『流行』とは何かについて『なろう』で流行が作られる流れから紐解く

まず最初に、これから先の内容は、筆者の記憶と経験を元にした推測が多分に入った内容になっています。

異論反論がある人もいるかもしれません。

実際に間違っていることもあるかも。

何分、時間も経っちゃって記憶が薄れている部分もあるので。


でも一応、書籍化した『極振り拒否して手探りスタート! 特化しないヒーラー、仲間と別れて旅に出る』は、これらの流れから導き出された内容をベースに初期案を作ったので、自分の中ではそれなりの確信を持っている内容で。

細かい部分は忘れたとしても、当時の自分がこういった理論を持っていて、実際に書いたわけで、理論自体に自信は持っています。


(これを書き始めたのは2018年ぐらいで、それから色々書き足したり考えたりしている間に当時の記憶が薄れてしまい、曖昧な部分が増えてしまっているのでご了承ください)


◆◆◆


僕とWEB小説の出会いは今から8年~10年ぐらい前だと思う。

そこから自分の小説を連載し始めて忙しくなった2018年春頃まで、小説家になろうのランキング、主に日間を毎日チェックし続ける生活を続け、最終的には日間では飽き足らず新着から小説を漁るようになった結果、なんとなくなろうの流行の流れを感じるようになってきたのです。

といっても別にそんな物凄い事が出来るようになったとかではなく、単純にその時の流行りを追い続けて流行りの点と点をつなげていったら次の点が現れる位置が大体予測出来るようになってきた、というだけなんですけどね。

しかしそれこそが重要な要素であって、ここで話す内容の一番重要なポイントなんですけど。


それで気付いたのが、『流行ってちゃんと川のように流れがあるんだな』と。

一見するだけでは何故それが流行ったのか分からないモノでも、それが流行った前段階に大体何かしらの符合する近いポイントがあって、それがあるから流行が生まれたと。

点と点を繋げると流れになるんですよね。

まさに『流行』という言葉の通り、流れに沿っていると。

で、これは日間ランキングを常に読み続けたからこそ見えてきた流れで、常に追ってはいない大多数の人にとっては、それが『いきなり出てきた流行った』ように見えるのではないかと思ったわけです。


◆◆◆


それでは昔を振り返りながら具体的な例を元に話していきましょうか。


例えば、今では一大ジャンルとなっている『悪役令嬢モノ』について。

なろうにおいて、これの一連の流れの一番最初の最初、最初期の形は、恐らくSAO等の『ゲームの中に入ってしまって出られない系』あるいは『デスゲーム系』的なところだったと思う。

この当時、そういう感じの作品が多く作られた。

しかし、恐らく『出られない系』とか『デスゲームモノ』はシリアスに寄りすぎる傾向があって、それが流行っていくと、そういった重たい展開に胸焼けを起こす人が増えたと思われる。

『そういうシリアスな話は散々見てきたし、それはもういいから、ゲームの中をもっと自由に(無双して)楽しむ話が読みたい』

的な需要に変化したのだと推測。


で、その変化の先が『ゲームの世界に転生(転移)する系』と。

主にRPGとかMMORPGの世界(異世界)に主人公が転生する話。

生前プレイしていたゲームの世界の主人公に転生した主人公(ややこしい)がゲーム知識を使って上手くやっていく、とかそんな感じの流れ。

自分がやり込んだゲームの世界だから、その世界のルールや裏ワザとかを知っていて、誰よりも自分が優位に立てる、的なね。

これが流行って多くの人が様々な作品を作り、ブームとなった。

基本はMMORPG系が人気だったけど、マインクラフトが流行った時期はマインクラフト的な世界観に転移する話も一時期だけ流行ったりもしたと記憶している。

ここの記憶はぶっちゃけ曖昧だけど、確か最初はゲームモノ(ゲームの世界に転生する系)から始まって、次第にゲームとか関係ない異世界モノが流行ったような印象がある。

恐らく、このあたりの時代の作品が多くの一般人がイメージする、所謂『なろう系』と呼ばれているモノだと思う。

要するに異世界転生とか異世界転移とかして、その先で主人公が無双する系統の話になる。


そして『RPG系のゲームの世界に転生する』という枠の範囲内のモノが多くの人の手によってやられていた頃、主に女性向けに派生してきたモノが『乙女ゲームモノ』だったと思う。

『乙女ゲームモノ』とは女性向けの恋愛を中心としてゲーム、所謂『乙女ゲーム』を題材とした作品で、この乙女ゲームでの主人公に転生した女性がゲームでの知識を使って上手くゲームの世界を生き抜こうとする系の話だ。

これが主に女性にウケて、流行ってまた沢山の似た作品が作られましたと。

恐らく、主に男性向けのゲーム、男性向けの話になりがちだったゲーム転生系の話を女性向けにアレンジしようとした人がいて、『だとしたら乙女ゲームだよね』的な感じでこのブームが生まれたと思う。

