「おもしろい」とは何か。作品の評価とは何か

 最近、『おもしろい』とは何か、という事についてよく考えていた。

 そう考えるようになったキッカケは、最近様々な理由から見る事が多くなったカクヨムのランキングからだった。


 カクヨムのランキングは、公式には明言されてはいないけど、恐らく『フォロワー数+★数』で決められている。つまり直接的に『ランキングの順位=おもしろさの順位』ではないが、読者がおもしろいと思わなければ★も入れないしフォローもしないから、大体のおもしろさの目安にはなっているはず。

 と、思っていたのだが……。


「それなら、疑問に思う点がいくつかあるんだよなぁ……」


 まず、累計上位に入っているのに書籍化されていないタイトルがいくつかある事。

 ランキングが高いなら――つまり、おもしろいなら書籍化されるんじゃないのか? と思ったのだけど、実際には必ずしも書籍化されているわけではない。

 まぁこれに関してはカクヨムの現編集長も、ランキング上位でも書籍化に向く作品とそうでない作品がある、というような事をインタビューで発言されているし。編集者が考える書籍化の基準には、単純に『おもしろさ』だけでなく別の要素があるのだと、一応納得は出来た。


 次に『書籍化タイトルの売り上げとランキング(つまりおもしろさ)の関係』についての話。

『書籍化するにはおもしろさだけでは足りない』、という事については理解出来るとしても。では何故、。これが疑問だった。

 書籍化しているという事は編集者が考える『おもしろさ以外』の部分も満たしているはずだし、ランキング上位なら読者の考える『おもしろさ』も凄いはずだ。

 ならランキング通りに売れなきゃおかしい。


 と、ここまで考えて、『おもしろい』とは何だろうか、という根本的な疑問にたどり着いた。そしてやっと、『おもしろい』という言葉には複数の意味がある、という当たり前の事実に改めて気が付いたのだ。



◆◆◆



 さて、『おもしろい』という言葉だが、


①楽しい

②興味深い

③笑える

④心が惹かれる

⑤他とは違っている


 などの意味がある。

 その事自体は皆が知っていると思う。


 私はこれまで、この中のどれかの要素を満たす小説を書いて、それが読者に刺されば『おもしろい』と思ってもらえ、評価されるはずだ、と考えていた。

 そして恐らく、それはカクヨムの中においてはほぼ間違っていないはずだ。


 何故かと言うと、カクヨム内における評価とは『』であって、フォローと★を付けるための基準は特に決まってはいない。読者それぞれが『おもしろい』と思った小説をフォローし、気軽に★を入れている。

 だから、その小説の上記①~⑤までのどれかが読者に刺さり、『おもしろい』と思ってもらえれば、その小説にはフォローや★が付いて――つまり評価されるはずだ。


 しかし書籍化された後についてはどうだろうか。

 書籍化タイトルの『評価』とは、それすなわち本の売り上げだと言っていいはずだが……。


 ――さて、本を買おうとする時、人はどういう基準で本を買うか買わないか決めているのだろうか?


 表紙とタイトルで決める。

 序盤を流し読みして決める。

 評価が高い本を買う。

 フィーリングで決める。


 人それぞれ色々とあるはずだ。

 しかし、、という人がどれだけいるのだろうか? と、考えて、ようやく自分の中で答えらしきモノが見えてきた。


 結局のところ、上記①~⑤の『おもしろい』のどれかが刺さっただけでは不十分。なのではないだろうか。

 カクヨム内で評価を得るならそれだけでもいいけど、書籍としての評価を得るならそれだけでは不十分なのではないか。

 例えば⑤の『他とは違っている』という『おもしろい』などは特に分かりやすいかもしれない。他とは違う奇抜な内容で『おもしろい』けど、それにお金を出すかと聞かれると「うーん……」という感じになるのではないか。

 ②の『興味深い』という『おもしろい』も。例えば様々な設定が綺麗に練り込まれていて色々と参考になって『おもしろい』けど、それだけに金を払う気になるかは別だ。


 そこまで考えていくと、「でも、なんかそれって当たり前だな」と、思った。

 何故、今まで気付かなかったのだろうか? とも思った。

 読む立場から書く立場に変わり、何かを忘れてしまっていたのかもしれない。




◆◆◆




 ここまで考えてきて、『サマル振りヒーラー』の次に出そうと計画を進めていた話を中断し、企画段階から考え直す事にした。


 現在連載中の『サマル振りヒーラーの異世界冒険』は、皆様のおかげで★1000を超える事が出来た(2018年5月時点)。しかしこの小説は元々コンテストを狙った作品ではなく、コンテスト用作品を作る合間に文章の練習や気分転換を兼ねて気軽に書いていたもの。

 なので次に出す小説はコンテストを狙うつもりで尖った内容にしようと、サマル振りヒーラーを出す前から色々と計画を練っていたのだ。

 それは、何かの要素に尖って特出していればこそ読者や編集者の評価に繋がるはずだ、と考えていたから。


 ――で、それが今回、色々と考えた結果、自分の中で否定される事になった。


 いや、否定、と言ってしまうのは厳密には違うかもしれないけど、自分の中では、それだけでは不十分だという結論に達したのだ。

 それでこれからどうなるか、どうするかはまだ見えてこないけど、自分の中で、という気持ちが芽生えた。




 最後に一つ言いたい事。聞きたい事と言っていいかもしれない事。

 皆様は様々な作品を読んだ時、どう『おもしろい』と思っているのでしょうか。

 そして……私の作品を読んでくれている読者の皆様は、私の作品を見てどう『おもしろい』と思ったのでしょうか。

 聞きたいような気がしますが、答えを聞いてしまうのが怖くなっている自分がいます。

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