★異世界でのエールについて考える

 そして今日もコンビニでエールを買ってきた。

 買ってきたのは『プレミアムモルツ 香るエール』だ。

 ご存知のように、エールについて調べ始めてから最初に買ってきたエールで、既に飲んで味はチェックしてある。

(第二話 ★実際に飲んでみよう)

 が、しかし。しかしだ。

 それは、エールについて調べ始めて、思い浮かんだ最初の素朴な疑問が、「エールの味はどういうモノなのか」という疑問だったから、その疑問を解消するためにとりあえず探してきて飲んでみた、というだけの事だった。

 しかし本来の目的は、そこからもう一歩、踏み込んだ内容だったはずなのだ。

 つまり、「ファンタジー作品の中に出てくるエールってどんなモノなのだろう?」という疑問に対して、ファンタジー作品の中で自信を持って出せるような、ある程度の答えを出す事だ。


 前回まで、色々なエールを買ってきた時は。買ってきて、そのままグラスに注いで飲んで、味について理解を深めようとした。しかし、それでは現代のエールの味調べで、ただの商品の感想でしかないのではないか、と。本来の目的から少しズレてきているのでは? と思ったのだ。

 なので今回は、出来得る限り環境を近づけてみようと考えた。

 まずエールの缶を開け、そのまま放置する。

 何故か、と言うと、中世時代にはビールを密閉するような技術がほぼなかったため、消費者が手にした時点では炭酸がほとんど抜けていたのではないか、という話をネットで見付けたからで。それがまず一つ。

 もう一つは、中世時代には当然、冷蔵庫のような物がないため、ビールも常温で飲んでいたと考えられる事。

 執筆中の『サマル振りヒーラーの異世界冒険』においても、何らかの魔法を使用した魔道具などの冷蔵技術が存在してはいるが、一般層にまでは普及していない、という裏設定にしてある。

 なので、劇中に登場するエールは、基本的には炭酸の抜けた常温のエール、という事になっている。

 今回はそれに出来る限り合わせてみる事にした。



◆◆◆



 という事で、エールを放置してから数時間が経過した。

 もう既に十分、エールは室温前後になっているはずだ。

 だがしかし、一つ問題がある。


「今って二月でモロに冬なんだよね……」

(すみません。書いている間に三月になってました……)


 つまりのところ、室温に戻したところで大してぬるくはないのだ。

 温度計がないから正確な室温は分からないが、今は恐らく一五度前後だろうか。実のところ、この温度ではエールにとっては適温らしいのだ。それはちょっと意図するものとは違う気もするけど……。まぁとりあえず飲んでみよう。


 グラスへとエールを注いでいく。

 色などは当然、前回と違いはない。

 軽く匂いを確かめる。

「……冷やした時より香りが良い気がする」

 少し口に含んでみる。

「味は……うん、はっきりしてるな」

 前回より麦の味がはっきりと感じられ、炭酸が抜けきったのか、シュワシュワをほとんど感じない。元々このエールは炭酸が弱かったけど、さらに弱くなっている。


 しかし……。

「これだとエールの適温で飲んだだけなんだよなぁ……」

 もうちょっと高い温度で飲まないと『常温』という感じがしない。

 色々と考えた結果、エールの缶を手で包み込んで人肌程度に温めてみることにした。

「自分の体温で温めたビールってすんごい嫌だけどな……」

 とか言いつつ一〇分ほど温め、おそらく二四度前後にしてから飲んでみる。


 もう一度、エールをグラスに注ぐ。

 そして口に少し含んでみる。

「……うん。ちょっとお酒が回って感覚が鈍っている事を考慮しても、より一層、香りと味がはっきりしてる気がする」

 味がはっきりとした事でよく分かるけど、やはり苦味がまったく感じられない。

 完全に苦味がゼロなのか? と聞かれると、完全にゼロではないかもしれないけど、そう言っていいぐらいに感じない。

 下手すると濃いめの麦茶の方が苦いかも。

 そんな事を思ってしまう。


 結果としては。

 エールは温度を上げるほど味と香りは良く出る。

 ぬるいラガーと違って、エールはぬるい状態でもマズくはない(個人の感想)

 味と香り、そして適度な冷たさがある一五度前後ぐらいが飲み頃と言われるのも理解出来る。確かにその温度ぐらいがバランスが良い。

 こんな感じだろうか。




 エールについてまとめてみる。


①エールとはラガーとは違う発酵方法で作られたビール。

②昔から飲まれていたのはエールの方。

③苦味の主成分のホップがなかった時代のビールは苦味がなかった。

④発酵温度の問題で、エールは常温で作りやすかった。

⑤味はラガーとは違い、キレはなく。麦の味と香りが強い(麦茶を想像してほしい)

⑥温度が上がると香りが立ち、味がはっきりする。

⑦ホップに高い制菌性があるため、ホップの量が多いと日持ちする(苦くなる)

⑧なので苦くないと日持ちしにくい。



 どうだろうか?

 他にも色々な要素はあるが、元の目的を考えると必要なさそうなので省略。

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