しかし、僕の記憶では比較的短いブームだったようなイメージ。

これは乙女ゲームの主人公という『元から勝ちが約束されている』キャラクターを主人公にしても面白い話の幅が狭かったのだと思う。最初からシナリオ通りに進めれば勝ちが決まる役どころなのだから、作者側の立場から見ると意外性のある展開とか、面白い展開を作りにくくて色々とやりにくいはずなんですよね。

暫くその流れが続き、一通りの作品が出尽くし、その系統の作品が飽きられてきた頃(大体、数ヶ月から半年ぐらいのスパン)次の流れが来ました。


自分のかすかな記憶では、まず最初は(普通に乙女ゲーム主人公に転生する話はやり尽くされてつまらないので、かなり無茶をするような形で)主人公が乙女ゲームのシナリオを完全無視(シナリオを完全破壊)するような作品が出てきたり、主人公がモブに転生する話(主人公以外の視点からゲームの世界を傍観者として楽しむ的な話)が出てきたりしたイメージ。

そしてそういう中から台頭してくるモノがあった。


それが『悪役令嬢モノ』

乙女ゲームで主人公の(主に恋愛の)ライバルになる女性を主人公とした話。

主人公のライバルということで、ほぼほぼ最後は負け確の状態から転生前のゲームや地球での知識を使い、それを覆していく系統の話。

これが下剋上的な感じでウケた。

ここの流れの変化を察知出来たのは自分の中でも1つの転機というか、この説の『気付き』だったように記憶している。

というのも、当時、乙女ゲームモノをいくつも読んでいた自分が「なんか最近、乙女ゲームモノに飽きてきたな……」と思っていた頃だったんですよ。

当時、もはや乙女ゲームの主人公に転生させる系の話はやり尽くされ、もう他にやるネタがないところまで来ていて、新しい乙女ゲームモノを読んでも展開がどこかで見たモノになっていて、「あー、またこの展開ね……」ってな感じになっちゃってたんですよね。

で、「なんか別の新しいモノが読みたいな」と思っていたところにランキングに入り始めたのが悪役令嬢モノでしたと。


さっきも言ったように、これが自分にとっての気付きで。

つまり、当時の僕を含めた僕と同じようななろうヘビーユーザーが、


『乙女ゲームモノは好きだったけど、展開がやり尽くされてそろそろ飽きてきた』


と感じた流れから、


『乙女ゲームモノだけど主役が主人公ではなく別のキャラ……悪役令嬢の方に転生させたら面白いのでは?』


と感じてきて、そういう話を支持したから、そういう作品が台頭してきたと。

自分の中でも、『乙女ゲームモノは面白いけど、これ、敵側の悪役令嬢を主人公にした方が面白いのでは?』と感じ始めていた頃に悪役令嬢モノがランキングに入り始めたので、なろうのヘビーユーザーは皆、同じような作品を同じように読んでいた結果、同じような感性になっていて、同じタイミングで同じような作品を求めるようになってるんじゃないか、と思ったわけです。

(なのでそういう作品が必然的にランキングを上がってくると)

で、その僕等ヘビーユーザーが求める作品は、これまでの人気作品の点と点を繋いだ延長線上の流れの先にあるのではないか、と感じたと。


そしてこれこそが『流行』と呼ばれているモノの正体なのではないか?と思ったわけです。


◆◆◆


話は変わりますが、ここで自分の話をすると。

当時、流行ってた異世界転生系(悪役令嬢とか女性向けではなく)の話を読んでて思ったことがありましたと。

当時(3年4年前ぐらい)流行ってたのは異世界転生系の最初から俺TUEEE系だったのだけど、ぶっちゃけもうそれには飽きちゃってたんですよね。

要するに、ずっとなろうでランキングを漁っていた結果、これ系の話も完全にやり尽くされてるな感があったわけです。

新しい作品が出ても、もう大体パターンが同じになってきていたし。最初から主人公が最強な俺TUEEEだと主人公がなんでも出来てしまうから主人公の行動を制限出来ないため、風呂敷を凄い早いペースで広げていくしかなくなって、すぐに広げられる風呂敷がなくなってしまい、早い段階で終わる、もしくはエタるしかなくなる作品が増えていて。

読んでると大体『あっ、この作品もこれ以上は風呂敷広げられないだろうな』というラインが分かるようになっていて。つまりエタるタイミングも予想出来てしまっていて。


『ということは、自分と同じようななろうヘビーユーザーもこういう話に飽きているだろう』


と、予想したわけです。

なので自分が今から小説を書くのだとしたら、そういう話を書いても流行らないなと感じたし。そもそも俺TUEEEもかなりやり尽くされてるから書けるモノがないし。自分としても、もう『最初から俺TUEEE』は飽きてるから書きたくないなと思いましたと。


