FRB側の意識の変化と、そこからFRB側がどんな影響をマーケットに与えたいのかという意図を汲み取る必要があるらしい。
まぁ要するに、言葉というモノはその『言葉の正確な意味』よりも『どういう意図』があるのかがもっと重要であって。言葉にちゃんと意図をこめて発することが重要で、受け取る側はその言葉から発言者の意図を汲み取る必要があるのだと。
そう思うんですよね。
今はTwitterやYouTubeなどのSNSで有名人や偉い人の言葉を直接受けられるようになったけど、我々はその中で彼らが発している『なんらかの意図がある言葉』にさらされているという自覚を持ってそれを受け取る必要があると思うんですよ。
話をひろゆきさんに戻すと。
彼って凄く自由に発言して自由に生きてる感じに見えるし本人もそういった感じのことを言ってた気がするけど、実際のところはかなり理論的に計画的にやってんじゃないか?と思っていて。
その昔、水道橋博士氏と宮崎哲弥氏の番組に出た時、朝起きれないから収録時間を午後にしてくれと要望したらしいのだけど、それについて「そんなのありえない」と水道橋博士にちょっとした嫌味を言われると「テレビに出る仕事が本業だったら真面目に朝起きて行くけど、別にこんな番組出なくてもいいし。別にテレビから干されても全然困らないので(笑)」と言っていたと。
『じゃあ、今テレビ番組などに遅刻もほぼなく出まくってるのはどうなんだ?』
って思いません?
つまりそれって彼の本業が今はテレビ(ネット番組とかも)に移ってきていると言えるはずなんです。
ではどうしてそうなったのか、という話をすると。
恐らくですけど2chを失ってニコニコを辞めたあたりで彼の影響力は落ちてきたはずで、そこを補うためには別のナニカが必要だったのではないかと。それを得るために出来ることがYouTubeであって、そこでの影響力を使ってテレビに出るようになってそれが本業状態になった。そういう感じだと思います。
Twitter等で炎上するような発言をするのも、上で書いたように意図的に自分の影響力を維持するためにやっているメディア戦略の一環なんだろうと推測しています。
つまり、かなり計画的にやってるんだと思うんですよ。
◆◆◆
他にも偉い有名人の話をすぐに完全に信じて行動する人を見て本当に危ないなと思うことがあって。
基本的に頭の良い人ってロジカルに物事を考える傾向にあると思っていて。
特に経営者とか投資家系の人とか理系の人はね。
いや、別にロジカルなことは悪いことじゃないのだけど、ナニカを考察する場合、ロジカルすぎるおかげで(その人が)理論的に重要だと思っている要素以外の要素を意図的に弾いているなと思うことがあるんですよね。
重要かもしれないけど理論的ではない要素は、理論的ではないから考慮されない、とか。
例えば最近の話でいうと、ロシアのウクライナ侵攻について政治学や地政学とかロシアの専門家はその直前までウクライナ侵攻なんて起こらないと考えていたらしい、という話があって。
どうして『起こらない』という判断をしたのかと言うと、メリットよりかなりデメリットの方が多いから合理的に考えるとそうなる、ということらしいんですよね。
プーチン大統領がその明らかな損得勘定で分かることを押しのけた結論を出す可能性はあまり計算に入ってなかったのだろうと。
ロジカルに考えて出した答えってそういうモノであって。
ロジカルに考えて出した答えだからこそ、これが仮にハズレたとしても予想した本人は大してなんとも思ってなかったりするんですよね。
そういうのって、所謂『ブラックスワンがいた』だけだから。
ブラックスワンというのは、そのまま黒い白鳥なんだけど。元々、白鳥は白色しかいないと思われてたのに黒い白鳥が見付かってしまったことで『ありえないことが起きる』的な意味になったんだけど。
つまり、たまたま低確率な方が当たっただけで理論としては何も間違っていないから特に問題はない。という考え方になっていると。
よく、アナリストとか投資家とか経営者とかが相場とか未来の予想をテレビとかでしていて、それがハズレたりすると叩かれたりするわけだけど。彼らからしたら、その時点で得られた情報から理論的に判断して確率が高いと思う答えを出しただけで、それがハズレたとしても、たまたま低確率の方が当たったとか、取得した情報が間違っていたとか、情報が少なかったとか、それだけの話で。
だから新しい情報が入ったらそれを元に再考察して意見を真逆に変えることもあったりするし、結果が間違ったとしてもその結果にたどり着くまでのプロセスが間違っていないなら別に問題はないと考えていると。
だから本来ならそういう偉い人の話を聞くなら、彼らの結論を導き出した理論から精査して、その理論に綻びはないかとか、現時点の情報量が結論を出すに足るだけあるのかとか、その人の主義主張や考え方でかかるバイアスとかを調べて、その結論がどれだけ可能性があるのか自分で判断しないといけないと思うのだけど、ネットとか見てると有名人の話なんかを即信じてる人がいて、ちょっと怖くなったりするんですよね。