「だとすれば『最初から俺TUEEE』にはならないような作品が書きたいな……」


と思ったところが『極スタ』の最初のポイントだったりします。


◆◆◆


それじゃあ『なろう』という箱庭世界のWEB小説ではなく、世間一般で流行る漫画やアニメやドラマなんかの流行がこの形式で説明出来るのか?という話なんですけど。

それは不確定要素が多すぎて難しいんだろうな、ってな感じなんですよね。

なろうの流行って良くも悪くもなろう内で完結しているというか、他の漫画とかと比べるとなろう外の影響をあまり受けていないような感じがするというか。なろうという箱庭だからこそ観測しやすかったような感じがあるんですね。

それに比べて、例えば一般的に人気があるジャンプ漫画とかだと、その読者層はほとんどジャンプの中にだけで完結せずにもっと他の雑誌の漫画とかアニメとかドラマとかを境目を作らず楽しんでいるはずだし、その幅も広すぎるはずで、傾向を見るにはちょっと情報量の多さとイレギュラーが多すぎるのだろう、という感じ。


話は少しズレるけど、ファッションの流行の話をファッション系ユーチューバーの解説から紐解いていくと。

某スタイリストの人がYouTubeで言っていた話で「青色のデニムパンツは(一定以上の年齢の男性が着ると)ダサくなりやすい(意訳)」というモノがあって。

正直この理論を最初に聞いた時は『なんでやねん?』と思ったわけです。だって青いデニムパンツってド定番じゃないですか?そんなド定番がダサいとかそういうことになるのか?的なね。『無難だから普通』とはなっても『ダサい』とまでになるのか?と。

でも解説を聞いているとなんとなくその理論が分かってきて。

つまりファッションってごく一部のファッションリーダーが新しいファッションを開発して世に出して、それをファッションに興味のある人から真似していって、最終的にファッションに一切興味のない中高年とかご老人などが普通に着始めるぐらい世間に馴染んだら、それはもうファッション的には『時代遅れ』というモノになっているんだと。

その観点で見ると、確かに青デニムは世間に馴染んでいるし、ファッションに興味がないような中高年が普段着として無難に選びがちなパンツだと思う。

なので今は一定以上の年齢の人が青デニムパンツをチョイスしてしまうと『おしゃれではない普通のおっさん』っぽさが出てしまいやすいから、トップスとか靴でそのマイナス要素を覆せるようなコーディネートが出来る人でないと良く見せられないので、一定以上の年齢の人にとっては難しいアイテムになってしまっていると。だからダサくなりやすい。

そういう話らしいんですよね。

(若い人は別)

ちょっと話がズレた気もするけど。たとえばこの10年ぐらいはスキニーパンツとかアンクルパンツとか、比較的ピッタリしたパンツが流行ってたじゃないですか。

でも今はそこらの普通の中高年でもレギュラーフィットよりスキニーを普通に選ぶようになってきている状況があって、だからこそ最近は逆にワイドパンツが流行ってきてるみたいなね。

つまり、ファッションの流行にも、そうなるまでのしっかりした流れがあるのでは?という話なんですよね。

それこそ小説や漫画や映画みたいなエンタメ系なんかよりかなり分かりやすい流れがね。


なので、多くの人が『流行っていたモノを見飽きた』と感じたところで別のモノが求められるようになり、そこに少し捻りを加えたモノが考案されて、流行の流れが出来ていくのではないか、と思うわけです。

(ファッションに関しては少しの捻りというか真逆に振れるっぽいので、業界にもよるのだろうけど)


◆◆◆


結論としてですけど。

流行とはグループ内における集団意識的なモノなんだと思うわけです。

家族の性格が似てくるように、一定の繋がりのあるグループは好みが似てくるみたいなね。

エンタメで言うと、過去にインプットしてきた作品によって人の趣味趣向が決まってくるはずで。

昔のテレビを中心としたメディア形態が半ば一本化されているような状態だと多くの人が似たような趣味趣向を持つようになっていくけど、今のような人によって見るメディアがまったく違う時代だと多様な趣味趣向が存在するようになったから読みにくいと。

しかし箱庭なろう世界の中ではなろうで内で完結しているような流行があって、比較的読みやすい。そんな感じだろうか。


結局、流行というモノを知り、次に流行るモノを読むには流行の点と点を繋げられるように流行ったモノを一定期間追い続ける必要があるんだろうな、って思うんですよね。

そうしないと点と点を繋げて傾向を読めないからね。

おそらく、これはどんな業界でも基本的には同じなんだと思う。


なんだかまだまだとっ散らかったままな気もするけど、大体書きたい話は出来たと思うので、今日はこれぐらいで!

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