それに関して自分の例を書くと。
以前、某偉いエコノミストの先生が某ゲーム関連企業の株をおすすめしてたことがあったんです。おすすめの理由は『その企業の製品は多くの企業で使われていて今では必須だから』的な話だったんです。確かにその企業は業界大手で多くの関連企業がその会社の製品を使っていることは自分でも知っていました。が、自分としては本当にその企業を買っていいのか疑ってたんですよね。
というのも、たしかにその某企業は業界最大手だったけど、製品には少々問題があってそれを嫌っているユーザーが少なからず存在していると知っていたし。他社がその製品と同等以上の製品を出していて、特筆するべき某社の大きな優位性は価格面であることもゲーム好きとしては聞き及んでいたので。つまりこの某企業の優位性はちょっとしたことですぐに壊れかねないと思ったんですね。
なので自分は彼の理論には穴があると考えたと。
以前、某偉い人が『学校なんて行かなくていい』という話をしていたのだけど。その結論に至る理論というのは『学校なんて非効率だから自分でネットなんかで勉強した方が早い』『仕事なんてなんとでもなるから学歴とかいらない』というモノであって、明らかにかなり高い能力を持っている人にしか当てはまらない説なのだけど、それを主張している本人が能力高すぎてそこに気付いてないのでは? と思うこともあったりして。そこを考えずに『学校なんて行かなくていい』という結論の方を本気で信じる人が増えると結構ヤバいと感じるわけなんですよね。
まぁ、この某偉い人の最近の話とかを聞いてみると『気付いてない』のではなくて普通に理解して言っていて、その理由としては『そもそも勉強が出来ない人に無理に勉強させる必要はない』という考え方が根底にあって。出来ない人に無理に勉強させるコストが高くて、させられてる方も負担が大きいから、勉強が出来ない人は字が書けなくても引き算が出来なくても構わないから勉強させなくていい。という感じの考え方らしいんですよね。
個人的には『勉強しなくていい』と子供の内から宣告されるのって、それはそれでそこそこ残酷で絶望だと思うんですけどね。
まぁ、そういう考え方が根底にあって『学校なんて行かなくていい』という言葉になってるみたいなんだけど、偉い人のそこまでの思考のプロセスを考えないと本質的なところが見えないと思うわけですよ。
◆◆◆
で、ここまで書いてきたわけだけど、
「じゃあお前はどうなんや?」
という話があると思うんですよね。
まぁ僕が有名人なのか? とか、偉い人なのか? という疑問は置いといてですね……。
ぶっちゃけ書籍化決まった頃は本気で炎上商法を狙うか真剣に考えたんですよね。
実際、狙ってるのかは知らないですけど、そういった手法を使ってるっぽい――というかまぁ炎上するような発言してる小説界隈の人っているじゃないですか。
そしてそういう人ってTwitterのフォロワーが多いんですよね。
良いか悪いかは別として、やっぱり効果はあるわけです。
でも、色々と深く考えていったんですけど、自分にはそういう感じに炎の中に身を置いて普通に生活するのは無理なんだろうな……ってね。ちょっと性格的に合ってないと思ったと。それに総合的に考えるとデメリットの方が大きい、ってのが自分の中での結論。
ぶっちゃけ小説家というポジションは炎上商法に向いてないと思うんです。
あまり実績がない状態でトラブル抱えると出版社の方も敬遠するっぽいし。
むしろ現時点ではSNSとかカクヨムでの発言なんかはかなり気を使ってるんですよ。
基本的に『○○が嫌い』というネガティブな発言はしないようにしているというか、どこかの企業の商品に対してネガティブな意見を言わないようにしているし、小説などの作品なんかでもネガティブな意見を言わないようにしていると。
デメリットの方が大きいと感じるんですよね、そういうのは。
だからこの執筆日記の方を書く時もかなり言葉を選んで書いているつもりなんですよ。
多少ネガティブな意見が混じる場合は相手が特定出来ないように名前をボカすとか、否定的になりすぎないように言葉を選ぶとか。悪い印象、上から目線の印象を与えないように工夫したりとか。
そういう意味では、僕も『読む側の印象を操作する文章』を書いているわけですよね。
そう考えると、僕は小説においても『読み手の印象を操作する』ことにはちょっとこだわって書いているかも。
文章って面白いモノで、ちょっとした書き方の違いとか文の順序の違いで印象が変わったりするんですよね。だから作中の言葉選びには気を使っていると思う。本当にちょっとした一文字の違いで読者の印象が全然違ったりするので。
それについてはまた別で書いてみましょうかね。
ほなまた。
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